令和2年11月28日 晴れ
大事なのは「その後。」
今日は毎年恒例、1年に1度の一般社団法人職人起業塾の全国一斉フォローアップ研修の開催日。関東、九州から卒塾生が神戸に集まり、半年間かけて学んだ研修での学びの復習と、「研修の終わりは実践のスタート」を合言葉に卒塾式の時に各事業所に送り出したその後の活躍を壇上に立って発表する場です。同じ研修を受講したからといって、必ずしも同じ成果を手にすることができるとは限りませんが、地道にコツコツと努力を積み重ねれば、確実に成長できることも少なからずあり、原理原則に則った行動、習慣化を研修を通して伝えている私としては、非常に楽しみにしているイベントです。大事なのは研修自体ではなく「その後」です。残念ながら、コロナ第3波の影響で遠方からの参加者はほぼ全員と言っても過言でない位、参加を取りやめられてしまいましたが、来られないなら私の方から出向くまで。来年にはまた、各地でフォローアップ研修を行いたいと思っています。
それ、俺やん。
話は変わって、、昨日、朝活BNIのメンバーである堀口さんにクライアントである工務店社長を紹介されて面談の機会を持ちました。紹介されたのは私より10歳ほど年下の職人を集めた施工会社の若き経営者で、人材育成に非常に苦労しており、悩みが尽きないとのご相談を堀口さんにされたようで、それならうってつけの人がいると私をご紹介いただきました。三宮のにしむら珈琲で待ち合わせをして話を伺ったのですが、その社長が語る言葉を聞いていて、全くもって20年前の私が語っていた内容と同じ悩みに苦しまれている様子はまるでデジャヴを見ていたような気分になりました。その社長の口を突くのは、社員である職人たちの主体性のなさや責任感の希薄さ、コミニケーションに対するネガティブな姿勢、何から何まで社長である自分が面倒を見なければならず、忙しいどころか休みもなく、働きづめになってしまっている現状を嘆くばかり。それ、全部俺が喋ってた言葉やん。と思わずつぶやきそうになりました。
負のスパイラル。
20年前、株式会社四方継の前身、有限会社すみれ建築工房として個人事業主の大工から法人成りをした頃、私も営業から設計やプランニング、現場の施工管理、クレーム処理、アフターメンテナンスまで全て自分の役割だとばかり、日々奔走しており、社員である職人たちには現場で作業を言われた通りに確実に行うことだけを求めていました。常に忙しいと時間に追われ、時間がないことを理由に、適当な指示しか与えないまま作業を進ませて、うまくいかない事は全て現場の職人の責任だと怒鳴りつける毎日で、当然、社員との関係もギクシャクして行きます。職人に安定的な暮らしと未来を見せたいとの創業時の想いはいつしか意識の底に沈み、いったい俺は何のためにこんなことばかりやっているんだと疑問に思う事が常々で、全く未来の展望も見ることもできず、このままではいつか壊れてしまうと、暗澹たる気分に陥る毎日でした。それがまたイライラを募らせ、ずっと怒っているようになり、負のスパイラルにまっしぐら、まさに出口の見えないトンネル、最悪の状態でした。
インサイド・アウト
今思い出すだけで赤面してしまう、穴があったら入りたいと思うくらいの悪行の数々、当時の職人たちには本当に悪い事をしたと思います。そんな私でも、20年経った今では、スタッフを怒鳴りつける事などまず無く、お客様とのやり取りも現場のことも担当者に任せて実務的な事を口出しをする事も殆ど無くなりました。その分、時間が出来て一般社団法人やNPO法人の活動をする事が出来ています。振り返ってみれば、大きな変化があった訳ですが、そのプロセスの渦中では常に無我夢中で、変化を実感することはありませんでしたが、目の前のことに集中して、自分を自ら変える、変わる事に執着し続けた結果、周りの環境も変化し、状態が整ってきたように感じます。コヴィー博士が書かれた「7つの習慣」の一番はじめにあり、最も重要な概念の一つである「インサイド・アウト」(自分が変わることしか周りは変わらない)の実践を胸に刻み込んできた事が今の状態を作ったと思っています。
目的と貢献。
本日面談の機会を持った若き経営者に、まずは自分から変わるべきだ。と強い口調で申し上げた訳ではありません。それは本当に大事なことは自分自身で求め、感じて気づかなければ身につかないと思っているからで、まずはセオリー通りに、事業の目的を経営者が明らかにし、社員さんにもその理念と重なる部分が何かを認識してもらうところから始めるべきではないかと提言をしておきました。何のために働くのか?という設問に対して、大まか返ってくる答えは「家族を養うため」「生きるため」「稼ぐため」などになりがちですが、そんなアリンコでもやっているようなあたり前のことはさておき、人間としての生きがいとか、職業人としてのやりがいとかを感じられる目的をしっかりと聞いてみるべきで、人間誰しも良心を持っているし、自分の行なった仕事で誰かが喜んでくれたり、助けになったり、評価してくれるのは嬉しいものです。カネだけ、今だけ、自分だけの価値観の人とは付き合いたくないのは誰しもが思うこと、そこから抜け出すことで、周りの人から信頼を集め、楽しみながら喜びをもって働けるのは職人に限らず誰もが当てはまるはずです。
職人よ、誇りを持て!
そして、現場でモノづくりが出来るのは、一種の才能が必要です。子供の頃、勉強があまり得意でない、学校に馴染めない、学歴社会のエスカレーターから降りて、しょうがないからと消去法で職人になる道を選んだ人も(私を含めて)少なくないのが現実ではありますが、夏は暑く、冬は凍える寒さの中で集中力を切らさず現場作業を進める事が出来るのは決して誰にでも出来る事ではありません。現場で働ける能力は才能であり、職人はもっと誇りを持つべきだし、少し在り方を正し、コミュニケーションを取るだけでリスペクトされる存在であるはずの貴重な人材です。そんな風に常日頃、私が思っている事を伝えると、面談の冒頭に、社員である職人さんの愚痴をマシンガンの様に話されていた社長は嬉しそうな笑顔を見せておられました。職人を正規雇用で雇い入れ、何とか成長させたいと願うからこそ、憤りを感じたりもするのでしょうが、そんな高い志を持った経営者を応援したいと心から思いつつ、職人の意識改革と成長を促す会社の仕組みづくり、人事制度のサポートなど、出来る限りのサポートをお約束して面談を終えました。この業界、まだまだ捨てたもんではない!と感じるいい時間になりました。堀口さん、良いご縁を繋いで頂きました事、心から感謝します。
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