効率の危険性と効果性の本質。

平成30年2月16日曇り

鹿児島→大阪へ

昨日の鹿児島での第九期職人起業の開講後の懇親会は相変わらず大いに盛り上がり、その余韻をを若干引きずりながら霧島温泉のホテルで朝を迎えました。2日間連続のスピーカーは結構神経を消耗するもので、エネルギー切れを感じてしまいましたが、朝から展望風呂とサウナを満喫、すっきりさっぱりとリフレッシュして神戸に帰ってきました。
帰神後はそのまま大阪へ、高断熱高気密の住宅施工のマニアックな勉強会の団体である新住協の研修会に参加です。今回はいつもの施工、デザイン、収まりの話ではなくコストマネジメントについての勉強会。いつまでたっても勉強し続けなければならないことがたくさんあるものです。

WIN-WINではなく三方良し

今日の研修会でも、これからの住宅需要の減少についての話が随所にあり、危機感を皆さんと共有することになりましたが、縮小し続ける市場の中でいかに生き残っていくか?という大命題に向き合うにあたり、自社が提供する価値と顧客が負担する費用のバランスについて改めて考えさせられる機会になりました。お客様にとって最高の体験を最低のコストで実現するという私たちに課せられた重要なタスクに根気よく取り組んでいきたいと思います。とはいえ、私達が目指すのは三方良しの世界であり、外部環境に振り回されない持続可能なビジネスモデルの構築です。顧客と自社のWIN-WINの関係を築くだけではなく、ものづくりに関わってくれるステークホルダー、そして地域の企業とともに最善の道を探っていきたいと思います。

効率ではなく効果性

(いつものことですが、)研修会後の懇親会でも熱い議論が展開されました。若手経営者が自分の信じる理念や信条を元に熱く語るのを聴くのは嫌いではありませんし、楽しく聞いておりましたが、今日の勉強会のテーマがコストマネジメントということもあり、いかに効率を上げるか?ということについて熱心に話されているのを聞いていて若干の違和感を覚えました。気になることは口にせずにはおられないタイプの私としては、そこはちょっと待て、と口火を切ってしまいました。(笑)
それは、自分自身でも常日頃心に留めていることで、私達が求めるべきは効率ではなく効果性でありべきというスティーブン・R・コヴィー博士の言葉です。効率化だけを求めると、(無駄だと思う)コストを全てカットして、余分な脂肪を削ぎ落とした筋肉質の経営体質を目指してしまいます。極端な言い方をすると、今だけ良ければいい思考に陥ってしまうと思うのです。

無用の用

無用の用という格言がありますが、目先なんの利益も生まないことも将来を俯瞰した時には必要な事が少なからずあります。例えば、坊主と言われる若手職人の育成、学校を卒業してきた若者を雇用しても売り上げ、利益には一切寄与することはありません。単年の収支でみると無駄以外の何物でもなく、できることなら自社の損益と関係ないところで誰かが若い職人を躾け、技術を教え込んで使える様にしてもらって一人前に成長してから、雇い入れるのが効率的です。しかし、世の中がそんな志向になってしまうと、誰も若い職人を育てることなどしなくなるわけで、実際、そんな考え方が蔓延した事が原因で現在の建築業界の大きな問題となっている職人不足を引き起こしたと思っています。

職人の正規雇用は人材の在庫でありリスク

ずいぶん昔の話になりますが、取引のあった銀行に運転資金の融資を申し込みにいきました。当時、持参した決算書はギリギリ赤字にはなっていないにしても、決していい業績とはいえませんでした。その時の銀行の担当者に言われたのは「社長、売り上げに対して従業員の数が多いのは職人を社員として正規雇用しているからですよね、これって人材の在庫ですよね。今時の工務店でこんな効率の悪い経営をしている会社はありませんよ、皆さん工事があった時だけ外注の職人に発注する様にしてますよ、この部分の改善をされたら決算書は一気に良くなるでしょ」との言葉でした。
私は「ものづくりの会社がものづくりの担い手を守り、育てんとどうやって未来を作るんや!目先の利益だけ取りに行んじゃ、俺らの未来はないわ!」と啖呵を切り、席を蹴って帰ったのでした。
効率重視の考え方に寄りすぎると、この銀行担当者の様な志向になりますし、悲しいかな当時の工務店の大半がそんな考え方に陥っていたと思います。(今もですが、、)

地域工務店の目指すべき姿。

我々が目指すべきは、目先の小金を稼ぐことではなく、住宅という住まい手の命がかかっていると言っても過言ではないインフラを守り、サポート出来る循環型で持続性のあるビジネスモデルを作り上げる事であり、足元の収支も大事ですが、それと同時にやっぱり未来を俯瞰するべきで、決して効率だけに捉われるべきではなく、もっと大きな視点で将来にもつながる効果性を考えるべきだと思うのです。コストカットを繰り返すだけではなく人間関係や理念の共有、経営者から末端の実務者までが同じ目的意識を持って目の前の顧客に最大の価値、素晴らしい経験を提供できる様にすべきだと思うのです。
ま、えー歳して青っちょろい理想論を振り回していると思われるかも知れませんが、在り方を正そうという理想を持たずしては事業自体の意味がなくなると思います。「道徳の無い経済は罪であり、経済のない道徳は単なる寝言」という二宮尊徳翁の言葉を胸に、在り方を正しながらビジネスモデルの完成形を地道にコツコツ目指したいと思います。

今日のアタリマエ

  • 効率を求めすぎると本質を見失う
  • 削ぎ落とす効率と価値を最大化する効果は真逆
  • 目指すべきは目先の利益ではなく、持続性のあるビジネスモデル
  • 道徳のない経済は罪、経済のない道徳は寝言
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