職人非正規雇用と構造計算省略の深い闇。@JBN京阪神木造住宅協議会研修会

平成31年3月29日 晴れ

マンプクロス

好評を博していると噂の朝の連続ドラマ「まんぷく」は世界ラーメン協会の初代会長だった安藤百福翁が主人公とあって私の様なラーメンフリークにとっては観ずにはおれない毎朝ののルーティーンになりました。と同時に、大阪の発明王であり、昭和の戦災復興と高度成長期の波に乗り一代で世界展開する大企業を作り上げたジャパニーズドリームの立役者たちの一翼を担うモノづくり企業のサクセスストーリーは昭和生まれの経営者にはたまらなく痛快で、勇気をもらえる物語でした。それが明日で最終回を迎えると知って少し寂しさを感じましたのは私だけでは無いはず。マンプクロスの影響でチキンラーメンが爆発的に売れるのでは、なんて思ってます。(笑)

総会シーズン開幕。

今日は不肖私が副会長を努めさせてもらっているJBN京阪神木造住宅協議会の総会があり、朝から一応、スーツを着込んで出かけました。総会はいつも通り、ちゃんちゃんと滞りなく承認の拍手の繰り返しで無事終了。その後、埼玉からお越しいただいた母体団体のJBNの大野会長による唯一無二の全国的工務店組織であるJBN(日本工務店協会)が今後目指していく姿と方向性についての講話を頂きました。全国の工務店のトップといっても過言でないJBNの会長職を務められている大野会長が冒頭から語られたのは「創業から100年を超える社歴を積み重ねながら大事に守ってきたのは地域への密着と大工の育成であり、今も24名の大工を正社員として雇用して、営業や設計など他の社員と同じような待遇で働いてもらっている」と言うことでした。

答えは職人の社員育成。

圧倒的な職人不足に陥りつつある建設業界でこの問題を看過してしまうといくら受注を重ねても工事にかかることができなくなり、当然、企業が破綻する原因のダントツナンバーワンの売り上げ不足に陥ってしまいます。職人不足問題は喫緊かつ重要な課題のはずですが、残念ながら根本的問題解決に業界全体が取り組んでいるとは言えないのが現状で、全国の工務店を取りまとめる団体のトップにある大野会長が職人不足を解消するには「職人を社員登用して生涯所得と社会的な補償を他業種と変わらないレベルに引き上げるしかない」と結論づけられたのは、この15年間、職人の内製化に取り組んできた私にとっては我が意を得たり!と思える素晴らしい、そして勇気をいただけるお話でした。

建築のプロが苦手な構造計算!?

第二部は、全国で構造塾を展開されているMs設計の佐藤実氏の講演でした。実は建築計画には欠かせない構造計算ですが、国家資格の免許を持っている建築士でも苦手な人が多く、ちなみに私も構造計算はできません。しかし、建築は人の命を守る重要な役割を担うわけで、安全に対するエビデンスが取れない建物を建てる訳にはいかないのは自明の理です。今日の講演では非常にわかりやすい例えと実際に地震で倒壊した事例の写真を多く用いてくださりながら、いかに構造計算で建物の安全を担保するのが大事であるかを丁寧に説明されました。ちなみに、すみれではずいぶん前からすべての物件で許容応力度計算を行っておりますが、実は、これは建築業界では非常に稀な部類で、ほとんどの会社では「4号特例」と言われる建築基準法の緩和措置に則って構造計算をせずに確認申請を出して、建物を建てています。

建築基準法の目的。

建築基準法の第1条は目的を示してあり、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と書かれています。国民の生命を守る最低の基準とは即ち、すべての建物で安全性の確認が求められるとの意味です。しかし、昔から大工さんが長年の経験で建ててきた木造2階建てまでの住宅については構造計算が必要でないと言う特例が定められており、これが「四号特例」なる法律です。もちろん、どんな建物でも建てて良い訳ではなくて、地震や台風に耐えうる壁(筋交い)の量を定めた仕様規定があり、壁(筋交い)の配置のバランスチェックと共に行う事になっています。昨今は、その壁量を基準法で定められた最低量より1.25倍、1.5倍と増やすことで耐震等級2とか耐震等級3とかの表示をすることが一般的になっています。以下は一般社団法人住宅性能評価・表示協会のHPに書かれている定義です。

1-2 耐震等級(構造躯体の損傷防止)

・地震に対する構造躯体の損傷のしにくさを表示します(等級3〜1)。
・希に(数十年に一度程度)発生する地震力が建築基準法で定められており、性能表示制度ではこれに耐えられるものを等級1としています。
・想定する地震の揺れの強さは、地域により異なりますが、この揺れは、東京を想定した場合、震度5強に相当します。
・等級は1から3まであり、等級2は等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して損傷を生じない程度を示しており、等級3では1.5倍の力に対して損傷を生じない程度のものとなります。

建物は基礎と地盤と繋がっている。

建物は壁(筋交い)の量が増えれば地震などの横揺れに対して強くなります。ただ、建物は基礎と土台で地盤とつながっており、土台から上の建物ばかり強くしても基礎や地盤の構造検討を行わなければバランスが取れなくなります。耐震等級1と耐震等級3の建物の基礎が同じである事はありえないのですが、構造計算をして必要な鉄筋量や基礎の形状、地盤の強度を検討しなければ求められる耐震性能を発揮できる事はありません。非常に残念な事ですが、こんな当たり前のことを行っていない建築会社が実は大半で、正直に申し上げると、すみれでも数年前までは全棟構造計算を実施してはいませんで、私としても大いに反省し、現在、10年前まで遡って構造検討をやり直す取り組みに着手しております。そんな建築業界の現状に危機感を募らせたのだと思いましが、佐藤氏は全国で開催されている構造塾でその現状にに強く警鐘を鳴らしておられます。

「今だけ、金だけ、自分だけ」へのアンチテーゼ。

本日の研修会に参加された工務店経営者や、建築実務者の皆さんはもともと意識が高い方ばかりで、目から鱗が落ちた、と言うような衝撃はなかったかと思いますが、それでも改めて大野会長が強い口調で断じられた「職人の社員化と育成」や、佐藤氏がユーモアを交えながらも熱く語られた「構造計算の重要性」を再認識される良い機会になったのではないかと思います。私も曲がりなりにも京阪神木造住宅協議会の団体役員の末席に名を連ねている以上、地域に根付き、地域のインフラを守る工務店が正しい道、王道を歩み、持続継続的なビジネスモデルを確立して、今後厳しさを増す顕徳業界で生き残れる様にに少しでも寄与しなければ、と改めて思い、気合いを入れ直させられる機会となりました。手弁当でのボランティアですし、時間は取られるし、自社のビジネスモデルの確立もまだまだ道半ばではありますが、事業の目的はあくまで地域貢献である以上、「自分だけ良かったらいい」訳はなく、本当に微力ではありますが、私が出来る範囲で地域で頑張る同業者の皆様と共に学び、共に成長し続けられるように気張りたいと思います。京阪神木造住宅協議会は正しい在り方を求める工務店を大募集しておりますので、ご興味があれば、私(高橋)までお気軽にお声がけください!


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次回の開催は4月17日(水) テーマは「タイムマネジメント」です。
時間(=人生)のマネジメントについて改めて考えを巡らす時間を持ちませんか?「今の時間の使い方で未来に手に入る成果は大きく変わるのは分かっている、でも、忙しいし、、」と私も長年悩み続けておりましたが、少しずつですがマネージ出来る様になって来ましたよ。(笑)

68回【元祖】職人起業塾&波動セラピー


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