四方蟻と森の民。#若手大工育成P

令和2年8月6日 晴れ

大工育成P day2

九州、久留米に来ています。一般社団法人職人起業塾の研修を博多で繰り返し行う際に、現地事務局を快く引き受けて下さった、福岡の有力住宅建材流通卸の株式会社徳永産業さんとのご縁で、同社が事務局を務められているJBNの下部団体、一般社団法人ひとにやさしい家を考える会が主催する若手大工育成プロジェクトの研修講師を務める事になり、先週に引き続き、久留米に通い詰めてます。全国工務店協会JBNが、加速し続ける職人不足、特に若手大工が圧倒的に少ないのに危機感を持ち、国交相からの補助金を使って全国各地で一斉に若手大工、大工見習い、現場監督向けに研修を行う事業をスタートしたのに呼応して、九州でも今回の研修が始まりました。

職人は道具じゃない。

これまでずっと、自分で組み立てたカリキュラムで研修事業を行ってきた私としては、JBNが組み立てた初歩技術中心のカリキュラムに沿って研修を行うのは、正直、違和感が否めません。それは、JBNの構成員である工務店経営者の立場で組み立てられたカリキュラムで、若い大工にとりあえず、少し使えるようになって、現場での戦力になってもらいたいという想いが強く伝わってくるからで、常日頃から「職人は道具じゃない」と言い続けている私にとっては薄っぺらい技術だけ身につけさせて、、目先使えるように、若しくは先輩大工の邪魔にならない程度に教育するなんて、職人不足の根本的な問題解決に対して何の意味もなく、国費、国民の血税を使うような事業ではないと思うからです。

稼げる職人になれ!

そんな想いもあり、講師のオファーを頂いた際に正直少し躊躇したのですが、職人起業塾で行っている研修の理念を理解して下さっている徳永産業からの依頼だということで、研修内容のある程度の変更を許容してもらえると考え直し、お受けすることにしました。そんな経緯もあり、一応、決められたカリキュラムに沿って講座を進めてはおりますが、かなりオリジナル色が強い内容になっています。(笑) とにかく、若手の受講者達に私が繰り返し言い続けているのは、次の世代の若者がこぞって職人になりたい!と思うようになり、圧倒的な職人不足が解消の方向に向かうには、君たちが、若者に憧れられるようなカッコイイ働き方、満足と安心がたっぷりある豊かな暮らしをしてくれるようにならねばならん、ということで、技術と知識は当然のこと、人間力とコミュニケーション能力を高め、現場で顧客からの信頼を勝ち取れるようになり、特命受注が取れる人気の職人いなってがっちり稼げるようになってもらいたいと言い続けています。

テーマは四方継。

そんなこんなで、前回の社会人としての心得はマーケティング理論の基本的な部分を超わかりやすい言葉に置き換えて、熱く語りましたし、今日もその復習に随分時間を費やしました。カリキュラムの時間配分は大幅に狂いましたが、大事なことは3度言え、と昔から言われていますし、丁寧に押さえておくべき部分だと判断しました。今日のテーマは道具の使い方と手入れ、木と建材の使い方と木材加工の実技実習でしたが、前回の振り返りに時間をたっぷり取ったせいで全体的にオシオシになってしまいました。一番時間を割いた実技実習では、丸鋸の定規の使い方、差し金の基本的な使い方、そして、簡単な墨付けと手加工の題材に四方蟻の仕口を作ってもらいました。意外なくらい皆が楽しそうに没頭している姿はやっぱり、モノづくりって誰もの心を奪う力がある良いものなのだと再確認させられました。

日本人は森の民。

座学の中心は、木の使い方というテーマに対して、日本人は古来から(キングダムの)楊端和の山の民ならぬ「森の民」であり、神話の時代、日本書紀にスサノオノミコトが「スギとクスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使いなさい。そのためには、たくさんの木の種をみんなで蒔こう」と言ったと書かれている程で、世界第3位の森林占有率の高さを誇り、世界の植林面積の10%が日本に存在しています。戦後、焼け野原になった日本は復興の為に積極的に植林を行い、今、その時に植えられた杉やヒノキが大量に伐採の時期を迎えています。しかし、安い外国産材に押されて、国産木材の消費は進まず、毎年供給過多の状態が続き、森林資源は増え続けています。最近は住宅だけでなく、学校や自治体の施設などでも木造化の動きがありますが、まだまだ供給量に追いついていません。

大工は正義の使者論。

今日の講座で、私は「木の建築こそ正義であり、大工は正義の使者である」と、少し、極端な言い方になりましたが、若い大工たちに誇りを持って、仕事に向き合え!と言い切りました、(笑)
その根拠は温室効果ガスの削減、建築をLCCMの観点で建築を考えれば圧倒的に木造がCO2の排出が少なく、環境に対する負荷が低いこと、国民的疾患になってしまった花粉症の元である成木になった杉、ヒノキを伐採することで花粉の飛散量を抑えることにつながること、一度、人間が手を入れた山を安全に保つには間伐、主伐、植林のサイクルを維持すべき事を挙げました。木を使った建築を行うことは、環境にも人にもメリットをもたらす正しい選択であり、それを推し進める私たちには正義があるのです。

木を知り、木を活かす。

最後は時間が押してしまい、少し駆け足になってしまいましたが、木を知り、材を選択し、適材適所に使う事で建物の寿命も延ばすことが出来るし、現在の建築材の主流になっているKD材(人工乾燥材)ではなく、AD材(自然乾燥材)やグリーン材を効果的に使う考え方、手法を伝えました。どれも基礎的な事ばかりで、実務にそのまま活かせるかというと疑問は残りますが、木に対する考え方、大工の使命についての根本的な考え方くらいは伝えられたように思います。私の少しオーバーな講義を聴いて、若者たちが使命感に燃え、誇りを持って仕事に向き合うようになってくれたらこんなに嬉しいことはありません。そして、この若手大工育成プロジェクトはまだ始まったばかり。先週、今週といいスタートを見れたと思うのでこの先が楽しみでなりません。これから半年間かけて、皆に熱い志を持ってもらえるように闘魂注入して行きたいと思います。(笑)


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コロナ禍の下、大きく世界が変わってしまった今、生き残るには、マス・マーケットに広く浅くアプローチするセールススキルではなく、狭く、深く質の高い顧客との関係を築くマーケティング思考です。理論と想いを仕組みに転換し、社内に落とし込んで運用できる様にリーダー向けに少人数での研修を開催する事にしました。経営者、経営幹部、リーダー候補の方に一緒にご参加頂き、マーケティング思考のマネジメントを社内に根付かせて頂きたいと思います。
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