読書の秋と聖地巡礼@平泉

平成30年10月17日 曇りのち晴れ

仙台から帰神。

昨夜は東北出張のシメに、仙台でデザイン工務店としての認知と地位を確実に固めつつある有力工務店、株式会社スタップの大川社長にお付き合い頂き、同年代の創業経営者として今後の展望というか、事業継承をどうするのか、後継者の選定をどのように行うのかと引退後の事業の着地へのステップと考え方についての意見を交換、熱く語り合いながらきらびやかなお店で夜遅くまで痛飲。そして夜中に締めのラーメンと、楽しくも色々と考えさせられる、また為になる時間を過ごすことができました。大川社長、本当にゴチになりました、ありがとうございました。
そんな余韻を引きずりながら今朝は仙台駅前のホテルで目を覚まして仙台空港から(神戸に飛ぶと思っていたのに!)伊丹へと飛んで、帰神というか出社、なんとか予定していたMTGに間に合いました。相変わらず詰めが甘いというか、ギリギリの生活です。(笑)

矢のような催促。。

さて、今回の東北出張では仕事としての講演活動の他に、ついでというにはあまりにも盛り沢山で充実しすぎる程、あれこれと詰め込んでみましたが、高橋克彦作品にのめり込んでいる私としては聖地巡礼の旅は実はまだまだこんなもので満足出来るものではなく、津軽、十和田湖や太閤秀吉に最後に喧嘩を売った男としてその名を馳せる九戸政実が果てた九戸城跡など、行きたいところはてんこ盛りで、当分、私の東北、陸奥熱は冷めることがなさそうです。(笑)
そんな(仕事のついでに)平泉、中尊寺、江差藤原の里への聖地巡礼を果たして興奮覚めやらぬ中、出社してパソコンのメールをチェックしてみると、隔月で発行しているニューズレターのコラム寄稿の日限が過ぎていると苦言のメールが目に飛び込んできました。他にも、雑誌に掲載してくれる企業紹介の原稿も期限を過ぎていると苦言を呈されていたり、見積書が来ないと電話がかかってきたりと、彼方此方から矢のような催促。。やっちまった、と大いに反省して、躍起になってよる夜遅くまで原稿の執筆他、実務に勤しむことになりました。。
そんなバタバタの中で書いたこの秋の高橋コラム、ニュースレターに先行して以下に転載しておきます。読書の楽しみ方が倍増する聖地巡礼の旅、本当にお勧めします。(笑)

読書の秋と聖地巡礼@平泉

気がつけば今年もあとわずか2ヶ月ほどになりました。異常と思えるほど厳しかった今年の夏の暑さもすっかり忘れさり、近頃は朝夕の冷え込みに冬の足音を感じる今日この頃、気温の上下が激しい季節の変わり目となりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。夏には夏の、冬には冬の楽しみがあるのが日本に住まう素晴らしいところ。秋は夜長を楽しむ読書の季節ということで、私は多くの書籍を買い込んで夜毎に遠い世界、悠久の歴史に想いを馳せています。最近の私の流行は高橋克彦さんの陸奥を舞台にした歴史小説でして、陸奥4部作を全て読了して平安時代から太閤秀吉による天下統一までの長い日本の歴史の中で蝦夷と呼ばれ、中央政権から一線を画した立ち位置で独自の文化圏を築いてきた人達の繁栄と滅亡を繰り返した物語にのめり込みました。

特に、最も心を打たれたのは「火怨」という作品で東北のヒーローであり、大阪、京都にも深い関わりがある阿弖流為が、最終的には絶対に勝つことができない朝廷という巨大な敵に対して、策を練り繰り返しの侵攻を退けた後に、蝦夷の首領達と無理やり反目し、わざと朝廷側に寝返らせて領地の安堵を得させた後に、初代征夷大将軍に任じられた坂上田村麻呂に自ら首を差し出し、自らの命と引き換えに蝦夷の地をを戦火に巻き込むことなく、蝦夷の民を守った姿にはすっかり心酔し、リーダーかくあるべきと、在り方を学んだのを皮切りに他の高橋克彦作品を読み漁ることになりました。

蝦夷の歴史の中で最も栄華を極めたのは、源義経を庇護するなど、歴史の表舞台にも度々登場した奥州藤原氏です。その繁栄の象徴として今も遺されている平泉、中尊寺の金色堂はその昔、黄金の国ジパングと異人に言わしめるに相応しい豪華絢爛、当時の工芸、建築の粋を集めて建てられたもので、建築を生業としている私は以前から一度は訪れてみたいと思っておりました。しかし、東北、岩手県は遠く、これまで見に行く機会を作れずにおりました。この度、高橋克彦作品を読み進め、NHK大河ドラマにも取り上げられた奥州藤原氏の繁栄と滅亡を描いた「炎立つ」の最後に金色堂の金色堂の須弥壇内に藤原清衡、基衡、秀衡、泰衡の四代に渡る遺体と首級が安置される一節を読んで、金色堂は煌びやかに美しいだけの建物ではなく繁栄と滅亡を今の世に伝える敗者の棺なのだと強烈な興味を持ち、当時から1000年近く経った現代にその姿を実際に見ることが出来ることが奇跡に感じられました。

「思いは招く」とよく言われますが、そんな陸奥へ行ってみたいと想いを募らせていたら、なんと、仙台のメディアの方から突然連絡があり、震災復興が落ち着いて、消費税増税に戦々恐々としている石巻の工務店向けのセミナーを開催するので震災後の消費増税を経験した工務店の代表として講師役で登壇してほしいとのオファーがきました。渡りに船とはこの事で、旅費をセミナー主催者に負担して貰えるという幸運に恵まれて、この度、念願叶い奥州平泉・中尊寺に聖地巡礼の旅に行ってきました。実際に訪れてみると小説を読んで頭の中で思い描いていた、陸奥の山深い風景に開けた平野を見下ろすように、堂塔40余、僧坊300余に及ぶ壮大な伽藍を造立したと言われる中尊寺の圧倒的な存在感を肌で感じることができました。そして、夕暮れ、凛とした空気が漂う中で目にした、奥州藤原氏滅亡から500年経って彼の地を訪れた松尾芭蕉の銅像と歌碑に刻まれた「夏草や 兵どもが 夢の跡」「五月雨の降り残してや光堂」の二つの俳句は小説の中の悠久の歴史ロマンの世界を十二分に堪能させてくれました。

せっかく今は読書の秋、もう一歩踏み込んで小説の舞台を実際に訪れる聖地巡礼の旅に出かけられては如何でしょうか、今よりも格段に読書が楽しくなるのを請け負いますし、強くお勧めします。

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