100棟の体験より10棟の経験を積め。#若手大工育成P@人にやさしい家を考える会

令和2年9月12日晴れ

パワースポット効果。

昨夜遅くの新幹線で屋久島、筑後と回って工務店経営者、地域団体の代表、大工塾の講師といろんな役割のミッションをコンプリートした充実の九州巡業から帰神。連日夜明け前に起き出して、日中散々動き回った上に夜中まで語り続けた毎日に若干消耗している感も否めませんが、日本有数のパワースポット、屋久島、太鼓岩に立って力をもらってきたせいか、気力だけは充実しています。今朝もやっぱり日の出と同時に起き出して、朝のルーティーンをこなした後、早朝から大工社員との1to1ミーティング、その後は住宅やテナントビルの新築の相談を受けたり、オフィスの改装の打ち合わせをしたりと精力的に動きまわりました。寝不足なんてなんのその、山の神の力は偉大です。(笑)

建て方実習スタート。

昨日の筑後での若手大工育成プロジェクトの講座は実際に小さな建物を研修生達で建てる実習研修に入りました。今回は足場の仮設と、土台敷から大引きの据え付け、床下断熱の充填と剛床の引き込みまでを行いました、再来週は2日連続で建て方と屋根仕舞いまでを行う予定です。若手の大工見習いたちは、土台敷をするのが初めてではなかったようですが、普段は親方や先輩に指示された簡単な作業だけを機械的に行うのみで、自分で考え、主体的に作業した事はもちろんなく、アンカーボルトの位置を土台に移し穴を開けて据え付けるだけの簡単な作業にも意外と苦戦していました。

失敗してみ。

私達が普段の日常業務で現場作業を行う際は、常に失敗が許されない真剣勝負であり、何千万円もの大金をはたいて建てられるお施主様のことを考えれば、へたくそな新人に任せているわけにはいかず、細部に渡り指示を出して、若衆に考える隙間さえもなくしてしまいがちです。見習い大工にしてみたら、細かく細分化された作業を、言われるがまま行うだけで、仕事の流れも全体像も見えないまま、ひたすら言われたことを言われたがまま行うだけになってしまいます。今回、初めて実習研修の講師を務めてみて、研修は所詮練習なのでいくら失敗しても構わないと、好きなようにやらせることができ、これはなかなか良いものだと改めて感じた次第です。

体験ではなく経験。

若手向けの研修をする際に、私がいつも繰り返し言う言葉があります。それは「体験を何回繰り返しても意味はない、体験ではなく経験として自分のものにしろ」と言うことです。インプットはアウトプットとセットであり、研修で学んだ体験を自分の言葉や文字で人に伝え、なおかつ行動に転化させ、見えるように外化させることによって自分の経験にことができる。100軒の家を見るだけで体験してきた大工より、実際に10軒の家の作業を経験した大工の方が使えるし、頼りになるのは誰しも納得されるとこだと思います。上っ面の体験など何の役にも立たない、研修はアウトプットすることが必須であり、実践してこそ価値が生まれると耳にタコができる位言い続けています。そんな観点からすると、小さな建物を実際に自分たちで立ててみる実習研修は非常に学びの深いものなのかもしれません。

考えて、決めるのが経験。

そんな、実地研修で四苦八苦しながらも楽しそうにしている若者達を見て、そういえば!と思いだしたのは、毎年夏に行っている子供向けの木工教室です。私の元来の趣旨は子供たちに自分でものづくりをしてもらう経験を提供しているつもりでしたが、サポートの担当は常に若手大工にしてもらっており、そこで普段あまりやることがない自分で主体的に物事を考え、決めて人に教えると言う1連の手順が彼らにとっても非常に良い体験になっていたのだということです。木工教室で作る作品は、こちらで指定したものではなく、子供達に自由に考え、事前に作りたい希望を図面(というか絵)に書いてもらい、材料の段取りから若手大工にさせるのですが、これが中々ハードルが高く、今年は安土城や鳩時計を作りたい!との要望を受けて随分と泡を食っておりました。(笑)
きっといい経験になっていると思うのです。

考えるな、感じろ。

年号が令和に変わったのと足並みを揃える様に、以前から予測されていたVUCA化(ブーカ:不安定、不透明、曖昧、複雑)が一気に加速しました。日本中から消費が消え去ったコロナのとてつもない影響は日本だけでなく世界に暗い影を落とし、戦争が起こらないと景気は回復しないと馬鹿げたことを口にする自治体の首長さえ出てきました。それだけではなく、最近も、ある日突然総理大臣が辞任して日本のリーダーが変わるなど、何が起こるか全くもって予測不能、一寸先は闇と言っても過言でない時代になり、今までのロジックで考えても未来の予測など誰にも出来ないのではないかと思ってしまいます。こんな時こそ、論理立てた思考ではなく、直感を研ぎ澄ます必要があるとの論調をよく耳にする様になり、確かに、と私も「考えるな、感じろ。」と自分自身にも言い聞かせています。

脊髄反射的に熊本仮設住宅工事に応援に行きます!

そして、混迷の世の中になって必要なのは上っ面の誤魔化しではない地力であり、それは経験によって蓄えられるものだと思っています。そう考えれば、見えない未来をグジグジ考えるな、そして、経験を積むべく自分で考え、主体的に行動してみて、そこで初めて感じるものがあり、地力を増していくのではないかと思うのです。世界は大きく変化していると言っても、人間自体はこの10000年でさほどの進化をしていないとも言われます。今こそ、原理原則に立ち返る思考と行動が求められているのではないかと思うのです。そんなこんなで、以前から行かなくていいのか?と自問自答していた、熊本の豪雨災害の応急仮設住宅工事の人手が足らないと連絡が来ましたので、直感を頼りに社員達に経験を積んできてもらうことにします。きっと、地力を身につけてくれると思います。ちなみに、2016年の直感に従った時のブログ→建築女子、(大工見習い)リカの決断


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