令和2年9月29日快晴
疾走。
夜風が気持ちいい季節になりました。今日は早朝から夜までぎっしりと予定が詰まっており、分刻みのスケジュールに追われて走り回る1日になりました。午前中は10時に約束があった新築のご相談にお客様が来られる前に、なんと3組も取引先の(アポなしもしくは突然のアポ取りで)来社があり、ドタバタしたスタートを切りました。ろくに昼食をとる間もなく、昼からは、大まか工事を終えて、仕上げに入っているインターナショナルスクールの新築工事の定例会議、その後、旧知の不動産会社の社長に須磨に呼び出されて中古物件の改修工事の相談を受け、帰りは元町の一般社団法人職人起業塾の事務局に立ち寄ってから帰社。夕方からは学生さん、出張中のスタッフと続けざまにズームでのミーティングと文字通り息つく間もない慌ただしさでした。
24時間戦う世代。
そんな慌ただしく走り回る印象をオーラにまとい雰囲気を漂わせていたからか、久しぶりにお会いする起業当時からお世話になっている不動産会社の社長に、「高橋くん相変わらず休んでないんかいな?」と聞かれました。そうですね、そう言われたら昔からあまり変わっていないです。と答えて、そういえば、と思い出したのは20数年前下請けの大工工務店から抜けだそうと必死にあがいていた頃のことです。その社長が言われる通り、24時間365日休みなくがむしゃらに働いていた時代があり、当時はほとんど大工として現場に出ていたことを考えれば、働き方というか、その業務内容はずいぶん変わりましたが、時間に追われる暮らしぶりは今も本質的にはあまり変わっていないかもしれないと感じました。
役割と責任がタスクを作る。
20数年前に起業した当時、なぜそんなに忙しく走り回っていたかと言うと、単純にこなすべき役割が多かったからだと思います。大工であり、設計であり、営業であり、そして小さいながらも一応組織の経営者であった私は圧倒的なタスク量に押しつぶされそうになりながらそれらの役割を何とかこなしていたいた様に思います。翻って、今を考えると随分とスタッフも増え、現場に出て作業することもなくなり、図面を引くこともお客様との打ち合わせをすることも滅多になくなりました。スタッフに実務的な役割多くを任せるようになり、ずいぶんと私の時間は余裕ができたはずなのですが、実際はそうなっていないのが不思議です。
器の大きさ。
昨日、このブログで紹介した出口治明さんが書かれた貞観政要の解説本の中に、人の器についての記述がありました。企業はリーダーの器までしか成長することはできない。との原則論から、経営者は器を大きくしなければならないのですが、そこには、おいそれと人間の器が大きくなる事はないと厳しい調子で書かれていました。ではどうすればいいか、と言う問いに対する答えは器は大きくするものではなく、空けるものとの理論を出口氏は提言されており、できるだけ器の中(頭の中)に詰め込んでいるものを捨て去って空っぽにすればまた新たに新しい考え方や知識、技術や人とのご縁を入れられるスペースが出来て、その分、会社は成長することができるとのことです。
器を空ける。
リーダーが器を空にすることとは、今まで積み重ねて信じて疑わない既成概念を打ち捨てること、と出口氏は少し抽象的な表現をされていましたが、私はそれを読んでもっと物理的(時間的に)に空っぽに出来るように考えるべきではないかと感じました。それは。考え方云々よりもまず、現在使っている時間と行動を捨て去り、スペースを空ける事ではないかと思うのです。とは言え、人にはそれぞれ役割と責任がありそれらを全く何のフォローもせずにただ、放棄してしまう事は、職業人としてあり得ません。もちろん、放棄ではなく委譲をすべきで、大きく役割と責任を渡す事が出来れば組織の運営に支障をきたす事なく、リーダーに自由な時間が出来て、新たなことにチャレンジする事が可能になります。リーダーの器が大きくならなくても、強力なフォロアーがいれば、組織は成長できると思うのです。
企業はそこに集う人の器の総計なり。
自分自身を振り返ってみると、20年前とさして変わらず、未だに時間追われて走り回ってはおりますが、起業当時私の仕事の全てだった実務は殆どスタッフが行ってくれるようになりました。そのお陰で、私は新たな事業を立ち上げたり、実務を頑張ってくれているスタッフのフォローや事業の維持継続ができるように組織全体のブランディングに時間を使えるようになったり、職人の社会的地位の向上という創業時の志に向けての事業を、自社だけではなく全国に広げる活動を行えるようになっています。これは決して自分の器が大きくなったのではなくて、私が担ってきた役割と責任を引き受けてくれるスタッフの成長の賜物だと改めて感じた次第です。結局、企業は(そこに集う)人(の総計)なり、という事なのでしょう。
セールス→マーケティング→マネジメント
そんなことを考えて、改めて感じるのは、やっぱりマネジメントの重要さです。創業間もない頃はどうやって売り上げを上げるか、どのように集客するかばかり(セールス)を考えて闇雲に走り回っておりました。その後、先の見えない不安から抜け出す為に持続的に売り上げを上げ続ける仕組み作り(マーケティング)を熱心に学ぶ中で、原理原則に則れば、企業は人なりだ!との結論を得て、17年前に大工の正規雇用化をきっかけに労働基準法の完全適法の運用、人事制度(賃金制度、等級制度、評価制度)の整備、社内でのコーチング研修を皮切りにした個別面談でのスタッフか抱える問題、課題の抽出とその改善のサポート等の運用を繰り返す(マネジメント重視の)事業形態に転換しました。今考えれば全く逆からの組立だったと自分の無知を恥ずかしく思います。。
貞観政要の凄み。
ちなみに、私が主催する建築業界に特化した研修事業、一般社団法人職人起業塾でもサービス開始当初は建築実務者向けにマーケティングの基礎理論を教えて、顧客接点強化の観点から現場起点の生涯顧客創造の仕組みを作り上げるサポートを行っておりました。しかし、上述した通りの自分自身の逆説的な事業構築を行った反省を元に、現在はマネジメント重視の少人数ワークショップの開催を中心に活動を行っており、職人起業塾の卒塾生を中心にマネジメント×マーケティング×ブランディングの三位一体論を元に事業計画づくりのサポートをしています。その中で、感じるのはやはり経営者の器を大きくする事の難しさと、その中身を引き受ける幹部の意識改革の重要さです。
さすがに多くの経営者が勧められる貞観政要、非常に深い示唆を頂けました。継文庫に寄贈下さった川島先生には心より感謝いたします。ありがとうございました。
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