住宅業界が抱える深いジレンマ。

令和2年11月9日曇り時々晴れ

同じ穴のムジナ。

週末、不動産業界の深すぎる闇を書き連ねたネガティブブログをSNSで投稿してみたら多くの反響というか、コメントをいただきました。私は決して不動産業界の人たちを十把一絡げに悪人だと言っているわけでもないし、住宅業界と言う括りにすると、建築と不動産は切っても切れない仲というか、私自身も同じ穴のムジナだと思っています。住まい手が生命保険に加入してまで多額の借り入れをし、何千万円と言う大金をはたいて購入する土地や建物はお客様にとっては一生に何度もない一大イベントであるにもかかわらず、私たちにとっては日常茶飯事で、毎日その仕事をしています。住まい手と全く同じ金銭感覚を持って仕事に向き合っているかと問われたら、正直自信はありません。

当たり前が通用しない世界。

住宅業界の常識は一般常識とかけ離れていると言われる所以はその辺りに主たる原因があると私は思っておりますが、だからこそ私たちは慎重の上にも慎重を重ねて住まい手が後悔しない選択を行えるようにプロフェッショナルとしての立場をわきまえたアドバイスをするべきだと思っています。それにしても、今回の出来事で強く感じたのは、家を建てたいと考えている人が先行して土地の取得をされる場合、不動産会社に任せきりにしていては絶対にダメだと言うことです。土地の取得は家を建てるための手段であり、家を建てるのは、そこで快適で楽しい暮らしを過ごすための手段であると言う当たり前すぎることが、我々がいる住宅業界ではあまりにもおざなりにされているからで、最終的な目的をしっかりと見据えた計画を立てるサポートを私たちがするべきだと改めて感じた次第です。

一点モノを手にするのはご縁

建築と不動産の最も大きな違いは、家は図面さえあればいくらでも同じ物が建てられますが、土地はそうはいかない事だと思っています。分譲宅地のように同じような住宅用地がズラッと並んでいることはありますが、それでも住宅が並ぶ真ん中の土地と角地で山や海、公園などの景色が広がる土地では住まい始めてからの環境は全く違うものになると思います。とにかく、土地は常に一点モノで一度売れてしまうと二度と手に入らないのは事実です。私もこれまで、お客さんがじっくり検討している内に候補としてあげていた土地がどんどん売れてしまい、落胆されるのを目の当たりに経験したことがあります。逆に、条件が揃わないので、慌てずに少し時間を置いた方が良いとアドバイスした方が数年後、思っていた通りの場所にとても条件がいい土地が出てきて喜ばれたこともありました。一点モノの土地を手にするのに、タラレバはなくて、やっぱりご縁なのだと思うのです。

「仮押さえ」という名のきっついクロージング。

不動産会社の側からすると、お客さんが気に入った土地があり、資金計画に問題無ければ、即買い付けを入れて契約しなければ自分たちの仕事になりません。いわばそれが仕事なので「気に入った」と聞くと、「じゃあ一旦、抑えましょうか?」と返すのは当然の流れです。問題なのは、土地は家を建てるために買うのに、土地が決まっていないと、どんな家をどれくらいの費用をかけて建てられるのかを買い手は把握しておらず、坪あたり70万円で35坪なら2500万円もあれば大丈夫ですから、とか適当なことを言われても全くイメージが掴めないことです。そこで、買い手は土地以外の費用がどれくらいかかるか具体的に算出したいと思うのでしょうが、その時点で土地の買い付けを入れてしまっていたら、不動産業界ではさっさと決済の日を決めろ、即契約を結べと迫ります。とにかく、不動産業は売買契約を結び、決済を終わらせたら後のことは関係ないのが実際ですから、致し方ありませんが、買い手にとっては恐怖以外の何物でもありません。

目的から逆算する家づくり

つい、「買うか買わへんのかはっきりしろ」と決断を迫る不動産会社の人を悪者のように言ってしまいますが、チンタラしていたら欲しい土地も売れてしまいますし、それはそれで彼らの仕事なのではっきりさせるのは別にいいと思います。ただ、建築やそれにまつわる資金計画をサポートする立場として、買い手は目的を明確にして、目的から逆算した計画を立ててから進めるべきだと思うのです。せっかく家を建てるのですから、どんな暮らしをしたいのか、どんなインテリアに囲まれて暮らしたいのか等をよく話し合い、それを叶えてくれる作り手と一緒に土地探しをするべきだと思うのです。条件を整理してから土地を探せば、これだと思う土地が見つかったときにそんなに思い悩む事はなくなると思います。

適正な予算を自分で決める。

しかし、一概に建築会社と言ってももいろいろで、大手ハウスメーカーに相談しに行くと、自社で建てる住宅の金額ありきで進められるので、住宅ローンが通る上限まで引っ張り上げられたりと、総予算が高騰してしまうことが少なからずあります。逆に分譲販売などをメインにしているパワービルダーに行くと、ちゃっちゃと直ぐにローン審査が通る無理のない総予算で土地と住宅をまとめて提案してくれますが、昭和〜平成までの旧態依然の耐震や断熱の性能の低い住宅を当たり前のように提案されます。いざ建築の段階になって思った家にならないと気づいても手遅れだった、という例も枚挙に暇がありません。「目的を明確にする」と言うのは、新しい家に住みだした後の暮らしであるはずで、無理のない資金計画を立てて、毎月のランニングコストからの総額をまず自分たちで導き出してから、建物と土地、そして意外にかかる諸経費を含めた費用の配分を決めるべきだと思います。

本当の事はインターネット上にはない。

とは言え、本当に住まい手の立場に立って同じように物事を考えて計画をサポートしてくれる建築、不動産のプロフェッショナルを選ぶのも簡単ではありません。現在は情報革命と言う名のもとに、インターネットが普及し、誰もがスマートフォンでいつでも何でも検索して調べられる時代になりました。インターネットが普及する前に比べると一般消費者は膨大な情報を手にすることができますが、本当に大事な情報は残念ながらインターネット上には見つけることができません。昨日のブログに登場した無茶苦茶な不動産会社も地元ではそれなりに販売実績を上げていて、名前くらい知っている人は多くいます。HPをのぞいてみると「感謝」の文字がトップページに大きく描かれていて、そんな悪そうには思えません。ただ、ウリがキツそうな印象は否めませんが。(笑)
とにかく、インターネット上の情報も配信者の立場で書かれている訳で、(私を含め)100%正しい情報などあり得ないのが現実で、そこはしっかりと認識すべきだと思います。

住宅協会の構造的ジレンマ。

結局、どうしたらええねん?と突っ込まれそうな、とりとめのない文章になってしまいましたが、私が考える結論は、まずは信頼できる建築会社を選択するのに、善人か悪人かを見極めるべきだ。と言うことではなくて、構造的なポジションを考えるべきではないか、という事です。売りっぱなし、建っぱなしで後は関係がないと言う業者ではなく、工事が完了して、引き渡しが終わった後も関係性を継続し、顧客からのリピートや紹介で生業をなしている業者と一緒に進めるべきではないのかと思うのです。その会社が良い会社かどうかではなく、顧客満足を積み重ねなければ存続が危うくなるような事業所は、住まい手の目的と利益の相反がないはずです。逆の視点から見れば、チラシやウェブ広告などの宣伝を熱心にしている事業所は常に新規顧客を呼び込んで刈り取る狩猟型の体質の会社が多く、今だけ金だけ自分だけ思考に陥りやすいのは人の善悪ではなく、構造の問題です。しかし、残念ながら(私達も含めて)一見さんお断り的に紹介とリピート受注で営業を成り立たせている会社は、一般消費者に認知される機会が少なく、存在自体を見つけることが難しかったりします。これが私が長年感じている住宅業界が抱えるジレンマです。とにかく、せっかく夢のマイホームを手に入れて公開されるような人が1人でもいることを心から祈っています。


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