火を熾したければ、濡れ灰を入れる。

1月24日 晴天

晴天
晴天

今日もいい天気になりました。

三寒四温の温に向いたか、近ごろになく、小春日和になりそうな、朝でもあった。

と、あったのは川端康成の舞姫でしたっけ。

 

とにかく暖かな良い一日になりました。

チャックとニャロ
チャックとニャロ

一昨日の理念と経営を考える勉強会でアメリカの心理学者のダグラス・マクレガーが提唱したX理論、Y理論について、という話題が出ました。

その理論を踏まえて、経営者として人間観をどのように変革させますか?と言う設問でした。

思いっきり簡単にまとめると、

X理論とは、性悪説。人は怠け者で、負荷をかけないと自発的には働かない。

Y理論とは、性善説、人は誰も成長志向を持っていて、能力を引き出せば大きな可能性が開く。

私が思ったのは、そんなことをどちらが正しいか、どちらかを選択すること自体がナンセンスってこと。

人の心は複雑で、論理的にスパッと簡単に割り切れるものではありません。

そして、この世はすべからず表裏一体であり、表裏、多面性を統合して考えることが出来ないと説明がつかないことがいくらでもあります。

西欧式価値観はロジカルシンキングを是とする傾向がありますが、元来日本人の価値観とは曖昧なものに対して否定しない、受け入れる文化なのだと思っています。

 

先日、初釜といわれる年明け初めての茶の湯のお稽古に行ってきました。

先生にずいぶんと丁寧に茶事のご用意を頂き、炭点前という炉に炭をくべて、火が熾り湯が沸く時間に合わせて懐石料理を頂き、最後にお濃茶を頂く頃に程よく湯が沸いて美味しい茶の湯が頂ける。という至って贅沢な時間を過ごさせて頂きました。

茶事の初めに種火が入っている炉に炭をくべるのですが、その際濡れ灰という湿った灰を炭の周りに撒く作法があります。

種火の周りに湿った灰を入れるとそれが暖まって発生する水蒸気の気流で火がおこりやすくなるという事なのですが、乾いて燃えやすそうなものだけを入れれば良いというものではない、と言うのは非常に深い示唆に富んでいると思いました。

これこそが陰陽取り混ぜるとこで大きな効果を生み出す日本の伝統的な文化であり、価値観だと思うのです。

そして、人の心も、関係性も同じ様に両面を認め、それぞれの良さを引き出すことで新たな価値を作り出すことが出来るのではないかと思います。

 

 

また、すみれ事務所のトイレには、『悪人正機』という札が貼ってあります。

親鸞上人が引用された言葉として有名ですが、そもそも一点の曇りも無い完全なる善人がこの世にいるのか、おらぬならば、悪人こそ最期には極楽浄土にいくべきである。と大きな寛容性を根本的な価値観として人との関わり合いを説いています。

私を含め、建築業界の工事現場で職人として働く人の殆どは高学歴ではありません。

子供の頃、学校制度になじめないだけで社会からドロップアウトした、といわれる人も少なくありません。

アメリカではブルーカラーという名の差別用語がそれを階級として認知させていますね。

善人、悪人という分け方とは少し違いますが、それらの人が決して今の学歴社会から高い評価を受けることはない、と言うのは頑然たる事実です。

しかし、『悪人正機』という考えかた、価値観、在り方に照らして考えると、そんな人こそ、安心して暮らせる社会になるべきだと思い、事務所に札を張って、自らを戒めています。

美しく、高性能な建築物を作り上げるには、塗れ灰が必要だから。

 

そんな想いで、毎月20名程の職人や異業種の方達と一緒に勉強会を開いています。

完全無料の学びの場ですのでご興味がある方はお気軽にご連絡を頂ければ幸いです。

詳しくはこちら。

https://www.facebook.com/sumire430

もしくはこちら、

http://sumireco.co.jp/craftsman-seminar.php

 

建築業界にすこしでも塗れ灰を撒ければいいな、と思います。

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