住宅はランニングコスト。その前に押さえるべきこと。

平成31年4月8日 快晴

 春満開。

伊川の千本桜も漸く満開を迎え、昨日の日曜日は伊川谷も河川敷にシートを敷いて花を愛でながら食事やお酒を楽しむ人でいっぱいでした。私は北関東への出張から帰って来てそのまま新築をお考え中の方との面談と、相変わらず仕事でしたがすぐ近所での楽しげな様子に感化されてしまい、我慢出来ずに夕方早めに仕事を切り上げて一年に一度の花見ランに明石城に出かけてしまいました。大蔵海岸から明石城をくるっと回る10kmコース、明石公園は伊川の河川敷とは別次元と思える程の多くの人で賑わっており、まさに春爛漫。(私も含めて)日本人の桜好きと四季の移り変わりを感じる事の出来る暮らしの素晴らしさを改めて感じた次第です。

価値を生み出すのは現場のみ。

今日は午前中、顧問会計事務所さんとの月次決算報告書を確認しながらのMTGの後、社員大工のサトーくんと連れ立ってCS(化学物質過敏症)の方に留意したリフォームをご依頼頂いたお客様宅にて契約と着工前の大工紹介、また現場での細かな収まりの確認を行いました。工務スタッフと一緒に現場に行き、施工方法の詳細を詰めると見積もり金額が減る事が少なからずあり、今回も店舗の内装替えに必要だと計上してあった足場工事を取りやめるなど、お客様に喜んで頂く事が出来ました。設計やデザイン、見積り、提案など建築事業には大事な事がたくさんありますが、最終的に建築業の評価は現場にしかない。やっぱり、現場が一番重要です。(^ ^)

地盤のプロの厳しい言葉。

夕方からは適正地盤設計協会のO山氏と日本で唯一の専業電磁波測定士の青山氏とのコアな組み合わせの三人で近況報告と情報交換を兼ねてのMTGでした。O山氏は地盤設計、地盤改良のプロフェッショナルで以前から「建築士は地盤設計が出来るようになるべきで、建物の安全性の責任を負う建築士が構造の事が分からない、地盤の事は地盤調査会社に丸投げで、顧客から地盤保証にお金を払わせるだけでその責務を放棄するのは法律違反だ」と、非常に厳しい事を言われており、私達すみれは数年前から構造設計に対する姿勢を見直して来ました。その当時から新築住宅に関しては全棟構造計算を標準としており、高断熱高気密住宅の特徴でもある大きな吹き抜けをLDKに設けても耐震等級3を確保出来ているのは、構造計算を行なって梁や基礎の断面を検討しているからに他なりません。

当たり前の事が出来ていない業界⁉︎

今日のMTGにおいて、O山氏の話の中心は、「工務店業界に構造計算(許容応力度計算)を普及したい、その上で、地盤の設計も一貫して計算するという土木建設業界における当たり前を特殊なジャンルになった木造戸建て住宅にも普及させたい!」との事でした。私としては全くもって完全に同意で、正直、これまで避けて来たと言うより、正面から向き合っていなかった地盤設計にも向き合うしかないと覚悟を決めさせられました。あたりまえの事を当たり前にする事ほど難しい事は無い。とよく言われますが、言い訳しやすい、責任を他人に押し付けられそうな事ほど、当たり前の事が出来なくなってしまいがちです、木造住宅は建築基準法に特例として定められた確認申請時に構造計算の提示の割愛を認められている(四号建築物特例の)せいで戦後の復興時以降、大工さんが経験と勘で家を建てていた時と同じ、もしくはそれに毛が生えた程度の基準で設計、施工している会社が殆どだと言う悲しい事実があります。。

相当がまかり通る相当な問題。

この問題が大きく露呈する事になったのは、熊本を2度に渡って震度7の強さで襲った大地震で、当時、益城町で耐震等級2の築浅の建物が倒壊したとずいぶんと話題になりました。よくよく詳しい話を聞いてみると、倒壊した建物は耐震等級2ではなく、耐震等級2相当の構造計算をされていない、仕様規定のみで設計されており、実際の強度は基準に足りていない建物であることが明らかにされました。実はこの問題、上述の4号建築物特例と言われる木造2階建ての建物までは建築確認申請の際に構造計算書を提出しなくても良い。という法律からの流れで、日本中で建てられる大多数の建物が構造計算されておらず、「相当」と言うよくわからない名称が分かり通っている事実に由来しています。この問題を建築主はおろか、工務店の実務者も経営者も理解してない人が非常に多く、何の悪気もなく構造計算をしなくても良いと思っているのは地震大国日本において非常にやばい状況であると言わずにおれません。建築業界は実は大きな火種を抱えています。

住宅はランニングコスト。その前に押さえておくべき事。

過日、京阪神木造住宅協議会の研修会に構造塾のさ佐藤実氏に講演に来ていただいた際、口にされたのは、「耐震等級1 =大地震が来た際に命を失わずに済む(一度の大地震で倒壊しないが余震で崩れる)、耐震等級2=大地震が来た後、住み続けるには大々的な補修、補強工事が必要となる、耐震等級3=大地震が来た後も住み続けることが出来る建物」とわかりやすく説明をされました。私は新築や中古住宅の大規模リノベーションで住宅取得を取得される方には、毎月支払う住宅ローンの金利や、冷暖房費などの光熱費も事前に計算するべきで、住宅はイニシャルコストではなくランニングコストで考えるべきだと常々お伝えしておりますが、それも家が建っている、住み続ける前提に立っての事で、大地震が来て、家が倒壊してしまうとそんな計算は全く意味を為さなくなります。新築を建てて何年もしないうちに地震で建物が倒壊してしまうなんて、考えたくもないと思いますし、そうであれば耐震等級3相当の建物ではなく、構造計算上で成り立つ構造を採用すべきだと思います。家づくりの大前提だと思うのです。


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