マーケティング理論からみた職人育成 #熊本の未来の住宅を考える会

令和2年11月19日 晴れのち雨

今日は熊本へ。

昨夜、宍粟市の顧問先の全体ミーティングに出席して神戸に戻ると10時をすっかり回っており、少しゴソゴソしてたらあっという間に日付が変わっておりました。今朝は熊本への出張前に、クライアントのBarのオーナーからスープを中心としたランチのお店に改装を考えているとの連絡が入り、朝一番にお店で打ち合わせを行ってから昼からの講演に間に合う様にと新幹線の駅へと急ぎ向かいました。相変わらず毎日、貧乏暇なしの夜朝ハイブリッド型の毎日が続きます。今回の熊本での講演は以前に久留米で私が登壇したセミナーを聴かれた熊本の老舗材木店の役員の方が、自分達が主催する工務店の勉強会でも話して欲しいと申し出て下さいまして、今回の流れになりました。実は、講演やセミナーに登壇したら数珠つなぎ式に次の講演を依頼されることが少なくありません。大体、工務店の経営者は皆さん反応が薄いので、大丈夫だったのかな?と講演を終えた後に不安になる事が多いのですが、そんな結果を見たらそれなりに伝わっているのだと勝手に思い込む様にしています。

カネの問題。

今日の講演のテーマは「マーケティング理論からみた職人育成」となっており、私の持論である建築業のマーケティングと人材育成の一体論をたっぷり3時間かけて熱く語らせて頂きました。講演はいつもと同じ様に現状認識からロジックを組み立ててお話ししましたが、若手の職人が入職しない、もしくは離職する、職人の高齢化と人手不足は改めて私が話すまでも無く、解決すべき喫緊の課題だとの認識は皆様持っておられる様でした。しかし、積極的に職人育成に取り組まれている会社はごく稀なのは相変わらずのままで、分かっているけど進まない現状は何ら変わらないままです。その原因の中で最も深刻な問題は数年にわたって先行投資としての育成をしなければならない若手職人の雇用、その前に人事制度を整備して職人の正規雇用に踏み切る際に大きなコストがかかる事だと思っています。要するにカネの問題なのです。

現場マーケティングの必要性。

職人の社会的地位の向上をミッションに掲げる私たち一般社団法人職人起業塾が現場での顧客接点に焦点を合わしたマーケティング理論に基づいた研修を行っている理由も、結局お金の問題を解決する道筋をつけなければ、職人の所得を上げることも、社会保障をつけた雇用環境を整えることもできないからです。「天は自ら助くるものを助く。」と言う有名な言葉にある通り、建設現場で余分なコストがかかる職人の正規雇用は、職人自体が稼ぎ、そのコストを現場で賄うようにならなければ絶対に改善されません。現在現場で活躍している職人や、現場監督等の実務者が、自らの働き方を変えていかなければ、この30年間、一向に改善されず、どんどん深刻さを増した職人不足の問題は根本的に解決される事はないと思うのです。

グレーゾーンの人事制度との訣別

いつも私が講演の際に提言する、現場実務者が意識を変え、決められた作業を決められた通りに行うだけではなく、自分の頭で考え顧客の立場に立ち、真の顧客満足を現場で勝ち取れるように働くようになれば、おのずとリピートや紹介での受注が増えて、売上利益に寄与することになります。そ延長線上で生涯顧客を蓄積していけば、未来の売り上げが読めるようになると言う理論は非常にシンプルで、実は工務店経営者ならば誰もが知っています。それが機能しない最も大きな理由は人の問題、人事制度が整備されていないことにあると思っています。今日の講演では、社労士でもないのに、人事制度構築の基本的な話を1時間ほど時間をとってお話しさせていただきました。以前にもこのブログに書きましたが、職人の働く携帯は労働基準法に適合しないと思い込んでいる経営者は非常に多く、それが原因で人事制度の構築を諦められているのを散見します。先ずは従業員に胸を張って、労働法に完全遵守していると言える状態を整えて貰う事が全てのスタートだと思うのです。

カネ、ヒト、情報

面倒で複雑に感じる労働法ですが、遵守するつもりで取り組んでみると、実はそんなにややこしい訳ではありません。特に我々建設業は特定業種として残業時間の上限が切られておりません。(時限措置であと4年ですが、)現場実務者の実態に合わせた形で整備をして、残業代で調整すれば全ての事業所で完全適法の運用が出来る様になります。グレーゾーンから抜け出して陽の当たる場所に出られれば、人材開発、人材育成の為に用意されている国からの助成制度の活用も積極的に行う様になると思いますし、大きなコストがかかる若手の育成の負担もかなり軽減されるのです。現場を最も重要な顧客接点だと定義して、現場顧客満足を積み重ねるストックビジネスへの移行、それを支える現場人材の育成の為の人事制度の整備、そして国からの支援制度の活用とこの3つをセットで取り組む事で職人不足問題の根本的解決への足掛かりが出来ると思っていますし、私達はそれを15年間続けて、一切の宣伝広告を行わないビジネスモデルを作って来ました。決して難しい事では無いので、モノづくり企業の経営者の方には改革への一歩を踏み出して貰いたいと思います。そんな感じでカネ、ヒト、情報の切り口で今日は熊本でいつもにも増して熱く語りました。お集まりになられた方に少しでも参考にして頂ければ幸甚です。


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