令和3年1月7日 曇り時々雪
寒波襲来。
またもや強い寒波が日本列島に押し寄せてきて、厳しい寒さに震える一日になりました。今日は京都の顧問先の初出社の日と言うことで私も上賀茂神社への参拝と全体会議、そして社員大工育成と工務部の業務改革ミーティングに参加しました。顧問先の事業所がある京都の紫野という大徳寺近くの北のエリアでは夕方の時点で既に氷点下になる寒さで、昼から小雪が舞いました。京都はほんとに寒いところです。その事業所の工務メンバーとは年末にも8時間に及ぶ長時間のミーティングを行いましたが、その内容を踏まえて今日もガッツリと長時間の話し合いの時間を持ちました。非常に実践的な計画を立てる良いミーティングができたと思います。時間とミーティングの質が整合するとは思えませんが、しっかりと時間をかけて丁寧にコンセンサスを取るのは非常に重要だと感じた次第です。
お任せ工事
そんな寒かった今日、朝一番は大工の大ちゃんと一緒に、昨年末に着工し、ほぼ完成に漕ぎ着けた寿司屋さんの現場に完工のチェックに向かいました。1月中旬、もうすぐ新規オープンを予定している三宮のメインストリート、北野坂で工事を行なっていた「鮨竜」さんは隠れ家的なカウンターだけの小さな寿司店で、日本の食文化の頂点(だと私が思っている)の寿司を洗練された大人っぽい空間で食せるお店を目指されています。落ち着いた黒っぽい感じのインテリアデザインのイメージと予算だけをオーナー様から指示されて、「後はまかすので、自由にやってもらって良いです。」とご注文をいただきました。私もここは大工工務店の腕の見せ所とばかりに担当大工の大ちゃんに意匠から収まりまで全て任すと一任し、後は打ち合わせはおろか現場にも顔を出すことなく任せた物件です。
モールテックスとセンの無垢一枚板
年明け早々、そろそろ完成引渡なので見に来ませんか?と大工の大ちゃんに誘われて、今日久しぶりに現場を訪れたのですが、私が想像していたよりも、オサレな洗練されたお店になっており、大工としてのセンスを遺憾なく発揮されている仕上がりに(手前味噌ながら)これならお店の大将にも、オーナーさんにもご納得頂けるのではないかと自信を持ちました。特に、寿司店では珍しいモールテックスという左官仕上げのカウンターと花板さんが立つバックのタイルの統一感の中に現場造作で作った無垢材のセンの一枚板の建具を配した収納が存在感を示しており、なかなかやるねーと、素直に大ちゃんの実力を認めました。
大工デザインの意味
その他にも、カウンターに出される寿司を映えさせるカウンター上からのピンスポットのダウンライトの配置と、シンプルな中にも和風の雰囲気を醸す多可町産ヒノキの節が少ない羽目板の下がり天井、通路に余分な照明器具をぶら下げない間接照明の配置など、照明計画、建築照明にも細かな配慮がなされていたり、コストを抑えるのと意匠性を高める両方をバランス良くまとめており、玄関建具はコストカットの為に既存利用しようとの話もあったのを覆して、寿司店らしい無垢のガラス格子戸を作り直したり、必要な部分に費用をかける予算の配分も出来ており、デザイン、予算編成、顧客とのすり合わせ、施工をまとめて大工に任せる意味というか、価値を十分感じさせられる仕上がりになっておりました。
大工工務店のブランディング。
私達つむぎ建築舎は二十年前に大工集団として起業してからこれまで、自社の社員大工での施工、若手の職人の育成にこだわり続けて来ました。私の考える大工とは、単なる木工作業員では無く、現場全体を取り仕切り、顧客の要望をカタチに作り上げるプロデューサーであり、長年の使用に耐える耐久性と美しい仕上がりの高い品質を担保する現場管理者であり、数多くの現場経験を生かして、図面上の2Dでは無くリアルに空間イメージを3Dで想像出来るデザイナーであり、厳しいコスト管理を行い、顧客、自社、協力業者そして出入りする全ての職人さん達に納得して喜んで貰う現場経営者であるべきだと考え、無茶振りだとか、キツすぎるとか、こんなの大工の仕事じゃないとか、社員大工の面々から文句や泣き言を言われながらも「大丈夫、出来るって」と厳しい負荷をかけ続けて来ました。その長年の取り組みが大工工務店としてのブランドを作ると信じていますし、今回の「鮨龍」さんの物件のようにデザイナーも詳細設計を行う事無く、余分な費用をかけずして最低限のコストで良いモノづくりを実現する力を身につけてくれているのではないかと思っています。鮨竜さんのオープンに合わせて、お店にお邪魔しますので、私と一緒に大工デザインのお店で鮨を食したいと思われる方はお気軽にお声がけください。(笑)