上っ面のリスクリバーサルと絶妙バーガーキャンペーンの評価。@職人起業塾 大阪

平成31年3月22日 曇り

上っ面のアクションはいらん。

今日は大阪。第13期職人起業塾の講師役として朝から張り切って出かけて夕方までの研修、深夜までの懇親会と相変わらず一日中熱く語り続けました。大阪での研修もそろそろ終盤に入り塾生の皆さんは自分自身で立案したアクションプランに熱心に取り組まれており、イメージしていた通りの成果を出される方も数人出てきたりと随分と盛り上がってきました。職人起業塾の6か月コースではマーケティングのコンセプトを時間をかけて丁寧に解説しており、それを実業に落とし込んでもらうことを目指しています。アクションプランも然りですが、マーケティング理論を学び活用してもらう中で、絶対に上っ面の薄っぺらいマーケティングアクションは慎む様に、使い方を誤れば却って顧客の信頼を失うことになると口を酸っぱくして言い続けており、本質的な視点を持って業務に当たるように伝えています。

一等地に立地するハンバーガーショップ。

最近の大阪での研修は新大阪の会場をお借りしています。講座の中盤で「リスクリバーサル」の概念を説明するのに、実例として引用している企業が新大阪駅の改札を降りてすぐにあり、講座の度に毎回、そのお店の繁盛具合が話題にのぼります。それは新大阪駅の改札を出るとすぐ目の前に大きなハンバーガーの写真を貼り出しているお店で、店頭にでかでかと張り出されたバナー広告にはチーズが溶けておいしそうなハンバーガーの写真とともに「絶品バーガー」との目立つ文字が踊っています。飲食店舗の売り上げを左右する大きな条件として人が集まるロケーションが挙げられますが、そこはハンバーガーショップとしては抜群の立地で営業しているお店です。新幹線も乗り入れている都会の大きな駅の改札前に、手軽に食べれて誰もが好きなおいしそうなハンバーガーショップがあれば繁盛すること間違いなし。と思いきや、中を覗いてみるといつも微妙に席が空いており、なんだか少しもったいないような印象を持っていました。

リスクリバーサルという概念。

数あるマーケティングコンセプトの中でもスタンダードな部類に入る「リスクリバーサル」は顧客が買わない理由(リスク)をひっくり返し、購入を促す概念で、代表的な例として良く紹介されるのは購入後、その商品に納得できなければ代金を返す「返金保証」です。近年はTVショッピングをはじめとする通信販売ではすっかりおなじみになりましたが、飲食店舗でこの返金保証を付加したサービスを行っているケースは非常に稀で、日本では殆ど見ることはありません。ちなみに台湾では「不好吃免錢」(不味かったらお金はいらない)と看板を掲げたタンメン屋さんが数多くあり、マーケティングコンセプトと言うよりも店名?ジャンル?として良く知られています。それだけ味に自信があるという意味の様で、実際にそのお店で細麺のタンメンを食べて、不味いからと支払いをしないことはないらしいですが、一番最初はクレームを言ったお客さんにはお代を貰っていなかったのかも知れません。

期待を裏切るマーケティング施策。

駅前のハンバーガーチェーン店の話に戻ります。そのお店では2009年に「絶妙バーガー」と言う高級路線のハンバーガーを新発売して上述のリスクリバーサルの手法を使って、「美味しくなかったら返金!」のキャンペーンを行いました。改めてネット上で調べてみると、返金の条件は食べかけのハンバーガーを半分以上残して申し出ることと、個人情報を提供して一度きりしか返金は受けられない様にしていた様です。実は元来の新し物好きなのと、マーケティング学んでいた関係もあり私も当時その絶妙バーガーを新大阪駅の改札前のお店で食した覚えがありまして、10年以上前のことで随分と記憶は曖昧ですが、印象に残っているのは、「これぞ王道!」と大々的に宣伝されていて期待していたほど特別美味しくなかったのと、店先で返金の条件を聞くと、免許証がいるとか、アンケートに答えてもらいたいとか、あれこれと面倒なことを言われ、結局、(朝の忙しい時間に立ち寄ったのでは)実際は返金などしてもらうことはない。と言うこれも期待を大きく損なうものでした。

目先だけの成功例。

インターネット上でその当時の記事をみると、返金保証を大々的に宣伝したことが幸いして約2週間で約120万食と大きく売り上げを伸ばしたとか、キャンペーン当初は1%〜5%の返金率を見込んでいたのが、0.2%に留まったとか、概ね新商品販売のマーケティング戦略が成功したかの様に評されています。しかし、自分自身の経験から鑑みると、私の様な新し物好きの人が多く購入したのは間違いありませんが、味も返金のシステムも期待値に達しないと感じた人も少なくなく、返金を求めた人の割合が0.2%と予想を大幅に下回ったのは、返金する際のややこしいハードルの設定のせいでは無かったかと思うのです。私個人的な意見では、本当に返金保証が顧客の支持を得たのであれば、一時的なキャンペーンではなく、継続したサービスとして定着すればよかったはずで、そうしなかったのは単に新商品に話題性を持たすための薄っぺらいマーケティング施策で、目先だけの利益を追った本質的な顧客主義からは外れていたのでは無いのではないかと思うのです。

マーケティングで目指すべきは長期的、安定的な売り上げ。

以上は、あくまで私の私見であり、そのハンバーガーチェーン店が返金保証キャンペーンを行なった後の業績の推移は公開されておらず、キャンペーンをキッカケにファンを増やし、長期的な収益に結びつけたかは定かではありませんが、昨年の決算では大幅な赤字を計上しており、今日、その店舗をみると一等地にあるにも拘らずとうとう閉店のお知らせが告知されてありました。確かに、私も2009年に絶妙バーガーを食してから、なんとなく期待を裏切られた体験に引っ張られてそのお店を利用することから足が遠のいておりましたし、いつ見ても周りの店舗に比べて空き席が目立っていた様に思います。私と同じ想いを抱かれている人が少なからずいるのではないかと思っていました。一時的に爆発的な売り上げ増を呼ぶマーケティング施策は本質を外し、客を欺く様なことになると却ってダメージを与えるのではないかと思うのです。

弱みをさらけ出せ。

職人起業塾で塾生たちに伝えているマーケティングはあくまでも顧客からの信頼をベースにした売り込み、宣伝広告不要で持続的に売り上げを上げ続ける自社独自の市場(マーケット)を作る方法論であり、入口はともかく、最終的に期待を裏切る上っ面だけの施策は絶対にやめるべきだと言っています。本質的なリスクリバーサルとは、顧客が決して口にしない、しかし、胸の奥に抱えている不安に対して積極的に正面から向き合うことであり、その最たるものはこれまでにお客様から頂いたクレームを公開することだと思っています。人は誰しも、自分の良いところは声を張って人に伝えたい。しかし、弱みは隠しておきたいものです。顧客が抱えるリスクの本質はその弱みにこそあると考えれば、自社が抱えるリスクを明確に示し、その対応方法や改善に向けての努力を伝える方が、返金保証などよりもよっぽど本質的なマーケティングアクションとなります。情報革命によってあらゆることが白日の下に晒される今の時代、隠し立てしたところで結局全てはバレてしまいます。自ら弱みを正直に伝える「在り方」を正すところからマーケティングは取り組むべきだと思うのです。

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本格的なリノベーションを前にとりあえず泊まれる様に水回りと二部屋の改修を行いました、世界に一つの研ぎ出し風呂や、断熱塗料ガイナの実証実験室など結構見所もあります!
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