3月6日 快晴
今日は朝から現場へ。
天気予報に従って、雨で延期を2回も余儀なくされた新築工事の上棟が中国に出張に行っている間に行なわれていたので、早速現場に見に行ってきました。
立ち上がった建物の中に入ると、思っていたとおり、と言うよりも思っていた以上に気持の良い眺望がリビングダイニングから開けており、図面で見るのとはまた違う印象の空間に暫し見入ってしまいました。
上棟に立会えなかったのは残念ですが、現場を守ってくれるスタッフがキッチリと進めてくれて、一日で棟上げ、屋根仕舞だけではなく、外壁の合板張りまで進めてくれていたようで、本日のサッシの搬入に合わせて外部の仕舞も目処がつく勢いでした。
早ければいいというものでは有りませんが、早いのは仕事の段取りがいいという事でもあり、得てして仕上がりも良くなったりします。
(手前味噌ながら、)頼もしい限りです。(笑)
と、言いつつも現場の中に入ると、すぐに職人の仕事にケチを付けてしまうのは、長年染み付いた癖みたいなもので、今日もグチグチと応援に来てくれている若衆に小言や指摘を言ってやりました。(笑)
さて、お題目は久々に、小説のご紹介。
ビジネス本は読むのをやめた、と言いながらも、(ミーハーな性格が禍して、)話題に上る本はつい取り寄せてしまうので最近、また小説から遠のいておりましたが、これではいかん、と積み上がった専門書を尻目に読みたかった歴史小説に取り掛かりました。
『火天の城』
たしか、アマゾンで30円くらいで買ったと思うのですが、素晴らしい本でした。
乱暴且つ超簡単に言ってしまうと日本史上唯一無二の天才にして英雄の(←私見です。笑)織田信長に仕えた棟梁の物語で、日本で初めての高層天守(天主)を備えた安土城築城と亡滅の物語です。
あまり文献も残っていない安土城の築城を良くこんなに細かな描写で書上げることが出来たものだと関心すると共に、現代の様に道具が無い時代に人力で壮麗な建築を作り上げて来た先達の苦労と技術の凄まじさを垣間みた気がしました。
とにかく、久しぶりにのめり込む様に読めた一冊でした。(以下、ネタバレ御免なので、読もうかな、と思っている人は飛ばしてください。笑)
圧巻だったのは、天主を支える大通し柱を調達して来るくだり。
日本の歴史を通じて初めてとなる七層の天主を支える大通し柱の大きさは一尺五寸角、長さ八間の柱。というと、メートル法に直すと、太さ45.5cm角、長さ14m56cmの桧の正目の材となります。伊勢神宮の遷宮用に御神木として守られているものを伐り出して木曽の沢からを切り出して運んでくるのですが、丸太にすると末口が二尺三寸、元口になると五尺!なんと口径1m515cmの怪物のような御神木です。
想像しただけでもぞっとする、小説と分かって読んでいながらも鳥肌が立つような物語になっており、史実に忠実に基づいているとは思いませんが、実際にこの物語に近しいことを行なったのだと思うこともあり、手に汗を握りながらストーリーの中に入り込んでしまいました。
その他にも、全国から集めたといっても過言でないくらいの多くの番匠(大工)をまとめる棟梁、岡部又右衛門が口にした心に残る言葉やエピソードがいくつも有るのですが、最も唸らされたのは、信長の一言で土壁に石を混ぜ頑強にする変更の結果、天主の外壁が沈むという大変な事件の対処、「木に聞く、」と、木曽から運んで来た大通し柱に耳をあて、瓦が載り、土壁が塗られてもの凄い荷重がかかる天主を支える大通し柱の根元を切り飛ばす場面。
職人魂が震えました。(笑)
人工の計算をすると天主を立ち上げ、造作をして竣工するには大工だけで一三万七千七百人、他の職方を合わせるとその何倍にもなる人々が集まり、それを三年で竣工させたというのは想像出来ないくらい凄まじい工事だったのだと、日本で初めての高層建築の事業に想いを馳せつつ、規模も質も全く違いますが、出来るのか?、間に合うのか?とドキドキしながらクライアントの依頼を請け負って来た今までの自分と重ねてみたりして、単なる歴史小説とはひと味も二味も違う強く印象に残る1冊となりました。
職人の皆さん、Amazonで30円ほどで買えるこの感動、是非味わってください。(笑)