令和2年11月13日 晴れ
筑後の朝
昨日の早朝、神戸を出発した時の気温は4度、鹿児島に着いたらいきなり暑いくらいで、着込んでいたダウンベストを脱いでカバンに押し込みました。夜は定宿のある筑後の羽犬塚に帰ってきましたが、あまり冷え込んだ感じもなく、今朝も暖かいのだろうとタカを括っていたら意外に冷えてました。気温は10度を切るくらいだったと思います。今日は筑後で若手大工育成プロジェクトの講師を務めておりましたが、気温は20度近いはずなのに風は少し冷たくて、同じ九州でもえらい違うものだと南国鹿児島が恋しくなりました。今週は随分と天気は良いみたいで、冷え込みも緩むとの予報ですが、やっぱり少しずつ苦手な冬は近づいてきているようです。。
断熱気密施工の難しさ
さて、筑後で開催している、実際に実習棟なる小さな家を1〜3年生の若手に自分たちで建ててもらう若手大工育成プロジェクトも今日で9日目、全12回と言いながら、最後の2日は解体工事を行いますので、実質今日と次回で一旦完成までこぎつけなければなりません。今日のカリキュラムは断熱、気密の施工で若手達は狭い部屋に大勢が入ってあーでもない、こーでもないと、作業に取り掛かる前に聞かされた私からのレクチャーを思い出しながら楽しそうに作業を行っておりました。結果的に、グラスウールの充填と気密シート貼りは施工不良と言っても過言でない垢抜けない仕上がりになってしまいましたが、作業終了後に早朝から駆け付けてくれた断熱メーカーの朝日グラスファイバー株式会社の中山さんに不具合点を指摘され、簡単に思えるし誰にでも出来そうな断熱材充填の作業でも、完璧に行う事の難しさを実感してもらえたようでした。
断熱気密の重要性
講座の冒頭に、この10年で住宅施工は大きく変わり、ニュースタンダードが確立されているんだよと話しました。国土交通省が全国一斉に開催している「省エネ技術施工マニュアル」の施工基準が業界の最低基準のスタンダードになっているのと共に、ネット上には断熱性、気密性の重要性を強く訴えるサイトや動画が溢れかえり、ユーザーはそれを目にしてから工務店を訪ねるし、施工現場を見に来る旨を皆に伝えました。断熱、気密の施工不良はそのまま住宅のランニングコストや呼吸器系の疾患、ヒートショックなどの健康に直接影響を及ぼす重要な部分だと繰り返し、この理屈が現場で体現出来なければ顧客からそっぽを向かれ、相手にされないくらい、今どきの住宅建築では最重要な部位であると繰り返し訴えました。
時間を計れ!
ワークショップは終わる事が大事。だと、昨年まで通っていたXデザイン学校の浅野先生に繰り返し教わりましたし、私も常日頃からワークショップを行う際は精度よりも時間管理に重点を置く様にしています。しかし、残念ながら今回も予定の工程までは届きませんでした。終了のホイッスルを私が吹くと、もう少しやらせて下さい〜、と未練がましくプラスターボードを貼っているメンバーもおりましたので、自分達が立てた予定通りに作業が進まないのが悔しいと思い始めた様でした。悪くない傾向です。(笑) この実習研修では、開始当初から、その日に行う作業を小割りにして、どれくらいで終わるかのの予想を実習生自身に立てさせて、制限時間の目標を持って作業を進める様に指導してきました。それは、建築業にとって工程を組み立てる力が非常に重要で、精度の高い工程表を作れる人材があまりいない現実を鑑みてのことです。
値決めは能力
実は立派に仕事をする一人前の大工でさえ(情けない事ですが)細かな工程を組み立てられない者が少なからずおられます。これでは成り行きまかせの工事の進め方になる、もしくは他人が立てた予定で支持された通りに動くだけの作業員に成り下がってしまいます。そうならない為には、普段から自分を含め、周りの職人の施工速度を予測、計測、検証する習慣が必要で、実習研修を通してその難しさを体感して貰う様にしているのです。今日の講座の冒頭でも皆に話しましたが、あらゆる仕事、商売で最も重要なのは「値決め」です。建築業界で例を挙げると、職人が一人働く時間の単価から、建物、ビルの建設の見積もりまで、低い価格に設定するといくらでも仕事は受注できますが、低すぎると赤字になり破綻してしまいます。それでは商売にならんと値上げをしてたっぷりと利益を見込んでところで、高すぎたら誰にも相手にもされません。逆に売り上げは全くなくなります。要するに商売とは提供する価値と値決めとのバランスで全てが決まります。絶妙なバランスで値決めをするには、工事にかかる人数と期間を正確に割り出す能力が必要で、これはそのまま工程表を作る力になります。値決めは能力であり、身につければ大きな財産になるのです。
職人の生き方改革の入り口。
私が考える職人育成の根本は、職人の役割としての多能工化です。創業時からの私のミッションは職人の社会的地位の向上であり、これはただ単に社会保障が付き、しっかり稼げれば良いというものではなく、職人という生き方が多くの人に尊敬され、本人も仕事へのやりがいと生きがいを感じる職業にしたいとの想いです。これを実現するのに行うべきは、職人を単なる作業員から脱皮させ、様々な役割を担わせる事、その能力を身に付けさせる事であり、現場での施工以外でも、施工管理や営業、設計、そして事業所のマネジメント等々、幅広い価値を発揮してもらえる力を備えてもらう事です。その為の一番初めの入り口が、自分がこの作業を行うのにどのくらいの時間を要するのかを明確にイメージできる事からだと考えており、この研修でも耳にタコが出来るくらい時間についての意識と目標に対する検証を行えと言い続けており、時間の観念を備えた実務者をきっと輩出出来ると思ってます。皆んな頑張って!大いに期待してます!(^ ^)
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