令和2年8月22日 快晴
コロナに負けるな。
昨夜は職人起業塾の卒塾式を終えた後、新型コロナの感染には注意しながらも、「やっぱり打ち上げの懇親会はやらんわけにいかんやろう!」と静岡駅前の居酒屋で最終の新幹線ギリギリまで飲んで、第15期生の塾生たちと熱く未来を語りました。コロナで延長もあり8ヶ月にも渡る研修をやりきった塾生達の笑顔は最高でつい飲み過ぎてしまいました。(笑)結局、神戸にたどり着いたのは日付も変わった深夜遅くで、丸一日の講座を集中して行って消耗していたこともあり、睡魔に襲われフラフラの状態、よく岡山まで乗り過ごして終わずに無事に帰ってくれたものです。(笑)
24時間戦う世代。
そんな昨夜の余韻を若干引きずりながらも、今朝はやっぱり朝起きをして、早朝から大工スタッフとオンラインでの1one1コーチングを行い、たっぷり1時間半、コーチングとティーチングがまぜこぜになった独特のスタイルでコミュニケーションの時間を持ちました。我ながら、朝早くから夜遅くまで毎日毎日よく働くもんだと感心してしまいます。その後は新築のご相談をいただいた方の敷地調査に設計スタッフと一緒に同行したりして建築実務に勤しんだりと、忙しくさせてもらえるのは、ほんにありがたいことです。
改革の狼煙。
昼過ぎからは兵庫県の中部、姫路からずっと山のほうに入った宍粟市へと車を走らせました。実は私、新型コロナの影響で、全国で開催していたオープンセミナーの予定を全て中止し、同時に集合型研修である職人起業塾の開催も今年いっぱいは見合わせることにしました。その代わりに九州でJBN主催の新人大工向けの実務研修の講師を務めたりもしていますが、出張の数も減ることだし、少しは時間が取れるだろうと考え、職人起業塾の参画企業向けの新たなサービスとして、リーダー向けのマネジメント革命のワークショップと合わせて顧問サービスの募集を始めたところ、9月から新しく3社の社外顧問に就任することになりました。その皮切りに今日は宮大工でもある大松建設社の社内ミーティングに初めて参加してきました。
憧れの工務店。
宍粟の大松建設と言えば、社寺仏閣を数多く手がけ、京阪神木造住宅協議会の研修会などで、お寺の新築工事の現場見学をさせてもらったり、棟梁に伝統技術の継承についての講演に来てもらったり、一昔前には波賀城の復元工事を請け負ったりしてきたりと、私たちと同じ大工工務店しては最高レベルの技術と実績を持った会社であり、私にとって憧れの存在でもある立派な会社です。ただ、時代の移り変わりとともに純粋な和風木造建築の需要が激減し、神社仏閣も入札制度を取り入れられるなど、競争原理が働き、昔ほどの利益は残らないようになってしまったどころか商売として成り立たなくなっる位厳しさが増しているようです。
埋もれたリソースと大工の誇り。
そんな時代の変化とともに、本来の圧倒的な強みである宮大工の技術や倉庫に山積みになった銘木の原版、どんな木材加工でもできるほどの木工機械設備等が、日の目を見ることなく、すっかり宝のもちぐされになってしまっているようで、私にすればなんともやるせないというか、もう一度、大工工務店の誇りと輝きを取り戻してもらいたいと強く思ってしまいます。大松建設の若手職人2人に、第3期職人起業塾に塾生として参加してもらったのも、大工が意識を変え、ブランドとして甦るようにとの願いを込めて、私が熱心に誘って参加してもらいました。若手の2人は、卒塾後、随分と意識を変えて頑張ってくれているようでしたし、もう一度、私が加入することで取り組みを加速させてもらいたいと思っています。
ブランディングはインナーから。
今季からスタートさせている、職人向けの人事制度改革のワークショップは、そもそもブランディングをするための下地作りであるインナーブランディングを推し進めるためのもので、職人を正規雇用、育成している事業所の経営者さんに参加してもらい、一緒に職人が未来を標榜できるキャリアプランを含めた人事制度改革に取り組んでいただいてます。大松建設の松本社長もそこに参加され、早速賃金規定や等級制度、評価制度の刷新に取り組まれた流れから、この度インナーブランディングを本格的に進める、そのきっかけとして私を社内に迎え入れ、社内改革に本気で取り組むことにコミットされました。私もその期待に応えられるように、出来る限りのサポートをする所存です。
職人はもっと稼げるべき。
私は、自分自身の職人時代、全く先行きの見通しが立たない状態に「今、金、自分」だけがよかったらいいと言う思考に陥り、自分の存在意義も認められず、刹那に生きるようになっていました。しかし、人生の非常に大きな割合を占める仕事が、飯を食うためだけの目的で、世の中の何の役にも立たない、誰にも喜んでもらえないのは、正直苦しいもので、俺は一体、何のために生きているか?と自問自答を繰り返すようになりました。その結果、自分だけが良かったらいいものではないと気がついて、まず、身近な人に喜んでもらいたいと、ついてきてくれていた大工達を正規雇用に切り替えて、安心して働ける環境を整えることから始めたのでした。自分を含めて、職人はもっと、豊かに暮らせるようになるべきだと職人の地位向上をミッションに掲げて、もっと稼げる職人になってもらうにはどうするべきかを考え、マーケティングを熱心に学ぶようになったのもその頃です。
付加価値を生み出す職人の育成。
経営学では利益のことを「付加価値」と呼びます。職人が稼げるようになるとは、要するに今までと違う付加価値を生み出さなければならないと言うことに他ならないと気付き、技術以外のスキルを身に付ける事(=学び、実践し、定着させる)を社内研修として社員の大工達に教えるようになったのが研修事業を行なっている一般社団法人職人起業塾の始まりです。私塾を開いてから7年以上が経ち、自分だけが良かったらいいのでは無い、の延長線上で同業他社の従業員向けの研修事業を立ち上げて全国で職人に古典的マーケティング論(=在り方を正し、顧客からの圧倒的な信頼を得る事で未来の売り上げを作り上げる取り組み)の実践と普及を進めてきましたが、それだけでは職人の社会的地位の向上が実現しないことを最近になって感じるようになりました。
マーケティング、マネジメント、ブランディング一体論。
私はマーケティングは経営者ではなく末端で働く現場の実務者が顧客接点で実践するべきである。と言うのが持論ですが、その職人達実務者がモチベーションを維持し続け、やりがいと喜びを持って付加価値を生み出し続けるには彼らをバックアップする事業所の仕組み(人事制度=賃金規定、等級制度、評価制度、研修制度、)が整っていなければならないことに気がつきました。私自身、この10数年間かけて繰り返し社内制度の整備を行ってきましたが、やればやるだけ従業員の待遇を改善することになり、その原資である売上利益を伸ばすことも同時に行わなければならず、実際の運用は非常に難しいことを身を以て知っています。
すべからず成果は状態に由来する。
要するに、マーケティング(独自の市場の構築)はマネジメント(社内整備、教育、キャリアプラン、役割分担)とブランディング(社内外からの共感、集客の仕組み、プロモーション)と一体であり、いくら顧客接点の職人の意識を変えて圧倒的な顧客満足を得られるように教育しても持続することはなく、一過性の取り組みで終わってしまうのです。現在、第16期まで続けてきた職人起業塾の研修で、私は多くの若者の心に火を灯してきたと自負もありますが、もしかしたらそれらは何の結果にも結びついていない可能性もあることに気付き、経営者を巻き込んでの一見畑違いに映りそうな人事制度やマネジメント革命のワークショップをここ最近精力的に行っている次第です。上述の顧問就任もその流れで、上っ面を滑る研修ではなく、根本からキチッとサポートをして業界を変えていきたいと思っています。ものづくり企業復活の狼煙を神戸からあげます。共に取り組んでみようと思われる方はお気軽に高橋までご連絡ください。
コロナ禍の下、大きく世界が変わってしまった今、生き残るには、マス・マーケットに広く浅くアプローチするセールススキルではなく、狭く、深く質の高い顧客との関係を築くマーケティング思考です。理論と想いを仕組みに転換し、社内に落とし込んで運用できる様にリーダー向けに少人数での研修を開催する事にしました。経営者、経営幹部、リーダー候補の方に一緒にご参加頂き、マーケティング思考のマネジメントを社内に根付かせて頂きたいと思います。
詳細はこちらから→https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/koza-2/management/