10月12日 日本晴れ
富士山麓での二日間の研修を終えて帰途についています。
(私個人的に)絶賛開催中のゼロベースに立ち戻って学び直すキャンペーンの目玉、顧問社労士の川西先生に誘われて小田全宏氏のスピーチ講座に参加してきました。
今回の研修での学びの目的は、人に自分の想いをどのようにしたらしっかりと伝えることができるかという長年の懸案への解を求めてで、そのために必要な理論やスキルを小田先生にみっちりと教えていただきました。
ガッツリと二日間、脳みそは心地よい疲労感に包まれながら、しかしすっきりとクリアになった満足感でなんだか幸せな気分を味わっています。
伝える力の必要性
工務店のオヤジがなぜスピーチ講座に行くのか?と疑問に思われる方もおられるかもしれませんが、実は私たち建築に携わる者にとって話すスキルは非常に重要です。
私たちの仕事では何をさておき、お客様からのヒアリングが最も重要であり、どのような建物にしたいか、そこで何をしたいか、なんの為に工事をするのか、というお客様の要望を聞き取ることから全ては始まります。
そして聞き取った事を理解するだけではなく、その内容を反映して実際に現場でその『モノ』を作らなければなりません。
そのためには、現場に関わる数多くの職人たち全員にお客様から聞き取った想いや要望をしっかりと伝えなければならず、モノづくりを生業とする私たちは、ヒアリングのスキルと同じ位の『人に伝える力』が必要なのです。
とは言え、『人から人に伝達する力』の定義は非常に曖昧で、確固とした方法論が確立している訳ではなく、「伝わっているかを確認しましょう、」程度の注意を喚起するくらいしか出来ていないのが正直なところ。
もう少し、社内で伝達する事の共通認識を持てる工夫は無いものか、と長年の悩みの解決の糸口が有るのではないかと思い、今回の研修に参加する事に決めました。
そして、案の定解決の糸口を見つけさせて頂きました(笑)
どうしても伝えたい事。
もう一つの理由は、最近人前で話をさせて頂く機会が増えて来た事もあり、時間を割いて私の話を聞いて頂く方々に対して、無駄な時間になったとガッカリされない様に努力をしなければならないと思っていたから。
せっかくのお時間を頂くのなら少しでもバリューを感じて頂ける様にしたいとの想いです。
そして、それに付随して私には『どうしても人に伝えたいこと』があります。
その『伝えたい事』をしっかりと話せて、聞いて頂いた方の記憶の片隅に残してもらいたい、その為には慣れない、拙い、分かりにくい現在の私の話から脱却しなければと考えました。
その『私がどうしても伝えたい事』とは、大工をはじめとする職人が仕事に対する意識を変えれば明るい未来を見ながらやりがいを持って働けるようになるということです。
そして、将来の展望が見れる様になれば、現在全くと言っていい程、入職する者がいなくなった次世代のモノづくりを担う若者を育てる土壌を作る事が出来るということ。
それを職人や工務店の経営者さんにしっかりと伝えることで職人の働き方、付加価値、雇用の見直しを図り、職人たちの社会的地位の向上を叶えて日本の宝である大工が誇りを持って働ける社会にもう一度戻したいと言う想いです。
人生を変えた1冊の本に書いてあった原則
私の人生を大きく変えたと言っても過言ではない、1冊の本、『7つの習慣』の中に、「理解してから理解される」という人生を成功へ導く原則が書いてありました。
創業当初、全く先が見えない時にその一文を読んで、これだ!と衝撃を受けた私は、必死になってその原則を実践する様に努めました。
お客様が求めている事を理解して、それを建築の実務として実践する。そしてその結果を見て頂いて納得された方が私を理解してくれる様になりました。
その当時のお客様は工事を終えた後、「あんたやったら大丈夫やわ」と言って、友人や親戚、知り合いの方等を次々紹介してくださり、その度にまた、『理解してから理解される』という原則を実践し続けると起業してまだ間もない本当に小さな会社だったにも関わらず、徐々に安定して受注を得る事が出来る様になりました。
すみれが大工職人数人の集まりから、建築会社へと発展する事が出来たのは、間違いなくその当時の私たちのことを理解してくださったお客様のお陰です。その後、徐々に事業規模は大きくなって行きましたが、5年程経ってから成長はピタリと止まります。しかも、それまで無かった様なクレームが続出する様になりました。
その原因は、仕事を取って来るのは私の仕事で、年がら年中忙しく走り回り、そのしわ寄せで実際にお客様の要望を反映すべき全ての現場に行けない様になったのが大きな要因でした。
現場の数が増え、職人の数が増えたことで、『理解して(実践して結果を出してから)理解される』という原則が守られなくなっていたのです。
「このままではあかん、、」
ずいぶん悩んだ結果、思い浮かんだ事は、やっぱり原則に立ち返るべき、という事です。結局、私が行なっていた事は片手落ちの中途半端な原則で、現場で実際にモノづくりをする職人に理解されていなかった事が分かりました。
まずは、職人達の事を理解する姿勢を持たなければ、理解されるはずが有りません。
そんな当たり前のことに、やっと気付いた私は、それまで社員とは言え日給月給の日雇いに毛が生えたような雇用条件だった大工職人を正規雇用に切り替え、労働法に完全に適合した真っ当な労働環境を整備することに踏み切りました。そして、正社員となった彼らに『原則』を教え、共にそれを実践してくれる様に理解を求めたのです。
要するに、『意識を変えてくれ』と頼んだのでした。
意識が変われば未来が見える。
その結果、社員になった大工達は、それまでの「現場作業だけ言われた通りにやればいい、」という考えを切り替えて、お客様との窓口や現場全体の品質管理、アフターメンテナンス等、イマドキの一般的な大工職人がやらない様な事を行なってくれる様になりました。
そのお陰で、現在のすみれは一切の宣伝広告をやめても毎年同じ様に受注を頂く事が出来ており、また来年、5年後、10年後の売り上げの見込みが立つような仕組みが出来上がりつつあります。
(私を含め)職人が意識を変えることで明るい将来が徐々に見えるようになってきたのです。
このことを世の職人たちや工務店経営者にどうしても伝えて絶滅危惧種となりつつある大工に日本の宝として、職人の誇りと生きがいを取り戻してもらい、安心して働いてもらえるような業界に変えたいと思っています。
そもそも、建築業界にどっかりと横たわる根本的な問題は、将来の売上げ、利益が読めない事だと思っています。だから職人という最も重要であるはずの人材の育成に投資が出来ず、外注の職人に任せてしまわずにはおれない構造になってしまったのだと。
この問題を根本的に解決する事で業界は大きく変わるのではないかと思っています。
道のりは遥か遠いですが、近い将来必ずやってくる深刻な職人不足が表面化する前に職人会社である私たちが、なんとか一石を投じておきたいと思います。
そのような意味を踏まえ、今回の研修は非常に意義の深いものであったと思いますし、今回の学びを糧に自分の想いを人に伝えることにしっかりと向き合って、創業以来掲げてきたすみれのミッション、「職人の社会的地位の向上」を果たすべく社業に邁進したいと思います。
この度の研修にお誘い下さった川西先生、本当にありがとうございました。
そして、小田全宏先生、(いつもですが、)今回も大変大きな勇気をいただきました、今後ともお力添えをいただきたく存じます、よろしくお願いします。
心より御礼申し上げます。
心謝。