令和2年10月24日 曇りのち晴れ
若手大工育成P day8
昨日の筑後での若手大工育成プロジェクトは外装周りの実習研修で、小さな実習棟の軒天井と外壁サイディングを仕上げるところまで進みました。実は前回の講習からカリキュラムを修正して、半日分を前倒ししていたので、予定通りに実習を進められたのは私としては上出来で、若手大工のリーダー格の受講生によく頑張ったと労いの言葉をかけました。この実習棟は講習の最後に作った建物を解体しなければならず、当初に私が預かった予定表では最終日に一日で解体工事を終わらせることになっており、講習を進めるうちにこれは無理だと気がついて、大幅にカリキュラムを書き直すことにしました。全12回、半年に渡って実際に若者だけで小さな建物を建てるこの研修も残すは後4回。受講生には楽しみながら体験を経験に転換して実務のパフォーマンスを大幅に向上してもらえるように指導していきたいと思います。
失敗は許されない→任せられない。
私達、建築工事を生業にする職人は、基本的に失敗は許されません。また、工事にかかる工数、日数がそのまま売り上げや利益に直結する事もあり経験則の薄い若手になかなか工事を任せきる事が出来ません。若手の職人を早く育てようと思うなら、出来るだけ自分で考えて責任を持って工事を行わせるべきなのですが、実際は、重要な部分は棟梁や先輩が行い、小割りにした単純作業のみを若衆にやらせるのが現実です。しかし、それではモノづくりの面白さを感じるのも半減しますし、全体の流れを掴んで、自分で考えなければいつまで経っても指示待ち作業員の殻を破れず仕事を覚える事はありません。昔の大工はそれでも、やる気がある、一人前になりたいのなら見て盗め。と言っていましたが、今時の若者にそんな育成方法が通用するとも思えません。コスト押し下げ、効率化重視のいめの現場は若手の職人を育てにくい環境にあると言っても過言ではありません。
2030年大工ピークアウト説
建築業界、時に現場実務者は全国的に若手の働き手が圧倒的に少なくなってしまっており、絶滅危惧種だと揶揄されています。このまま、これまで30年間の流れのまま推移すると10年後の2030年には大工は絶滅してもおかしくないくらいの減少傾向が続いています。今のうちに若手の職人を育成しなければこの業界に未来はないことは大まか殆どの建築業界の経営者は認識していると思いますが、とはいえ、これまで職人育成を行っていない会社がいきなり大工見習いを雇用してもどのように教育していいのか分からず、手を拱いていたり、思考停止に陥って未来を考えるのをやめてしまったりする事業所、経営者が少なくありません。そんな現状を打破する起爆剤にと考案されたのがこの度私が九州、筑後で受け持っている国交相の助成金を(ふんだんに)使ったJBNの若手大工育成プロジェクトです。
体験学習なんかいらない。
この事業は実際に小さな建物を建てて、若手実務者に木造新築工事の流れを実際の作業を通して体験してもらう事を目的として企画されているのですが、私としては折角の機会ですから、出来るだけ自分たちの頭で考え、普段指示されて作業を行うのを、指示する側になってアウトプットし、多くの失敗を積み重ねてもらいたいと思っています。そうすることによって、お客さん的な立場での「体験」ではなく、目標に届いた時に達成感を感じたり、失敗を反省したりして、自分達の「経験」として実務に活かせる血肉としてもらいたいと思っています。具体的には、毎回の講習で作業内容を小割りにして、はじめに私が理論と注意点を噛み砕いて説明します。それを踏まえて、4つのチームで話し合い、役割分担とタイムスケジュールを自分達で考え、決めて、発表してもらいます。たとえ、作業が遅れていても、予定していた時間になると作業の手を止めさせて、上手くいかなかった理由を考えさせますし、その逆もまた然り、これが「真剣味のない実習研修」を体験ではなく、経験に転化させると考えています。
工期絶対遵守が顧客満足の基本
ちなみに、今日は筑後の羽犬塚駅前のホテルをチェックアウトしてそのまま福岡空港から東京へと飛びました。今月の初旬に着工した南青山のアパレルメーカーのショールーム改装工事の完工チェックにオーナー様に立会い頂く予定だったからですが、私が九州から東京に飛ぶのは着工時から決めていた予定です。当然といえば当然ですが、工程通りに工事が終わり、オーナー様に「大満足です、感動しました。」との言葉を頂きました。それも、やっぱり工期が守られたから口にでる言葉な訳で、一つずつの工程を予定通りに終える積み重ねが如何に重要か、精密な工程を組めることの大きな価値を如実に表していると思います。そして、精密な工程を組めなければ、本来、精度の高い見積もりを作ることは出来ません。現場での経験を積み、細やかな計画を立ててその通りに実行する力こそが建築業の根本的な価値の根源だと現場叩き上げの私としては信じていますし、実際、現場経験値の高さが自分の大きな強みだと思っています。
若者が育つ環境を!
若い大工達には、出来るだけ早い段階でお客さん気分?の体験学習から抜け出して、自分で考え、責任を持つ経験学習に切り替えてもらいたいと思います。つむぎ建築舎ではキャリアプランに沿って、1年目から役割(木工教室などのイベントのサポートとかですが、)が振り分けられており、年数を追う毎に確実にその役割は広がり責任も重たくなるようにキャリア設計をされています。若手大工育成は、現場で技術を覚えさせるだけではなく、将来に渡る役割と責任を理解させた上で、技術以外の段取りや自分のやった仕事の検証、その重い責任を感じてもらい、仕事のやり甲斐と、自分が生み出す効果性や価値について強く認識してもらうべきだと思っています。自分達は圧倒的な人手不足に陥る建築業界の未来を背負って立つ人材だと、若手に誇りを持って働いてもらえるような環境を整えなければこの業界に未来はありません。
ちなみに、関西でも来年度は若手実務者向けの実習研修を開催する予定もありますし、その他にもキャリアプラン構築、人事制度改革、現場人材戦力化と職人育成に対するワンストップサービスを一般社団法人職人起業塾で行っております。直近もイベント盛りだくさんなのでぜひチェックしてみて下さい。↓↓↓↓↓↓↓
令和2年度 全国合同フォローアップ研修in神戸
〜ウイズコロナと最強のコミュニケーションツール〜
日時:2020年11月28日土曜日 PM2:00 PM〜8:00
場所:マーカススクエア神戸
主催者: 一般社団法人職人起業塾
【職人育成コミュニティーへ参加しませんか?】建築現場人材育成×インナーブランディング×マネジメント改革 総論説明会
日時:2020年10月29日木曜日 15:00〜18:00
場所:WeWork Sannomiya Plaza East (Isogamidori 7 chome 1-5, Chuo-ku, HyogoKobe-shi)
内容:【オンライン、オフライン併用無料イベント】
新型コロナの影響でセミナーを中止している間に一般社団法人職人起業塾では職人育成のサポート内容をより深く、より実践的に変容させてきました。
これまでの実務者向け実践研修以外に、若手職人を採用、育成するための人事制度(賃金、等級、評価)のフォーマットの提供やその運用サポート。また、新設したリーダー向けのマネジメント研修では経営者の役割を細分化してリーダーを筆頭に従業員に再配分することで中期事業計画のスピードを圧倒的に高めるグループワークショップを行っています。
今回はそれらの関係性、全体像の説明と計画的に助成金を活用することで、確実に事業所の組織改革を進める方法論についてご説明します。オンライン、オフライン併用の開催ですので、全国どこからでもご参加頂けます。参加表明頂くとオンラインの方にはzoomのURLを、リアル参加の方にはwe workへの招待メールをお送りします。今回は以前から職人起業塾にご参加頂いている方へのリリースも兼ねて無料開催としています。職人育成に取り組まれている方、これから取り組もうとされている方には大いに参考になると思います。是非ご参加下さい。
お申し込みはこちら→https://www.facebook.com/events/3452793428110911/
職人の地位向上がミッション「一般社団法人職人起業塾」のオフィシャルサイト
職人育成、現場マネジメント改革に関する研修、イベント等の情報が集約されています。
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