謹呈 7つの習慣。〜若手大工育成プロジェクトday5〜

令和2年9月25日 快晴

建て方実習2days

「それにしてもよく降る雨やなあ。」と思わず独り言が口をついたほど、終日降り続けた昨日の激しい雨は何処へやら、 久留米の羽犬塚出迎えた朝は気持ちの良い秋晴れが広がりました。今日から2日間、研修講師を引き受けている、JBN(日本工務店協会)の地域団体である一般社団法人「人にやさしい家を考える会」主催の若手大工育成プロジェクトでは建て方実習を行う事になっており、私も泊まり込みで指導に当たっています。この研修では入職して間もない(3年未満)の若手大工や設計、営業などに携る若者達に、建築業界で働く意味と意義、そして社会人、職業人として必要な心構えや在り方と共に、実際に小さな建物を建てる現場実務を経験することで、一気に成長スピードを速めて貰うきっかけにするのが目的で、今日の上棟はその中でもクライマックス的な一大イベントです。

体験ではなく「経験」

私は、今回の研修で、実習生達に「体験」ではなく「経験」を身につけてもらいたいと思い、その様に彼らにも伝えています。その違いとは、指示された作業を言われた通りに正確にやり遂げるのではなく、事前に講師である私が方法や手順を伝えるコミュニケーションはしますが、現場では一切口出しせず、自分たちで段取りと役割、そしてタイムスケジュールを話し合い、その目標に向かって助け合いながら作業を進める事、そしてその結果を検証し、アウトプットして共有することで、ボーっとしていたらお客さんになってしまう研修を確実に自分ゴトに転化して経験になる様にしてもらっています。私は経験とは自分で考え計画、行動し、その後に良かったこと、改善すべき点を振り返って成功体験と反省をアウトプットすることだと思っており、その持論を研修にそのまま反映させています。

段取り8分とコミュニケーション

とはいえ、3年目でそこそこできる若い大工もいますが、殆どが素人集団なので、座学で説明しただけで「後は思う様にやってみ」と任していてそんなに上手くいく筈がありません。そこで、作業を小割りにするのと、何を行うのか?という作業内容に対する理解を深める為に、作業工程を小割りにして、プレカット施工図面の見方とその意味、柱、梁を組み立てる順序から立ち(柱の垂直)を見たり、仮筋交いを打ち付けたり、金物を締めたりとそのそれぞれについて一つずつ説明をするとともに、グループごとの役割分担と作業時間を話し合わせてから作業に取り掛かってもらいました。上棟を終えた後に彼らに感想を訊くと、事前の段取りの大切さ、作業中の手助けが全体の工程を推し進める、全体最適(全体勝利)の考え方と結局のところ、事前、作業中を含め、コミュニケーションが最も重要であるという事に気付いてもらえた様でした。

職人は道具じゃない。

今回、若手大工向け実務者研修の講師を引き受けるに当たって、私は若い大工は道具じゃない、便利に目先稼げる様に「やり方」を教えるだけでは絶対的にダメで、そんな研修を行ったところで、歩留まり3分と言われ、7割の若者が転職してしまっていた大工育成塾と同じ轍を踏む事になる。絶対に大工として働く意味と意義、自分たちが持つ可能性、そして、未来への希望を持てる様なマインドセットを伝えることが必要だと、事務局の方々に伝え、「塾長の思うままにカリキュラムを変更してもらって構いませんから」との言を得て、今回の半年、12回にも渡る若手大工育成プロジェクトの講師を引き受ける事になりました。そんな経緯があり、実習研修だった今日も、朝は教室の机に座ってもらい、前回までの振り返りと共に、一人ずつ自分自身で決めてチャレンジしてもらっている「新習慣」についての進捗発表をしてもらいました。

目的意識が何より重要。

とにかく、私は、技術や知識といった専門職としてのスキルは勿論大事だし、若者にはその研鑽が特に必要だと思っていますが、それよりもずっと大事なのは目的意識であり、「今、金、自分」に価値観の重点を置く様な者に一切何も教えたくないし、付き合いもしたくないと思っています。そして、それは3人のレンガ職人の寓話にある様に、100人聞いたら100人ともが、「金のためにレンガを積んでる職人」や「とにかく大きな壁を美しく積む技術だけに特化した職人」よりも「街の人々が幸せになる体験を味わえる大聖堂を作るんだ」と人の幸せのためにいい仕事をしたいと考える職人に仕事を頼みたい、一生付き合いたいと思うと思っていて、私の研修を受ける若者達は全員、3人目のレンガ職人となって引く手あまたの行列ができる人気職人になってもらいたいと思っています。

謹呈、7つの習慣コミック版

そんなこんなで、(実務研修だと思って参加した研修生達がどう思っているかわかりませんが、笑)毎回、研修のはじめには職業人としての「在り方」の話と、習慣を身に着けることの大切さをくどいくらいに訴えています。そんな研修を一番後ろのオブザーバー席で見られている事務局の責任者である高藤部長が、前回、終了前の挨拶で若者達に発破をかけられ、習慣の必要性と破壊力をもっと全員に深く理解してもらいたいと「7つの習慣(コミック編)」を全員にプレゼントします」と太っ腹かつ男気のある素晴らしい提案をしてくださいました。それもにこやかな顔でさら〜と言われていたのですが、今日、研修会場に入ると研修生達の机の上に「謹呈」と印字された熨斗がついた7つの習慣の漫画が配布されていました。九州男児は本当に熱かです。

同じ志。

研修生全員に習慣の大事さ、私が繰り返し口にする原理原則の重要性を理解してもらいたいと大盤振る舞い(しかもさら〜っと)された高藤部長の決断と行動をかっこいい!と思いながら、「謹呈」と改まった熨斗が少し気になりました。研修を終えた後、食事をご一緒させてもらう事になり、その話題を振ると、高藤部長から意外な言葉が返ってきました。曰く、「実は家の近くに中東で人道支援のボランティアを熱心に行われていた中村哲さんが住まわれていて、ひょんなきっかけで知り合いになったんです。素晴らしい活動をされているのに心から尊敬しながら、我々が地域活性化の為に地場工務店の支援に取り組んでいる「人にやさしい家を考える会」のパンフレットを渡したところ、中村哲さんに私もあなたも同じことをやっていますよね。と言われて、大いに感激したことがある。そしてそれをきっかけに中村哲さんの自著をプレゼントされ、私の人生の全てが書いてあるので参考にしてもらえたら幸いだと言われて、大いに感激したとです。」とのことした。

ご縁は宝物。

残念ながら、その数ヶ月後に中村哲さんはいわれのない銃弾に倒れその生涯を閉じられ、それが最後のやりとりになったとの事でした。その中村哲さんからプレゼントされた書籍の表紙をめくったところに、「謹呈」と書かれており、謹んで呈します。との文字に込められた中村哲さんの謙虚さ、器の大きさ、人間としての素晴らしさに心を打たれたとの事でした。そんな密かで大事な経験を踏まえた上で、高藤さんは、若者達に私がバイブルにしていると繰り返ししつこく勧めていた書籍をプレゼントするにあたり、上から目線ではなく、奢る気持ちなど微塵もなく、まさに謹んで、彼らがこの研修をきっかけに素晴らしい未来を手に入れてくれることを祈りつつ呈するとの想いを込めて、贈られたとの事でした。そんな熱か男達がいる九州、関わらせてもらっている私まで心に火を点けられます。同じ志を持つ人達とのご縁は本当に宝物。私も出来るだけの支援をさせてもらいたいと胸に誓う夜になりました。皆様、引き続き、よろしくお願いいたします。


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