理想の実現への危うさと怖さ。@キリングフィールド

10月25日 晴れ

私の時差ボケ解消法。

昨夜の便でブノンペン空港から成田への夜間飛行で帰国したら、日本の気温は7度。30度前後のカンボジアからのギャップに思わずくしゃみをしてしまいました。

カンボジアとの直行便は成田しか無いとのことで、東京経由で大阪空港に帰って来たらもう昼になってしまってましたが、長時間の移動はこの数日間の寝不足を一気に解消してくれると共に、すっきりした寝覚めで時差を感じること無くすんなりと日常に戻れるメリットがありました。
合計13時間にものぼるフライト、悪いことばかりではなく良い事も有るものです、やっぱり、世の中はすべからず表裏一体ということ。

 

感謝、感謝のカンボジア行。

今回のカンボジア出張は実務というよりは、2年前から海外に事業所を立ち上げている建築業者としてご相談頂いたことに対し、少しでも私がお役に立てることがあるのではないかと思い訪問を決めました。しかし、実際のところ私が一緒に渡航したことがお役立ちになったかどうか非常に怪しい上に、初めてのブノンペンで逆に私の方が教えられることの方が多く、またイロイロと御世話を頂いて、同行頂いた薮田ご夫妻にも、現地で頑張っているご子息にも、そしてそのパートナー、ご親戚をはじめとしたプノンペンの多くの方々に本当に親切にして頂き、ご縁を頂けたことに感謝することしきりです。モチロン、単身カンボジアで奮闘している浦久社長、予定していなかったにも拘らずバッタリと出会った小西社長も含めて。

皆様、本当にありがとうございました。

笑顔が溢れる国、カンボジアであったこと。

昨日の最終日はせっかくプノンペンに来たのだから、有名どころは訪問しておいた方が良いでしょう、とのアドバイスで、観光地巡りという雰囲気ではありませんでしたが、カンボジアという国を知る時間に充てさせて頂きました。


モチロン、たった一日で何が分かる訳ではありませんが、異国でその地に暮らす人達とコミュニケーションをとり、その歴史や異文化に触れる機会は非常に貴重且つ有意義で、自らを振り返る時間にもなりました。以下に写真と共にプノンペンで感じたことの中で特に衝撃を受けたポル・ポト政権、クメール・ルージュが行なった残虐な行為とその名残についてのみまとめておきたいと思います。

 

キリングフィールド

キリングフィールドという映画が封切られたのは1985年、確か私が社会に出て働き始めた頃でした。凄惨なストーリーと描写がずいぶんと話題になり、私も観に行った覚えがありますが、とにかく戦争の悲惨さを延々と描いた映画という印象で、同じ時期に公開された他の戦争映画、当時はベトナム戦争を描いた映画も多く、プラトーン等に埋もれてしまい、強い印象を持っていなかったのが正直なところです。


プノンペン市街から車で40分程度のところにその映画のタイトルのままの施設がありました。ポル・ポト政権時代に行なわれた歴史上まれに見る残虐な行為の慰霊と、人類が起した大きな過ちを忘れること無く、語り継がれることを目的として建立された慰霊塔を中心に、文字通り残虐な行為が行なわれた殺戮の場が残されてありました。

今は草が生え、鶏が歩き、りすが忙しく動き回る公園の様なその敷地には未だに土を掘り返すと、人骨が無数に出土するらしく、その動物達の平和さが何とも言えない悲しみを帯びている様に感じました。

 

S21 (トゥール・スレン)

キリングフィールドの音声ガイドツアーの最後に、プノンペンの中心地にあるトゥール・スレンにも是非立ち寄て下さい。と案内がされており、処刑場であったキリングフィールドに送られる前に拷問を行い無理矢理罪状認否をしていた施設である元は高等学校だったというその施設にもキリングフィールドからそのまま向いました。


同じ民族による同胞への拷問と殺戮、人間としての尊厳をことごとく叩き潰し、ねつ造した自白文書を認めさせる為に設けられたこの施設では今も当時の拷問部屋や収容施設がそのまま保存されており、また被害になった方々の顔写真やここで行なわれた凄惨を極めた拷問の再現の絵画等、カンボジアの歴史に刻み込まれた生々しい傷跡が残されてありました。


施設全体が深い悲しみと怨念、憎しみ、そしてどうしても取り返しがつかない程の過ちを悔いる空気というのでしょうか、思わず背筋が寒くなるその展示と共に正視できない程の悲惨な出来事がここで行なわれていたという臨場感に息をのみました。

 

リアルタイムに生きて来た時代。

上記の2つの施設の音声ガイドツアーで冒頭に聞こえて来たのは、ポル・ポト派、クメール・ルージュが理想の社会を作り上げる為に武力蜂起して、その実現に向けた政策の中で大量虐殺が行なわれた、という説明でした。民族の完全な独立を果たし、「完全な共産主義社会」=原始共産制社会の実現を目指すその試み自体は当時の冷戦時代にあって間違いなく1つの流れでもあり、イデオロギーの違いはあれども、そんなに悪者扱いをされることもありませんでした。アメリカは反中国、反ベトナムのポル・ポト派を容認、正式な国家として認めていた時代、私達も単に外国の首相として違和感無く受け入れておりました。

調べてみると、ポル・ポト政権が崩壊したというニュースが流れたのは1979年、ベトナムの影響を強く受けたヘン・サムリン政権(カンボジア人民共和国)が樹立されたのは私が12歳、小学校に上がる年でその後、現在に続く、国連監視下で自由化されたカンボジア国民議会選挙により立憲君主制が採択されたのが1993年、私は27歳でバリバリと働いていた頃のようです。私もリアルタイムにそれらのニュースを聞いていましたが、私の少年期から青年期に至るまでベトナム、カンボジアのあたりは常に戦争やクーデターが起こるキナ臭い地域、地雷原が広がる危険な場所という印象くらいで、そこで行なわれた歴史的な残虐行為について深く知る機会さえ無かった様に思います。今回改めて知ったカンボジアの悲しみの歴史は、決して遠く過去の出来事ではなく私が生きて来たのとリアルタイムに同じ時間だったことに驚愕しました。

クメール・ルージュのイデオロギーは、ヨーロッパ撤退後の反植民地主義と極端な毛沢東思想を組み合わせたものである。党の指導層は、1950年代のフランスの大学への留学中に、そうした思想に親しんだ。またカンボジアの共産主義者の間には、ベトナム人への長い服従に対する反感があった。彼らは政権を握った時、カンボジアの社会にかつて思い描かれた原始共産制への移行の強制を試みた。党中央が毛沢東思想に染まっていく上では中国共産党の康生の薫陶によるところが大きく、康生はポル・ポトを「毛沢東思想のもっとも忠実な実践者」として賞賛した
Wikipediaより抜粋。

 

理想社会の実現。

ポル・ポト派、クメール・ルージュによって創られた残忍かつ非人道的な悲惨な歴史について、今更その善し悪しなど考えるまでもありませんが、私が今回、最も強く感じたのは、彼らは(クメール・ルージュは農村部の少年兵が多くを占めていた)元々、自分達の住む社会を良くしたい、理想を実現したいという志を持っていたのだと言うことです。それは世紀の大悪人、狂気の人と評されているポル・ポトにしても同じではないのか、と考えると盲目的に理念に突き進む姿勢は自制も自浄もなされないという、程度の差はあれ、誰にもその片鱗を持つのではないかということ。

私自身の思考、行動を鑑みたとき、自分の掲げる理想に突き進む為に極端な選択をしたことが無いか、と問われると、正直自信がありませんし、大義を掲げて間違った判断をしたことなど枚挙に暇がありません。

ポル・ポトが誰もが平等に生きることが出来る理想郷の実現を目指した革命を起した挙げ句、結局は国民の1/4を虐殺したと言われる国を危うくする様な狂気の沙汰へと突き進んだ経緯を聞きながら、割り切りは魂を弱くする。という言葉を思い出して、人は理論武装を固め、イデオロギー、信念に基づいて理想に突き進む!と絶対的な確信を持った時程危うさを増し、根本的な間違いを犯しやすくなるのではないか、という疑問を感じました。

 

 

在り方を見つめる機会。

常日頃、マーケティングというか、ビジネス全般、いや人生そのものに対して共通する概念として先ず在り方を正すことから全ては始まる、と思っていますし、社内外でも言い続けています。その在り方の原点は商売人とか職人とか経営者とか、人によって様々な役割、立場があるとしても結局、人としてどう在るべきか、に集約されると思っています。

しかし、自分の在り方をじっくりと見つめ直す機会等、煩雑な毎日を送っていてはなかなか時間を割くことさえも難しく、つい忙しい日常に流されてしまいがち。そう考えると、今回の様に知らない国に行き、自分の住むのと全く違う世界に身を置いてみて全く違う文化、慣習、歴史に触れてみることで自分自身のおかれている状況の有り難さに気付いたりするのは非常に貴重な体験だと思うのです。今回の弾丸カンボジア行は、渡航前に考えていた以上に、多くの刺激を頂き、そして深く自分を見つめる時間を持つことが出来ました。類い稀な機会を頂けたことへ感謝すると共に、感じたこと、学んだことを生かしたいと思います。

ご縁に心から感謝します。

心謝。

頭蓋骨が積み上げられているキリングフィールドの慰霊塔
頭蓋骨が積み上げられているキリングフィールドの慰霊塔

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