昭和の遺物?パワハラ面接と雛鳥の誓い。

令和元年6月17日晴れのち曇り

梅雨よ、ちと待て!

6月も半ば過ぎだと言うのにまだ関西は梅雨入りしないまま、幸か不幸か梅雨前線はなかなか北上してきません。今朝は朝1番から作業着を着込んで屋根に登りに行き、梅雨入り目前にして、工場の屋根に設置したベンチレーターと言われる排気ファンのカバーから雨漏りがしているのを「今のうちに応急処置できないか?」との相談を受けて、本格的な梅雨入り前に何とか手配できるようにがんばります。と申し上げて現場を後にしました。もう少し時間が稼げるように日本海側に居座っている高気圧に期待したいと思います。

突然の採用オファー。

屋根の上で採寸作業をしていると、近所の仲良し同業者のO社長から電話があり、自分のところに面接に来た中学卒業したての大工見習い志望の若者を紹介したいと申し出がありました。すみれでは2年に一度のペースで新卒の採用を行っており、来年の春には工業高校からの新卒の若者が大工見習いとして入社する予定になっています。本来なら計画にないことなのでとさっぱりお断りするところでしたが、O社長にはいつも何かとお世話になっていることもあり、詳しい事情を聞いてみることにしてみました。

O社長のキラーパス。

とは言え、就職しようと面接に行ったらすぐ近所の違う会社を紹介されるなんてあまりある話ではなく、おかしいなーと思いながら、話の流れを訊きに現場調査の帰りにO社長の事務所に立ち寄り、履歴書を見せてもらいながらこれまでの経緯を聞かせてもらいました。
よくよく話を聞くと、この春学校を卒業後、一度は彼を採用して試用期間中だったようで、年配の大工さんにつけて現場に行かせていたが、お互いにあまりしっくり来なかったのと、そもそも社員大工の育成から離れていたこともあり、若い大工もいる会社の方が馴染めるのではないか、という親心を出して私にパスを投げてくれたようです。(笑)

面接資格は高卒以上。

O社長から経緯の説明を受け、自然過ぎる流れで、では、その彼と一度会ってみようと言う事になり、早速、昼過ぎにその彼が面接に来られました。私としては、これまで散々、中学校卒業した若者(というか子供)を採用しては、一人前になる前に来なくなる、という経験を繰り返しており、中学校を卒業して遊びたい盛りの子供を育てるのはやっぱり無理か、と諦めてこの数年は「中学校を卒業したら大工になりたいと言っているので、」と紹介される度に断って、まずは高校に行って、3年間待って気持ちが変わらなければ再度面接に来るように、と言い続けてきました。

覚悟はあるのか?

今回は、第二新卒的なタイミングでの面接となり、高校に進学しなさいという選択肢もなく、本人の「大工になりたいんです。」という言葉にほだされた形で、面倒を持てもらう先輩大工による2次面接に進んでもらうことにしました。ただ、どんな事情があるにせよ、一度就職して3ヶ月程で違う会社に移るというのはあり得ない事で「そんな若者を進んで採用したいと思う会社など、一社も無いと思うぞ。」と正直に厳しい印象を告げ、「君もそれなりの覚悟を見せろ」と厳しく質しました。

完全アウトなオーダー。

返答に困っている彼に、私が出したオーダーは、4月に免許取得予定と履歴書に書いてあったのを先ずは実行して、「今週中に原付の免許を取得してくる事、もう一つはおしゃれな片側だけ刈り上げている髪型をさっぱりと丸坊主(二枚刈り)にしてから二次面接に臨め、できなければ来なくていい。」と言い渡しました。今時、こんなキツイ面接は無いのでしょうが、私ももし彼がずっとすみれにいるなら、会社としては正社員として1億円以上の大金を支払う訳で、私も覚悟を決めるので、君もそれなりに態度で見せてくれ、と熱く語った次第です。

パワハラとしか言いようがない。

今のコンプライアンス遵守の世の中では、今日の面接での私の発言は完全にパワーハラスメントに該当すると思います。「今の時代がわかってないのか!」とか、「この昭和の遺物が!」とか、「だからガテン系の経営者はあかんねん!」とか、非難されても致し方ない、と思います。

しかし、まだ16歳の(当然、優等生タイプではない)自分の子供よりも若い者を雇用し、いわゆる「使いモン」になるまで何年もコストと時間をかけて育てるのは生半可な事ではなく、この程度のオーダー(パワハラか、)に対応出来ない様な者ではどちらにしても先はないと思っています。「この就職を機に変わりたい!」という本人の言葉を信じ、門戸を開く事にしたのは、一重に、彼が真っ当でいい人生を送れる様になる機会になればと思えばこそです。

人は変われるんや。

私が大事にしている価値観というか、信条の1つに「人は変えれない、でも変われる」と言うものがあります。偉そうなことを言っても私も中卒ですし、自分自身の出自がどうしようもない不良少年だったのが、いろんな人とのご縁を頂き、曲がりなりにもまっとうな人生を歩めるようになったのは、ひとえにいろんな方とのご縁のおかげだと思っています。

50歳を過ぎて、いい年になって今度は自分がもらったご恩を若い世代に送る番になっていると思っていることもあり、決して大きな期待をしている訳ではありませんが、変わりたい!と思う若者にチャンスを与えられるなら、出来る限りの事はしてやりたいと思うのです。

落ちこぼれた雛鳥への誓い。

随分とキツイというか、一般的にはあり得ない面接だっただけに、この先はどうなるかまだわかりませんが、「変わりたい!」という若者の希望は育ててやりたいと思います。面接の最後に、私が話したのは、先日の巣から落ちた雛鳥の話で、私は、自分に責任があるとか無いとかでは無く、「知らんがな、」という言葉を排して、自分に助ける事が出来るならやる、という選択をしたいと思っていて、「自分が手を差し伸べないとロクな結果にならないと思う時は、お節介や無駄に思える事や商売にならない事でも首を突っ込むと決めたんや。」と伝えました。

この若者が意気に感じて20代半ばで一人前の大工になり胸を張って人生を歩んでくれる様になることを心から祈りつつ、週末の2次面接を待ちたいと思います。 つづく。


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