今、工務店直面する労務リスクとマイナンバーの関係 @京阪神木造住宅協議会

11月26日 雨のち曇り

建築士の祭り?

雨が降りしきる朝、朝礼もソコソコに朝早くから事務所を飛び出しました。
向った先は神戸市役所。
年にに一度の建築士事務所の祭典?特定建築物定期検査報告書の提出です。今回もマンションのオーナー様にご依頼を頂き、検査と報告書の作成、そして今日の提出と設計事務所らしい業務に勤しみました。
市役所5階の特設会場?に言ってみると、壁一面に机を並べ、役所の建築課の担当官がずらーり。
お祭り気分?を盛り上げておられました。(笑)
それにしても、担当者によって指摘事項がバラバラなのはなんとかならんもんでしょうかね、、

梅田スカイビル
梅田スカイビル

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第26回京阪神木造住宅協議会研修会

昼からは大阪、梅田に。
最近急増している中国からの観光客の大阪で(意外に)人気ナンバーワンスポットらしい梅田スカイビルへ、今日は研修会の講師役です。

私も理事の末席に名を連ねさせて頂いている京阪神木造住宅協議会で工務店の従業員を対象とした研修会、『職人起業塾』の講師を共に勤めて頂く、社労士の川西先生と共に、事業所の環境整備をメインテーマに、リスクヘッジ、そして前向きに事業を展開出来る様に人材育成について研修会を行ないました。
(ここには書けない様な、笑)全国で起こったリアルな事例がポンポンと飛び出し、皆さん不安感を煽られつつも、今の時点で気付き、行動に移すことで安定経営の道を進めることが出来ることに気付かれたようで、終始真剣なまなざしで聞いておられました。

私の話は何故今、労務管理、労働条件の見直しをしっかりしなければならないか、そして何故従業員の教育、スキルアップに取り組まなければならないか、という川西先生の講演内容の前座として、その『何故?』と言う部分だけに焦点を合わせてお話をさせていただきました。

 

工務店が抱える労務リスク

短い時間の話しでしたが、「なるほどね、」と共感頂いた方も多かったので、(ついでに?)ここでも簡単に内容を紹介しておきたいと思います。(至ってマニアックな内容となりますが、苦笑)
まずは、工務店経営者さんが薄々感じているが、切迫したリスクとは感じておらず、ついつい対応を先延ばしにしてしまいがちなリスクについて整理をしてみました。

第26回京阪神木造住宅協議会
第26回京阪神木造住宅協議会

具体的になんのことかといいますと、先々月、すみれで労災事故が多発して参っているという話しです。工務のヒメー君が(眼鏡をしていたにもかかわらず)現場作業時に目にゴミが入ったらしく、数日経っても違和感が取れないから、と眼科に行きました。
眼科では目を洗浄してもらい、簡単に治療は終わり大事に至ることは無くてメデタシメデタシ、のはずですが、ここから事件は起きました。

治療を終えて精算に行くと、なんと!目に入っていた異物が鉄粉だったことで、仕事中に起こったのだから社会保険の適用は出来ません、労災を申請するか、全額負担をして下さい。と言われたとのことです。当然、労災の申請をする事になりました。

保険適用厳格化の影響

まあ、法例遵守の立場から言うとごもっともな話しではありますが、、実際は今までこの程度のことはナーナーというか、暗黙の了解というか、目くじら立てずに社会保険で処理してくれていたのが、今後はは罷りならん。とのこと。社会保険機構の財源不足は以前から声を大にして叫ばれていましたが、非常に厳しい厳格化の流れを身を以て体験させられることとなりました。

この事件を受けて、これって神戸だけの話しではないな、と思い調べてみると、やっぱり!近年労災事故は増加の傾向にありました。

建設業界が安全衛生の意識を高め、長年災害を失くすことに取り組み、減少を続けて来た現在、労働環境の悪化で労災事故が増加したとは考えにくく、これは保険適用の厳格化の流れが反映されたものだと思います。(あくまで私見です。)

第26回京阪神木造住宅協議会
第26回京阪神木造住宅協議会

 

労災認定も厳格化

そして、以前にも書いたかも知れませんが、労災を使うことについても大きな問題が表面かしています。宮大工が屋根から落ちて死去したのに、一切の労災がおりなかったと言うニュース。

第26回京阪神木造住宅協議会
第26回京阪神木造住宅協議会

(今までなーなーで使い続けて来ていた)社会保険、国民保険は仕事中の些細な怪我でも適用されなくなり、すぐに労災を申請しなくてはならない上に、雇用関係が明らかになっていない労働者については、労災は適用されず、しかも、個人事業主特別加入という職人への救済処置は、日当で働いている者に対しては請け負い=事業主とは認められない、労働者への適用は除外という厳しい判断が下されています。建築現場で人が死んでいるのに、一切の労災が認められないのには憤りを感じずにはいられませんが、法律の原則論に立ち返るとキッチリと遵守していない事業主が悪い、と結局は元請会社の使用者責任を問われてしまうのは致し方無い様な気もします、、

 

全てを明るみに出すマイナンバー制度

この流れを後押しするのが、只今絶賛配布中のマイナンバー制度です。
職人が工事現場で怪我をした際、病院や警察でマイナンバーの提示を求められると、雇用関係がどうなっているかは一目瞭然、元請の労災を使えるか、救済処置として設けられている個人的に加入している個人事業主特別加入の労災を適用出来るかが一瞬で明らかになります。
一人親方の職人、職人会社の代表者等は一切労災が使えない様になりますし、しかも上述の宮大工の例を鑑みると、請け負い契約を結んでいない、日当計算の常用と呼ばれる働き方では、その救済処置も適用されないことになります。

これは、非常にヤバいことに。。

ちなみに、労災保険適用の原則論ってこんな感じ、

第26回京阪神木造住宅協議会
第26回京阪神木造住宅協議会

建築現場で働く職人の仕事は、ずいぶんと安全に留意して事故が少なくなったとはいえ、やっぱり常に危険ととなり合わせです。しかも、車での通勤や移動中もモチロン就業中と言う事になれば、いつ何が起こるかも分かりません。もしも、現場で重大な事故が発生したら、事業の存続が出来ないような状況になる可能性があることを工務店の経営者は理解しておく必要があることを強い口調で訴えておきました。

まとめは、こんなこと。

第26回京阪神木造住宅協議会
第26回京阪神木造住宅協議会

ガチョウを育てる意識が全てのリスクを回避する。

これらの厄介な問題に対する対処としては損害保険に加入するとか、出入りしている職人、工事会社への保険の加入を徹底する、とかになるのですが、私としてはあくまで問題は対処ではなく、根本的な解決を目指すべきで、その結果、事故やトラブルの予防を叶え、誰も悲しんだり苦しんだりすることが無い様にすべきだと思います。
現場で働く職人達はモノづくりの担い手であり、工事が出来ないと工務店はいくら多くの契約を取って来たとしても一切売上げはあがりません。イソップの有名な寓話に出て来る金の卵を生むガチョウと金の卵の関係の様に、利益=金の卵に執着してガチョウ=利益を生み出す実業を疎かにすると、結局豊かになることは出来ません。

工務店経営者は現場でモノを生み出す、職人を守り育てる意識を持ち、それを事業のシクミに落とし込むことにしっかりと向き合えば、上述した会社をすっ飛ばしてしまう様なリスクを回避することが出来ると思います。

第26回京阪神木造住宅協議会
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そして、職人は今まで通り、図面で指示されたことだけが出来れば良いのではなく、モノづくり事業の最も重要な一端を担う者として『守られるべき大きな価値を持った人材』となるべきだという事も併せて進めなければ成り立たないという事も、(やっぱり)最後にお伝えしておきました。

簡単にまとめてみたブログセミナーはここまで、もっとコアな詳しい話しが聞きたいと思われる工務店関係者の方は是非京阪神木造住宅協議会にご参加下さい!(笑)

こちら→京阪神木造住宅協議会

 

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