情報格差は意識格差。〜ACURO5の先行配信〜

令和元年11月12日快晴

加速していく忙しさ。

良い天気が続きます。絶好の行楽シーズンになり、山に登ったり自転車に乗ったりとたまにはゆっくりと時間とって遊びに行きたいなー、と思ってしまう位のポカポカとした日差しと真っ青な秋空が今日も広がりました。とは言え、近年、年齢を重ねるごとにいろんな役が回ってくるようになり、忙しさは加速していく一方で、今日も朝から夜まで分刻みのスケジュールをこなしつつ、神戸市内を走りまわりました。

ACURO5

昨日は建設業界の品質管理を担保するトップブランド企業であるネクストステージ社にお声掛けいただき、大阪本社まで出向きました。昨年、小村社長から伺っていたクラウド型の動画配信サービスをいよいよ本格的に稼働させられるようで、その中のコンテンツの1つとして私のインタビューも配信していただけることになり、今日はその収録に伺いました。建築業界の喫緊かつ重要な問題である職人不足の解決、と言うよりも問題提起に少しでも役に立てばと思います。

先行、(恒例) ネタバラシ。

インタビュー形式の動画収録は、インタビュアーがどストレートな私に質問を投げかけてくれるのに対して「私の思いの丈をぶちまけてください。」といった感じで、とんがったエキサイティングな動画を撮りたかったようですが、根が上品なだけにあまり過激な言葉を使うことなく、淡々とした調子で職人の育成と若者が職人になりたいと思ってもらえる職人離れの解消について持論を述べさせていただきました。以下にQ&A形式でその内容の要点をここにも動画配信に先行して書き留めておきたいと思います。

Q: 今の建設業界に対して最も問題だと思う事はなんですか?

A: 最も大きな問題だと思うのは、職人不足についての危機感が希薄なことです。元請け工務店やリフォーム会社の経営者のほとんどが施工管理者や職人は誰かが育成してくれると他人事だと考えていることです。建築職人の要である大工を例にとると、1980年代に800,000人いた大工が2020年には200,000人を切ることになっており、このままの減少率が続けば2030年にはほとんど大工はいなくなる計算になります。若年層と言われる20歳以下の大工見習いの数は 2000人を切っていると言われており、ほとんどいないのと同然です。今活躍している50代以上の大工さんたちが引退すると、いくら探しても大工がいないと言うことになりかねませんし、今いる大工さんも資本力のある会社に引き抜かれるようになってもおかしくありません。建築市場の縮小よりも激しい職人不足で受注はあれども施工できずに資金ショートに陥って破綻する企業が続出するのではないかと思っています。

Q: 職人不足解消に対して必要な事は何ですか?

問題の根本は建築業界は若者に不人気である。の一言に尽きます。2018年のリクルートの調査結果によると、学生が就職先を選択するにあたり最重要にあげているのは「安定」でした。現在の職人の働き方といえば、ほとんどが正規雇用ではなく外注業務委託扱いで、社会保険も厚生年金もなく、仕事がある時だけの請負となっており、しかもその単価は日本がデフレに陥った20年前から下りきったままです。まず職人の労働環境を他業種に比して遜色のないものにすることが絶対条件で、それにはまずキャリアプランを策定し、職人が生涯所得が計算できるようにならねばならないと思っています。また、雇用した社員に対して生涯所得を約束する以上、同時に建築会社は売り上げが不安定な請負型から脱出し、ストック型経営に移行するマーケティングの実践が必要だと考えています。職人の地位向上はマーケティング戦略と密接な関係があるのです。

Q:現在職人として働いている人たちに対して言いたい事は?

こと私たち一般社団法人職人起業塾は職人の社会的地位の向上生ミッションに掲げて活動しています。社会的地位の向上とは他業種にに劣らない社会保障が付加されていたり、それがなくても問題がない位の所得が得られたり、そして年齢を重ねて体力的に生産性が落ちた後も豊かな生活が送れるようなキャリアプランを手に入れてもらうことを指しています。それが全くできていない現状とのギャップを埋めるには、職人自体が働き方を見直し、言われたことを言われた通りにやるだけの作業員ではなく、現場を知る建築のプロフェッショナルとして役割を広げ、全うし、影響力を発揮できるように資格取得やコミュニケーションスキルを身に付けるべく、学び成長するべきだと思っています。要するに現場に甘んじることなく、学び続ける習慣を持ってもらいたいと言うことです。

わかっている人にしか伝わらない。

以上の他にも、様々なインタビューに答え建築業界に対する提言を語らせていただきました。全部書き起こすだけにはいかないので、具体的な内容についてはこの程度に留めておきますがこのインタビュー動画はクローズドコンテンツとして会員制のメンバー向けに配信される模様です。それは少し残念なことですが、積極的に情報収集される方のみにしか届かないと言うことです。私がこの度、熱い思いを持って口にした提言は珍しいものでも変わったことでもなく、普段から業界の動向にアンテナを張っておられる経営者の方には当たり前のことばかりです。そんな方々は皆さん職人の雇用や育成に徐々に力を入れておられ、私たちが研修事業でお手伝いすることもお少なくありません。しかし、その反面、圧倒的多数の建築会社の経営者さんは未だに危機感を感じないまま、流れに身をまかせ何とかなるさと考えておられる節が少なからずあります。

情報格差は意識の格差。

新潟のカリスマ工務店経営者相模社長のメルマガで、工務店の情報格差が完全に二極化しており、情報を持たない工務店はインターネット検索に長けた若い顧客の情報量に負けてしまうようになっていると書かれておりましたが、その推察には私も全く同感で、圧倒的多数の情報弱者とも言えるような工務店経営者になんとかして情報を届けたいと思っていて、毎日このようにブログを書いているのですが、それもネットの大海の中にあっては波に翻弄される木の葉ような存在で、私の影響力など皆無に等しいのが現実です。ただ、全国各地に私の思いに共感してくれる工務店経営者は確実にいてくださり、熱い応援の言葉を私にかけてくださいます。地道にすぎる、果てしない道のりの挑戦ではありますが、職人の自助の精神を養い、現場改革によって原理原則頃のマーケティングを構築して、地域工務店が地域自律循環型ビジネスモデルを作り上げることに少しでもお力になれれば幸いだと思っています。以上、このような長文にお付き合いいただきました工務店経営者の皆様は、情報を持っていない意識格差があるであろう経営者の皆さんにシェアしていただければ本当に嬉しいです。


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