無知は罪。中古住宅×リノベーションと壁内結露大量発生問題。

平成30年9月15日曇り

現場実務に奮闘中!

東京でのアウトプットインプット盛りだくさんの出張を終えて神戸に帰ってみると、相変わらず緊急度の高い重要なタスクがてんこ盛り。既に大まかスケジュールは詰まっているにもかかわらず、まだまだ毎日のように事務所へはもちろん、携帯電話にも直電で続々と台風関連の連絡が入ってきます。当分、ハシゴを積んで走り回る日々が続きそうです。。

雨漏りのように見える壁内結露

今日は朝からお客様からご紹介いただいた(らしい)マンションリノベーションの相談に同行した後、昼飯も食わずにエクステリアリフォームのご相談、そのまま御影に飛んで昔からお世話になっている不動産会社の社長の依頼で売却した物件の瑕疵担保責任保証の調査に。なんでも先の台風で壁に漏水箇所が発覚したとのことで、買主側から連絡があったのを受けて意見を聞かせて欲しいと請われて、見に行ってみると雨漏り跡としてマーキングされてるところはサッシ廻りばかりで、しかもよく調べてみるとあちらこちらの窓周りに水沁みが確認できました。「これは外部からの雨水の侵入ではなく、どうやら内部結露が原因ではないか」と見解を申し上げてきました。ただ、雨漏りが全くしていないとの断定はできないので、少し様子を見てはどうでしょうと提案をしましたが、得心は頂けなかったようでした。

「問題があって当たり前」という非常識。

今回の案件は築25年の中古戸建を購入された方がフルリノベーションをされるとのことで、内装の内張りボードを全てめくってグラスウールを入れ替えるべく撤去していたのであちらこちらに水沁みの跡が露見しましたが、築20年以上経つ物件はほとんどの住宅で内部結露が起こっており、表面的なインスペクションでは調査できないのが現実です。基礎パッキンも施行されていない土台には一部腐朽菌がついており腐れ部も見られました。これも内張りをめくらないと露見しない問題で、雨水の侵入以外は瑕疵担保責任を問われないかというと微妙なところではありますが、私たちのような現場実務者からするとごくごく当たり前の光景ではあります。中古住宅を購入された住まい手さんにとっては由々しき問題であり、軽々しく「中古の木造住宅ってこんなもんですよ」とは言えず、とは言え、そもそも建物の価値が高くない物件を売った売主の瑕疵だとも言えない苦しい現場調査となりました。

無知は罪。

20数年前に新築でこの物件を建てた時代には、(その当時の)全く以て標準的な施工、(法律的にも問題ない)をされているし、設計および施工に問題があったとは言えにくいですが、その当時使われていたグラスウールの熱貫流率と室内外の気温差、そして一般的な室内の相対湿度を計算すると明らかに内部結露が起こる仕様になっています。特にサッシ周りはアルミサッシの単板ガラスで今の樹脂サッシ、樹脂アルミ複合サッシに比べると断熱性能の違いは歴然で、結露して当たり前の仕様しか(一般的には)選択肢がありませんでした。正直に言ってしまうと実際、私自身も大工として何の迷いも疑問も持たずにそのような施工をしておりましたし、その当時はハウスメーカーの下請けの工事が大半を占めておりましたが、自社物件もあり、無知は罪、と言いますが、今思い返すとお施主様に何だか申し訳ないような気がします。

高断熱高気密住宅が当たり前に(やっと)なる。

昨今、すっかり「流行」と言うよりはスタンダードになってきた高断熱高気密住宅の施工は室内の温熱環境が温かくなることで呼吸器系の疾患(平たく言うと風邪)のリスクが減り健康になる、エネルギーの消費が少ないのでランニングコストが安くなり経済的なパフォーマンスが上がる、省エネで環境に優しいといったメリットの他にも建物を長持ちさせるように内部結露が起こらないスペックを計算で表し施工に反映するといったメリットも実はあります。ちなみに、壁内結露の予防として現在は殆どの住宅で外壁に通気層が設けられておりますが、これは私たちが断熱施工を師事している新住協の鎌田元室蘭大学教授が発案し、国が定めた長期優良住宅の標準仕様として全国的に広がったものです。現在、法改正が閣議決定されて移行期にある2020年から改正される新しい建築基準法も当然この流れになっており、もう少ししたら漸く日本の住宅は内部結露がしにくくなるのが当たり前になります。

無知だった建築会社の懺悔。

建物性能を数値化して検証する高断熱高気密仕様の新築住宅や断熱改修をはじめとする建物性能を高めるリフォーム、リノベーションの提案など、私たちはいち早くその建築基準法の新基準に取り組んでいます!と今は偉そうなことを言っても、すみれでも本格的に住宅性能の数値化に踏み切ったのはたかだかこの5〜6年のことで、それまではこれまで通りの一般的な施工を何の迷いもなく行って来た訳で、壁内結露をしてしまう住宅を作ってきたのが事実であり、正直、少し後ろめたい思いがあるのは否めません。今、私たちに出来るのは、サッシ周りの断熱性能を改善するリフォームの提案や、結露を少なくする為に住宅内の温度格差を減らしたり、燃焼系の暖房器具の使用を抑えるとか、換気をマメに行って室内の湿度が上がり過ぎないようにするなどの暮らし方の提案くらいしかできませんが、それも建築会社の責任の取り方の一つと考えてお客様に伝えていきたいと思っています。

建物瑕疵大量発生の危惧。

今回、中古住宅の売買に絡む瑕疵担保責任の補償問題での相談を受けて、「難しい問題やな〜」と頭を抱えたのは、内部結露による壁内や小屋裏、土台などへのダメージの程度がわからないことです。築25年の木造在来工法の建物といえば、脆弱な断熱(床下など無断熱が珍しくない)基礎パッキン無しでコンクリート基礎の上に土台が直に敷かれており、外壁に通気層も無く、外気の冷気が壁内にダイレクトに伝わる仕様が当たり前であり、今年から住宅中古流通における説明責任が義務化になったインスペクションの普及による買い手側擁護の風潮は、表面的にはわからないが、壁をめくって調べてみると程度の差はあれども必ずと言って良いほど見られる内部結露の水沁み、腐朽菌の付着からくる腐れが建物の構造上主要な部分の瑕疵として問題になるのではないかということです。

世の中はすべからず表裏一体。

今後、10年間で住宅の3分の1が空き家になると言われるこれかからの時代、中古を買ってリノベーションが時代の主役になろうという時に、熱貫流率計算を行なって内部結露が起こる数値を示す物件が取引されないようになるとほぼ全てと言って良いくらいの住宅が巨大ゴミと化してしまいます。逆に、この問題を知らずに中古物件を買う人が大半だと考えれば、意味のない表面的なインスペクションの結果をみて購入を決められた後で思わぬ問題が発生して、困る人が多く現れる可能性が有るのではないかとも思うのです。どちらにしても、メリット、デメリットは表裏一体。その理解は絶対に必要だと思います。すみれでは現在もインスペクションの精度を上げるべく、サーモカメラによる断熱欠損の調査や低周波電磁波の帯電状況を計測するなど、表面的な目視だけではない建物診断をお勧めしておりますが、今後は壁内結露がある前提での調査、報告を取り入れるべきかと改めて考えた次第です。この記事を読んでもよく分からんぞ、と言われる中古物件を買ってリノベーションをお考えの方はお気軽にご相談ください!(笑)

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