Xデザイン学校2018 #04 質的調査合宿 day2

平成30年9月3日快晴

台風前夜。

嵐の前の静けさと言うのでしょう、今日の神戸は真っ青な青空が広がる気持ちの良い天気となり、今年最大の勢力を誇ると言われている台風21号が近づいているなどとは思えないような好天となりました。先々週に神戸を襲った台風20号の補修や復旧工事もまだ終えていないお宅がほとんどの状況で、今日は台風の来週に備えて前回の台風で一部破損したカーポートの屋根の撤去など「台風に備えたい」という依頼の電話が朝からひっきりなしに事務所にかかっておりました。神戸市内中に散らばっている工務スタッフにてんやわんやの対応に走ってもらいつつ、明日の直撃台風で大きな被害にならないことを祈るばかりです。

Xデザイン学校2018 #04 質的調査合宿 day2

さて昨日までの二日間は昨年に引き続きUXデザインの研修に京都合宿に参加してきました。実際にフィールドワークに出かけ、街中で行動観察を行い、そこで見つけた事象から共通する概念を抽出し、テーマに沿った「パターン」をもつけ出すことで潜在的な問題や、ユーザーが気づいていないニーズをあぶり出すというこの研修はインサイドアウトのマーケティング思考が染み込んだ私が、バイアスを捨ててアウトサイドインのUX思考を理解し身に付けるには絶好の機会だと大きな期待を胸に今年も参加してきました。研修の流れと概要は土曜日のブログに書いておりますので、今日は2日目を終えて気づいたこと、理解できたこと、そして反省を以下にまとめておきたいと思います。

デザイナー系女子へのエスノグラフィー

今回のフィールドワークのテーマは「人はどんな時に豊かな生活を感じるのか?」となっており、本来は京都の町に暮らす人々や、観光に訪れた人たちの行動を観察し、エスノグラフィー的な観点でその地域にある暗黙知や社会システムを見つけ出し、それを分析して概念化、パターンを見出すのを通してビジネスモデルに落とし込むヒントをつかむのが目的で、一切の先入観を捨てて目の前の事象に向き合い、「なぜだろう?」という問いが立ったものに対して質問を繰り返すことで、発想を転換させるような知見を得ることを目的にしています。ただ、私たち研究生チームは少し趣旨を変えて、本来の研究テーマに沿う形でペルソナの行動履歴から京都での豊かな暮らしを疑似体験するような場所や、ペルソナの趣味嗜好に合った場所に赴き時間を楽しまれる様を観察調査してみました。具体的にはアートホテル、本格飲茶、陶器作家さんの作品を販売する器屋さんなどで詳細は土曜日のブログに書いた通りですが、私の志向ではまず行くことがない京都のスポット巡りはなかなかのインパクトでイザベラバードのエスノグラフィーの世界を垣間見たような気持ちになったり、ならなかったり。(笑)ちなみに、イザベラバードの日本でのエスのグラフィーを取り上げた小説の紹介はこちら→ジャーニーボーイオススメです!

家を持ちたいなんて思わない若者達。

昨日は場所を京都からグランフロント大阪の最上階にあるYahoo!社のセミナー室に移してその調査を分析し概念を抽出して京都での行動にどのような価値があったのか、「豊かな暮らし」とはどのようなものか、そこで得た情報はどのようなパターンを持ち、ビジネスに活かすことができるのかをKA法と言うフレームワークを使ってディスカッションを積み重ねました。ちなみに、私たち研究生「チーム1st PLACE」の研究テーマは「建築×UXデザイン」となっており、ターゲット層というかペルソナとして設定したのは就職して間もない、これから結婚し家庭を持つ等ライフスタイルが大きく変わるであろう若者に絞っており、メッセージのインタビューで明らかになったのは「住宅を所有したいなんて微塵も思わない。」と言うことでした。これまで工務店経営者である私が考え実践してきた事は、すべて住宅に興味がある人たちを対象にしており、その所有欲がない人に対するアプローチなど考えたことがありませんでしたが、これから圧倒的に私たちの年代と違う価値観を持つ若者がマーケットの主役になることを考えれば、今のうちに(間違いなく増えてくるであろう)その層の若者に対してどのようなアプローチをするべきかを知っておくべきだと思っています。

分析、価値の概念を探す。

「家なんか欲しくない」と言う若者は、かといって全くどんなところに住むのでも良い訳ではなく、インテリアデザイン、空間に興味がないのではありません。逆にオフの時間をおしゃれで居心地の良い場所に行き、ゆっくりとした時間を楽しむような趣味嗜好を持っておられます。私たちが単なる物の提供者ではなく、「コト」や「空間」を提供する事業者にならなければならない考えれば、どこかで接点があるはずで、その接点さえ見つけることが出来れば必ず受け入れられる部分が見つかるはずだと思っていて、そのインサイトこそが工務店にとって次世代のビジネスモデルを形作るのではないかと思っています。そんなこんなでエスのグラフィーの事例を元に価値マップを作成して浮き彫りになった「豊かな生活を感じる価値」以下の通りで、端的に一文にしてしまうと私たちが持っている価値観と同じような印象を受けますが、実は全く違うという事がプロセスの中で思考に刻み込まれました。「あ、ここか」と少しだけ糸口が掴めたような感覚がありました。

  • 自分に合うもの(好きなもの)を発見できる
  • (制限のない、もしくは少ない)時間を贅沢に楽しめる
  • 気に入ったモノと暮らせる
  • 理想の暮らしを疑似体験してちょうどいいところを探す

パターン化とインサイト

上記の価値観をKA法というフレームワークを使い、豊かな暮らしをパターン化、そしてそのパターンからインサイト見つけてサービスデザインを考案するのが今回の研修合宿のゴールとなっておりました。が、しかし、私たちのチームは結局、具体的なサービスデザインを作る事なく終了の時間を迎えてしまうという不甲斐ない結果になってしまいました。浅野先生には「ワークショップは(質はともかく)時間内に終わらせる事が何より大事。」と言われ続けておりますが、研究生として参加している以上、リアルにビジネスシーンで通用して、事業として立ち上げられるアイデアを出さねばならず、時間通りに終える事が目標などと言っておれないのが実際で、頭から煙を出しながら考えを巡らしましたが、何一ついい案が浮かばなかったという情けない状態で終了時間を迎えることになってしまいました。。

豊かさを感じるパターン15連発。

ちなみに、ベーシックコースに参加されている大手有名メーカーや関西で新進気鋭と言われているWebデザイン会社のデザイナー、ディレクター、リサーチャー等々の皆様が見つけられた豊かさを感じるパターンはこちら、大いに参考にさせて頂きます!(笑)

・人は手に入れられないものを手に入れたとき

・主役だけじゃ物足りない

・目的以外のところに喜びがある

・謙虚な気持ちがあると強制の気持ちがない

・共存のための棲み分け

・継続する事(できる事)

・良い人の心

・信頼できる人から買う

・前向きな気持ちになる

・誇りを持てるものを持っている。

・追体験する事

・結果よりも継続が気持ちいい

・手間がかかる方が嬉しい

・伝統を人に伝える喜び

・季節の移り変わりを楽しむ

豊かな生活の(オレ的)インサイト。

ちなみに、私たちのチームで抽出した豊かな時間だと感じるパターンは「油断できるくらいの余裕を持つ」「リラックスのチャンネルを入れてくれる」「見て、知識を得る行動」となっており、価値マップで掴んだ糸口と合わせて考える中で私が個人的に得たインサイトは「憧れる世界観に近づける、もしくは世界観の中に浸れることで豊かさを感じる」ということです。(あくまで私見です、突っ込まないでください)。。要するに世界観を作る、作れるのは人としてある程度成熟した人の特権で「人として成長」という曖昧で主観的で、精神的で緩やかな「上質の人生」へ少しずつでも移行した時に得られる豊かさ、その成長するプロセス自体の豊かさに繋がる行動を持つことが「豊かな時間」だと感じているのではないかと考えました。少しニュアンスが難しいので、もう少し整理をしなければなりませんが、とりあえずは一度、このインサイトを持ってサービスデザインを考案して見たいと思います。「チーム1st PLACE」の皆様、結局、バイアスを排除しきれていない気もしますが、忌憚ないご意見をよろしくお願いします!

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