10年後、300件を2500社で奪い合う業種。生き残りに必要なのは?

平成30年7月28日 快晴

鹿児島から諫早に。

西郷どんの大きなポスターがどーんと貼られ、朝から観光客も多く盛り上がりを見せる鹿児島中央駅から新幹線に乗り込み、新鳥栖でいかつい感じの特急列車ツバメに乗り換えて、人生で初めて訪れる諫早へとやってきました。今朝、ホテルでいつもの筋トレをしながら朝のTVの情報番組を見ていたら、諫早湾の堤防の開門問題が同じ地域に住む漁業と農業の従事者の間で対立を生み出しているという難しく哀しい問題が取り上げられており、なんてタイムリーなんだろう、なんて思いながらツバメの車窓からの風景を眺めました。これまで全く縁がなかった土地に呼ばれ、訪れる事のご縁に感謝と共に、全くと言って知名度がない土地で私が行っている建築実務者向けにマーケティングの理論を紐解きながら建築実務にその理論を落とし込んで実践してもらう研修への理解を得られるのか?と期待と不安が入り混じった複雑な感情を抱えたまま降り立った諫早駅はギラギラの太陽が照りつけており、一気に吹き出す汗と一緒にテンションをあげました。

ご縁がご縁を呼び、志が人を集める。

今回、諫早でミニセミナーを行う事になったきっかけは、先月の九州でのオープンセミナーに参加頂いた、私と同じ大工上がりの工務店経営者である戎谷社長が、知り合いの工務店経営者に強く勧めてくれたのが発端で、島原と諫早に拠点を持つ相川工務店の相川社長に詳しい説明をしに上がる事になったのを受けて、熊本のファイヤー塾でご縁を頂き、「住宅産業を地場産業に取り戻す」のを夢だと熱く語っておられて、同じ志だ!と大いに意気投合した株式会社クロダの山内氏にお声がけしたところ、今のままではヤバイ!と気づかれているリスク意識の高い若手経営者のグループのメンバーさんを伴って集まってくださいました。奇しくも、鹿児島での職人起業塾の研修を全面的にバックアップして下さっているマイライフオオニワ社の大庭社長とクロダ社の大平社長は旧知の仲だったとのことで、大庭社長から「非常にいい取り組みなので研修開催に是非力を貸してやってくれ」とお声がけも頂いていたようです。多くの方の応援を頂いて生きているのだと、改めて実感、本当にいくら御礼を言っても言い切れない程、ありがたい環境に生かされています。

300件を2500社で奪い合う住宅業界。

諫早でのセミナーは要点自体は今年の初めから繰り返し開催しているオープンセミナーで語っているいつもの内容ではありましたが、今回はプロジェクターを使わず、紙面に印刷したレジュメのみで行うという、いつもと少し毛色が違う、私の熱い語り一辺倒のセミナーとなりました。激動する世界の動向や建築業界を取り巻く環境などの背景の説明はあまり丁寧にできませんでしたが、その部分に関しては皆様よくご理解されており、世界に先立って超高齢化社会に突入し、人類がまだ経験したことがない人口減少社会に移行する日本において、特にその変化が顕著な地方都市の筆頭に長崎県がいることを強く認識され、今後どのように生き残りを賭けて行動するかを模索されておられているようでした。その若手経営者グループの中心となっている山内さんのfbの投稿を以下に引用させて頂きます。

2029年 、商工中金データによると長崎の住宅着工件数は年間866件(; ̄ェ ̄)そのうち持ち家比率は45%ですので住宅会社は年間400件で競争しなければなりません(; ̄ェ ̄)しかも、長崎は量産メーカー比率が高く25%(−_−;)もし、量産メーカーをそのままの比率にしていたら地場工務店は年間300棟での熾烈な新築争いに入らなければなりません_| ̄|○10年後の未来のお話(−_−;)お客様への最大のサービスは会社があり続ける事『永続性』です。

現状維持は急激な衰退への道。

因みに、長崎県の建設業許可業社数は29年度で4,897社あり、工務店と呼ばれる建築業社は大小合わせ約2500社くらいと言われています。現状のまま推移していくと、たった10年後には半分どころか10社に1社しか新築の受注はなくなり、殆どの建築会社は廃業を余儀なくされるのは、単なる予測ではなく人口推移を分析した既に確定した事実であり、「今」の仕事で一生懸命に稼ぐだけではふつうーの流れでマーケットの縮小と共に殆どの会社は消えて無くなってしまいます。また、大工をはじめとする建築職人の減少はこのマーケットの縮小よりも急ピッチで進むとされており、ものづくりの担い手の育成という、先行投資が必要な厄介な事業にも取り組まなければ、いくら受注を集めたとしても、着工、完工できずに売上をあげることが出来なくなってしまいます。10年先に向けて急激なマーケットの縮小がやってくるのに、10年後に向けて先行投資を行う気になれないのは私も経営者として気持ちはよく分かりますがますが、今、未来に向けたアプローチをしなければ、未来が開けることはなく、これまで家を建ててきた守るべき顧客を裏切る事になってしまいます。一般論として「現状維持は緩やかな衰退への道」と良く言われますが、長崎は急激な破滅への道と言える様な厳しい状況です。

生き残りは自社独自のマーケットを作るしかない。

そんな長崎県の厳しい経営環境の中、10年後を見据え、今までと違う道を模索する一つの選択肢として私達が行っている職人起業塾(マーケティング(自社独自のマーケット=信頼関係で結ばれた顧客のコミュニティーを作り上げる活動)の理論を末端の現場実務者と経営者が共有し、職人をはじめとする全ての実務者と共に「マーケティングの構築と経営理念の体現」を目指して、学んだ概念を継続した行動に移して仕組みを作り上げていく実践型研修)を何としても長崎で開催したい!とお申し出を頂けたのは、私としても非常に嬉しいことで、日本の最先端、いや、世界でも最も市場が厳しくなるエリアで地域密着の地場工務店が生き残る道を模索するお手伝いを出来るのは、今後の大きなモデルケースとしても注目出来ると思っていますし、職人を変え、現場を変える事で地場工務店の経営を変え、地域を支えるという私のライフワークの実証の地になるといっても過言ではありません。生き残るには生き残る体力を身に付けるしかなく、それは一朝一夕でできるものではい、という原理原則を熱く訴え、出来るだけ多くの方にご理解頂きたいと思います。未だ決定した訳ではありませんが、何とか、今回のセミナー開催の中心になって下さった相川社長と山内さん、そして諫早の方々の心意気に応えて長崎の地にマーケティング・マインドのタネを蒔けることが出来るように、私ももう少し、気張ってみます。チェスト!

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