工務店の無価値化、進行中!

8月10日 晴れ

盆休み前日。

あまりの暑さにやられたのか、短い一緒を終えた蝉の亡骸をやたら見かけるようになりました。人間の一生も地球の歴史からすると蝉よりも短いほんの一瞬なんだろうな、などと栄枯盛衰の理りを考えてしまう夏らしい1日でした。世間様はあらかた明日からお盆休みに入られるのでしょうか、私といえばこの3連休はDIYワークショップの講師として超久しぶりに建築現場にどっぷりと浸かり、汗をかく予定です。今回は杉のフローリング貼りの講習を行う予定で、参加者には今時あまり見かけない、フロアーネイルという手打ちの釘での施工を行ってもらう予定です。

 

フローリング貼りのDIY講座

DIY流行りの昨今、自分たちで結構本格的かつ大掛かりにリフォームやリノベーション工事をやりたい!という人が非常に増えているようです。リフォームの鉄板ネタ、床をリニューアルすれば部屋は見違えるように変わりますが、フローリングを貼るのは素人的にはなかなかハードルが高いもの。自分たちでやって見たいけど、そこはプロに任せて、DIYでやるのは壁の漆喰塗りや塗装、壁紙の張り替えなど、内装工事程度に落ち着くのはよくあることです。大工仕事の部類に入るからなのかもですが、床貼り施工のハードルが高い理由の一つに、道具の問題があります。イマドキはコンプレッサーを回してフロアータッカーと言われるエアー工具で又釘をフローリングのサネに向かって打つのがすっかり主流になっており、こんなマニアックな道具を揃える訳には行かないと諦めることが多いようです。しかし、10数年昔は釘を玄能で延々と打ち続けておりましたので、決してエア工具が無ければ施工出来ない訳ではありません。フローリングが貼れるコツを掴めば、天井や壁に貼る羽目板などの木製化粧板の施工も出来るようになる訳で、貴重なDIYerになれると思うのです。(笑)

 

手技ではなく道具と考え方

傍目に見ていたら難しそうに見えることもやってみたら意外と簡単!というのはよくあることです。思い返せば25年前、全く関係ない運送業から建築の世界に飛び込んで、「ぼんさん」と言われる見習いから大工になる修行を始めた頃はやることなすこと全てが初めてで、先輩や親方の仕事を見ながら「こんな難しそうなこと出来るかなー」と常に不安に思いながら初めてだらけのチャレンジを積み重ねてきたような覚えがあります。一応、大工として職人の端くれだったので、作業をなんども繰り返して身体に技術を覚えさせたところも、もちろんありますが、当時、私が感じていたのは身体ではなく頭でしっかりと理解をすることで技術の習得は8割方出来ているのではないかということです。和室の造作等、鋸の切り口がそのまま化粧になり、鑿で刻んだ穴に髪の毛一本の隙間が出来てもならないような熟練の手技が必要な作業はともかく、洋室の造作などは便利な道具がたくさんあり、道具の使い方さえ理解できればそんなに難しい仕事はなかったりするのが今の工事現場の現状です。DIYイベントに参加される方々にはそんな道具の使い方と「考え方」をお伝えできればと考えています。

ちなみに、来週末には夏休みの木工教室も控えており、来月もひょうご木づかい王国学校でDIYのイベントを開催する予定をしておりまして、元職人として木工技術を教えることが立て続け。世間とは逆の意味ですっかりDIYづいております。(笑)

フロア釘の打ち方
出典:自分リフォームで新生活!業販価格で買えるDIYショップ – RESTA

 

プラットフォームと無価値化

昨日のベンチマーキング塾での林哲平さんの講演の中でも、プラットフォームビジネスが世界を席巻しているということが話題に上りました。Amazon、Google、Airbnb、Uberと世界の経済を根本から変えてしまう企業はインターネットにポータルを持つだけで何のものづくりをしなくても巨額の売り上げ利益をあげ続けています。そして、そのポータルに人が集まる理由に「無価値化」があります。Googleはあらゆる情報を探すことが出来る検索が無料を提供したのからはじまって、地図、カーナナビゲーションシステム、航空写真、交通機関の乗り換え案内とそれまで課金されて、商売として成り立っていたサービスをことごとく無料にし、無価値化を行ってきました。無価値化はプラットフォームを成り立たす最強のツールなのです。

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工事業の無価値化、50%

そんな時代の流れを鑑みて、私たちはこれからどうすれば良いのかを考える時、自分たちが行なっている仕事が無価値にならないかを考えねばなりません。アメリカNO1のタクシー会社がUberによって駆逐されてしまったように、他者による無価値化は自社の破綻を意味します。あらゆる情報がインターネットで検索され公開されている今、これまで一般のユーザーが入手困難だった建築資材や設備機器商品などもふつーに販売されていますし、値段も公開されています。その中には私たちが商社から仕入れる価格よりも安く提供されているものも少なくなく、施主支給という名前でお客様が購入された商品を取り付けて施工することも今や珍しくも何ともありません。商品を仕入れて取り付ける工事業が既に半分無価値化してしまっていると行っても過言ではありません。

 

 

自社のサービスを無価値化する。

建築を行う中で商品を仕入れて取り付けるには商品の的確な選択が出来るような知識が必要です。そこに価値があったからこそ、工務店が機器の注文の窓口をしていたのですが、IT革命はその部分については完全に無価値化にしてしまいました。次は取り付け工事を含む商品ではなく作業全般についても無価値化が進んでもおかしくありません。その流れの一つがDIYであるのは間違いなく、私の明日からのワークショップは自分自身で自社のサービスを無価値化にしてしまう取り組みです。(苦笑)

自分で自分の首を絞めているようにも見えますが、私はそんな風には思っておりません。頑なにDIYを否定して工事はプロが行い、適正な金額を受け取るべきとの姿勢を崩さない工務店はこれからの時代、ユーザーにそっぽを向かれるでしょうし、逆に無価値化を自ら進める私たちの取り組みにDIY志向の強い人たちが集まって、どうしてもプロに任せなければならない仕事のみになりますが、設計や工事の依頼がたくさん集まるようになる可能性もあると思うのです。私たちはより専門性を高めて、プロならではの仕事が出来るように切磋琢磨しつつ、DIYをしてみたい!というユーザーさんの支援をし続ける取り組みを進めて行きたいと思います。

それにしても、大変な時代になったものです。。

 

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