残心のココロ。

9月8日 雨

今日は二十四節気で言うところの白露。

wikipediaから引用すると、白露の期間の七十二候は以下のとおりです。

初候

草露白(そうろ しろし) : 草に降りたが白く光る(日本)

鴻雁来(こうがん きたる) : が飛来し始める(中国)

次候

鶺鴒鳴(せきれい なく) : 鶺鴒が鳴き始める(日本)

玄鳥帰(げんちょう かえる) : が南へ帰って行く(中国)

末候

玄鳥去(げんちょう さる) : 燕が南へ帰って行く(日本)

羣鳥養羞(ぐんちょう しゅうを やしなう) : 多くの鳥が食べ物を蓄える(中国)

初候の今日は、露が降りるどころか、昼からは完全に本降り。よく雨の降る一日となりました。

関西技術協力センター理事長挨拶
関西技術協力センター理事長挨拶

 

 

入国式に向かう道すがらの会話

その雨の中、中国からの実習生、張くんを帯同して大阪へ、

今月で3年間の実習期間を終えて帰国する張君、王くんと入れ替わりに配属される3期生の2人の実習生の入国式に向かいました。

行く道すがら、もうすぐ帰国するにあたっての心境を張君に聞いてみたところ、

「家族と会える、一緒に暮らせるのがやっぱり嬉しいです。」

とのこと。

「だよねー」

と私。

小さな子供を含む家族を祖国に残して外国に実習生として出てきた事は、彼の人生にとって、非常に大きな決断であり、出来事だったと思います。

そして、それが良きものになったか、無駄な時間に終わったかは、我々受け入れ企業にも大きな責任があります。

張くんが続いて言ってくれたのは、

「とは言え残心はあります」

変わった言い回し使うよなー、なんて思いつつ、

「心残りのこと?」

と聞き返すとそうですとのこと。

「日本での経験がこれからの人生にとって大きな糧になった。」とも。

そんな風に行って頂くと、本当に嬉しいモノです。

「それにしても、なかなか使わん日本語使うよねー」

と私。

「そうですか?武道でも普通に使いますよね」

と彼。

武道をやっている人しか使わないような日本語を、普段に使うのを聞いてさすが日本語検定1級合格者!と若干驚きつつ、、残心という言葉のそもそもの意味合いを聞いてみました。

「例えば弓道で矢を放った後に的を射抜くまで集中していることですよね」

と、秀逸な答えが返ってきましたが、せっかくなので私なりの意味合いというか、解釈をわかりやすく説明してみました。

張くんスピーチ
張くんスピーチ

 

 

残心とは、

ざんしん【残心】

① 不満や未練が残ること。未練。

② 武道における心構え。一つの動作が終わってもなお緊張を解かないこと。剣道では打ち込んだあとの相手の反撃に備える心の構え,弓道では矢を射たあとその到達点を見極める心の構えをいう。

出典:大辞林

残心と言う言葉には2つの意味があり、一つの言葉である以上、それぞれはバラバラのものでは無く、包括した意味というか、考え方が在ると言うのが私の持論です。

この2つの意味合いを私なりにわかりやすくまとめて説明してみたのは、

「武道における修練の心構えとして、一つの所作、型を行なったあとも、気を抜かず、集中力を持続しておく、すぐに次の動作に切り替える事が出来るようにする、と言った事は非常に重要だが、そもそも、心を残すとは未練という意味があり、それは人を殺す技能を磨く武道を修練するにあたって、実戦の際に立場上、やむなく人を殺めた時に、その相手の命を奪った事に心を残す意味合いが混在している。

昔の日本において、武士はいわば職業軍人。と言えども決して誰しも人を殺めたい訳ではなく、時代が人を本来あるべきでない立場に追いやったことで、日々武道という人を殺す為の修練を積み重ねなくてはならなかった訳で、本来、人として在るべき姿、人の道から外れる事に対して心を残す事が必要だと言うことです。

だから、残心という言葉には、未練と言う意味と武術の心構えが混在しているのだと。
そして、本来在るべき姿を外れた自分を戒める言葉、『在り方』を見つめなおす姿勢として、心を残すという言い方をするんだよ。」

要は、残心とは、在り方への回帰の姿勢のこと。

そんな、私の説明を聞いて、張くんは、「深いですねー」と苦笑い。

 

自分なりの根本を持つ

実は、この解釈はあくまで私の私見であり、どの辞書を引いて見てもこんな風に明確に書いてあるものはありません。

私がこの話と共に張くんに伝えたのは、自分が世の中、様々に起こる出来事に対して思い、考える為の根本を持つべきであり、私の哲学、信念、価値観に照らすと『残心』という言葉の解釈はこの様になる、という事です。

技術実習生入国式
技術実習生入国式

一見、この世の中は矛盾に満ちており、複雑怪奇、問題が山積みの様に感じてしまいがち。

しかし、表面的な矛盾や問題の奥に隠されている根本に目を向けて、根気よく突き詰めていく思考を重ね、取り組みを続ける事で、次第に根本的な解決方法を身につける事が出来ると思っています。

彼ら実習生が3年間、日本で建築技術や日本語を学び、大きく成長した事はこれからの彼らの人生にとって大きな糧となると思います。

しかし、私が彼らに本当に学び取って帰国してもらいたいのは、そんなことよりも、社内勉強会で繰り返し、口を酸っぱくして言い続けている、周りの人々と共に幸せになりながら人生をマネジメントしていく力。

それは『在り方』を見つめ直し、正すことから全てが始まると。

 

三方よしへの願い

王君、張くんの帰国まであと3週間余りとなった事もあり、絶好の機会とばかり、大阪までの往復の道すがら、熱っぽく『在り方』についての私の概念を説き続けました。

きっと、よく理解してくれたと思いますし、帰国してからも記憶の片隅においといてくれると思います。

彼らの中国に帰ってからの健勝と活躍、歩む道程に幸多き事を心から祈念すると同時に、新しく日本にやって来た実習生達もこの度入れ替わりに帰国する二人の様に多くの学びを得て大きく成長してくれる事を強く願います。

 

ま、その辺りは、(私もですが、)すみれのメンバーの温かなサポート次第の側面もあります。
皆さん、よろしくお願いしますよ!

張くん、今日はお疲れさんでした。改めての時間が持てて、私も嬉しかったです。
王君、出張ご苦労さん、入国式に連れて行けずにごめんよー。(^ ^;)

長かった様であっという間だった日本滞在も残り二週間、無事に楽しく過ごして下さいな。

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