11月17日 晴れのち曇り
職人起業塾のフォローアップ研修&第31回JBN京阪神木造住宅協議会研修会
昨日の大阪での【第五期】職人起業塾、最終講と感動的だった打ち上げの余韻を引きずりながら今日は朝から神戸三ノ宮にて職人起業塾のフォローアップ研修&JBN京阪神木造住宅協議会の第31回研修会の合同開催で一日講師とワークショップのファシリテーターを勤めました。最近になって気がついたのですが、どうやら私はあまり喉が強い方ではないらしく、2日間連続で朝から夕方までの研修講師を勤め、その後の懇親会でも熱く語ると最後の方は声が枯れて全く出なくなってしまいました。また、声だけの問題でもなく、1:20のグループコーチングと基調講演の連チャンはなかなか体力を消耗するもので、普段鍛えている筋力、体力とは違う部分の強さを身につけねば、と以外に軟弱?な自分に反省を余儀なくさせられました。。。ご参加頂きました皆様には今日の講演、グループワークでは随分とお聞き苦しかった点をお詫びいたします。
卒塾生たちの事例の共有
今日の研修は現在第七期を福岡で行なっている職人起業塾の卒塾生もしくは現役で学ばれている方向けへのフォローアップ研修という位置付けで、午前中は研修を受講し終えた塾生さんたちに「その後」の活動や成果について発表を頂きました。参加者は年齢も職種も立場も様々、またはるばる関東からご参加頂いた方もおられた中で同じマーケティング理論、マネジメント思考を学ばれた仲間がどのような活躍をされているかをリアルに共有できたのは非常に良かったと思います。職人的マーケティング論の構築には入り口から出口までの顧客接点の全てにおいて満足してもらえるように状態を整える必要があり、それは現場のマネジメント(品質、工期、コミュニケーション)を改革し続けることに他なりません。心がけ(あり方)と技術とコミュニケーションの3つのファクターの研鑽を積み重ねることで「あなたに頼んで良かった、これからもお願いします」と言ってもらえる生涯顧客を創出できると言い続けています。
良い仕事ではなく、魂がこもった仕事。ひと昔前の大工さんはいい仕事をしていたら自ずとお客さんが集まると言っておりましたが、私は今も基本的にはその考え方は間違っていないと思っています。ただ、いい仕事の定義やレベルが時代の流れと共に大きく変わっており、今は品質や見た目のかっこよさだけではなく、「体験」としての顧客満足が必要とされていると思っています。その体験とは家が出来上がるまでのプロセスであり、出来上がってからの住み心地であり、長いおつきあいができる安心感で、家をつくるだけではなく、お客様の暮らしを支える気概と決意が伝わらなければならないと考えています。その体験の提供を時代の流れに沿った様々なツールや手法を取り入れながらブラッシュアップし続けることで集客が出来ずに廃れて行った旧来型の大工工務店とは一線を画すビジネスモデルの構築ができると考えており、あらゆるモノのスピードが圧倒的に早くなった今、サービスもビジネスモデルも一瞬で陳腐化してしまうことを考えれば、常に最新の情報に注意を払い、バージョンアップを繰り返すことも怠ってはなりません。
斜陽産業の中で生き残る術
今日の研修会の基調講演では「激動の時代に向けて」〜パクリで起こす建築現場イノべーション〜と題して現場を始めとする業務マネジメントを改革、革新し続けるために私が行なっていること、その考え方を紹介し、参加企業の皆さんに自社独自の強みを磨きつつ、自社に適したサービス、システムの見出し方、ブラッシュアップの為の方法論を提案させて頂きました。「聴きたかったけど、仕事の都合で参加できないんです」という声も数社頂きましたので、以下にその要点を簡単にご紹介しておきたいと思います。
まずは住宅業界を取り巻く環境について、国土交通省の資料を元に少子高齢化、人口減少の局面を本格的に迎えた今、住宅産業は斜陽産業である、全体的には衰退していく業界であるという事実に目を向けるところから、フツーに過ごせばフツーに破綻する、今まで通りではその流れを止めることはできない。「現状維持は緩やかな破滅への道」であることから、絶え間ない改革を行う必要性を訴えました。
パタン化の思考
その上で、この厳しい問題を解決する糸口はマーケティングの構築(自社独自のマーケットを作ること)にあるとして、まずは現在自社が持っている成功パターンを見出す作業が重要だと述べました。建築業界は一件あたりの金額が大きく、またその分リピートまでに長い期間を用する為、偶発的に発生した案件の積み重ねで営業が成り立っているように感じ、3年先、5年先、10年先の売り上げ見込みが見えにくい業態です。刹那のチャンスをモノにすることを繰り返しているように考えてしまいがちですが実はそうではなく、これまで事業を続けてきた成功パターンを抽出し、それを社内で共有することで同じパターンの受注が取れる可能性を高めることが出来ると思いますし、顧客との接点で原理原則に基づいたマーケティング理論に沿ったマネジメントを行うことが出来れば顧客や市場からの信頼を集めて未来を標榜することができると思うのです。要するに建築業界ではあまり馴染みのないパタン化の思考を持つことを推奨しました。
観念を十分な実行力と経験とで裏打ちする
過去の大小様々な成功事例を元にしたパターンを概念として持った上で、その思考に沿った行動を顧客接点で実践することが出来れば、単に経験を積み重ねるのとは一味違う、思考を現実化するという意図を持った経験となり、思考がブラッシュアップされ、個別の案件ごとに違う住宅事業においても広範なケースに対応して、目指す結果に導くことができるようになり、ただ「頑張れ」を繰り返す観念なき経験主義者から脱皮できるのではないかと思うのです。しかし、パターン思考はこれまでの流れを踏襲する枠内の考え方であり、激動の時代に対応するにはそのパターンの中の本質的な部分を守りながら、さらに最新の情報を取り入れてより高次のサービスやマネジメントへとブラッシュアップしなければなりません。その為に必要なのが身近な同じ業態からではなく、遠い世界からヒントを得て、建築業界に今はないけれども、潜在的な顧客ニーズとして存在するモノに対するアプローチだと思います。
太閤秀吉のパターンを踏襲。
今回の基調講演の最後では遠い世界からの模倣で実際に建築会社が実務として明日から即使えるもの、そうでなく時間をかけて構築するものをいくつか紹介させてもらいました。諸事情あり、ここで全ての紹介は控えさせてもらいますが、その中の一つに第一期職人起業塾の開催時に塾生さんからの相談を受けて私がレクチャーし、大きな成果をもたらして大変喜ばれたものがありました。その相談は「建築工事の見積もり時に、他社との相見積もりに苦戦している」というもので、私が見習うべきだと伝えたのは豊臣秀吉の人心掌握術です。その当時、大河ドラマ「軍師官兵衛」がオンエアされていた時期で、その中であった初めて秀吉が徳川家康を大阪に呼び寄せ、謁見して天下に家康を傘下に収め、名実ともに天下統一を成し遂げた際のエピソードを「百戦百勝のパターン」として伝えたのです。秀吉は天下をまとめる為に絶対に謁見の場で家康にひれ伏してもらい、忠誠を誓ってもらう必要があり、それを確実にする為に前夜お忍びで家康の宿所を訪ねて、「頼むから明日、わしに忠誠を誓ってくれ」と頼み込んだのでした。相見積もりで悩んでいた彼には、見積もり提出までに、内容や金額がお客様の要望に叶っているか、間違いなく期待通りの見積もりになっているかを提出の期限までに何度でも秀吉のようにお客様に聞けばいいと伝えたところ、それ以後相談してきた彼は100戦100勝で全ての工事を受注出来たとのことでした。
アンテナとアウトプットの関係性。
遠い世界からの模倣、ヒントを得て自分の仕事をブラッシュアップするには大河ドラマを見て、コミュニケーションの取り方を学び、実務に落とし込む思考が必要です。ただ、面白おかしくTVドラマを見ているだけでは何の教訓も得ることは出来ませんが、事例を概念化しパターンを抽出するという習慣があれば、TVドラマだけではなく、読書をしても旅行に行っても日々学ぶことは際限なくある訳で、遠い世界からの模倣は決して難しいことではありません。ただ、その為には毎日アンテナを高く広く張り巡らすことが必要で、その習慣を持つのに最も有効なのは毎日のアウトプットだと思っています。私のようなにブログを書くもよし、メルマガを配信するのでも、個人的に日記をつけるだけでも良いかも知れません。とにかく毎日起こる様々な出来事を書き留め、振り返り、自分の中で咀嚼してその事例に学ぶべきこと、隠されているメタファーに意識を向けてみること(概念化)で見えてくるものが大きく変わると思うのです。深呼吸は大きく息を吸い込むのではなく、全ての息を吐き切ることで深い息ができると言いますが、日々のアウトプットこそが、情報収集の要だと強くオススメをして、昨日の講演の結びとさせて頂きました。
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