質と量のジレンマ。

令和二年二月六日

炭鉱の町、大牟田へ。

今朝もやっぱり朝早くから自宅を飛び出し、新幹線に飛び乗って九州へ。明日、博多で開講する第十六期職人起業塾の開催に合わせて、今日は大牟田市で職人採用・育成に特化したキャリアプラン形成の人事制度ワークショップをJBNの地域団体である一般社団法人 人に優しい家を考える会と一般社団法人職人起業塾で共催しました。福岡県だけでなく、すぐ隣の熊本や有明海を挟んで向かいになる長崎からも従業員さんを私たちの研修に送り出された人材育成に熱心な経営者の方が多く集まってくれて、初めて訪れた大牟田市で馴染みが薄いのかと思っていましたが、全くアウェー感を感じる事なく、いつもの調子で熱く語りました。(^ ^)

2030年、職人ピークアウト説。

現在、全国で開催している建築現場従事者向けの人事制度WSは、これから十年で職人がほぼいなくなるという事実、今すぐにでも職人の採用、育成を行わなければ5年後以降、建設業は業態を維持できず、工事が出来なくなり没落してしまうという現実に正面から目を向けて、職人を若者が働きたいと思える、親御さんが反対しない職業に改善すべく、待遇面を見直し、キャリアプランを提示して未来が標榜できるようにするのがその趣旨です。セミナーではなくワークショップの形態をとっているのは、私たちがこの15年間組み立ててはやり直しを繰り返しながら運用してきた賃金制度、等級制度、評価制度の人事制度の3つの柱を丸ごと公開して、参加者の従業員の実質賃金と照らし合わせて微調整しながら即運用に踏み切ることができるようにその場で従業員さんの年収の計算をしてもらうリアルな場になっているからで、現状の給与実態と大きく齟齬がない事業所は即、人事制度改革に踏み切られることも少なからずあります。

半年を1日に短縮するWS

次回は大阪で2月17日、東京では3月27日に開催の予定のこのWSは、一年かかると言われる人事制度改革の基礎部分の制度設定の半年分を、私たちが実際に運用してきたリアルな賃金テーブルを取り込むことで1日で片付けてしまうという大幅な時間短縮を叶えるWSとなっています。その分、あまり大人数ではそれぞれの会社に合わせた細かな説明が難しくなる為、本当に人事制度改革に取り組みたいと思われる方に限定して、10社のみの少人数制で開催しています。その昔、帝国陸軍では一人の将は七人までしか部下を管理指導、統率できないと言われていたそうですが、私には十人程度までしか、それぞれの会社の実情を聴きながら、チューニングのアドバイスを行う様な細やかな対応をする事ができないようです。しかし、今回は思いの外、興味を持ってくれた工務店経営者が多かった様で、また、珍しい切り口の勉強会ということもあり、蓋を開けてみると20社以上の方からの申し込みになっておりました。

質と量のジレンマ。

私としては多くの工務店経営者に、職人の内製化、採用、育成に興味を持って貰うのは嬉しい限りですが、決して少なくない先行投資が必要な職人の正規雇用(若しくは待遇改善)を、今もこれからも行う気概のない経営者も中にはおられた様で、参加者が多い分、個別のアドバイスが薄くなったのは悔やまれます。それでも、職人不足の深刻な状況は伝わったと思いますし、ある種の啓蒙にはなったと思えば多くの方にご参加頂いたのは決して悪い事ではないと思っています。為したい事が有れば質と量のジレンマは常につきまとうもの、時間軸と合わせて絶妙なバランスを取りながら建設業界のボトムからの改革を進めて行きたいものです。