応急仮設住宅工事の意義と全体勝利主義 #くまもとの力

令和2年9月24日雨

隔週の九州巡業

またまた九州巡業に来ています。今日も早朝に起き出して朝のルーティーンを済ませた後、新幹線に飛び乗って一路、熊本の新八代へ。新幹線の駅前でレンタカーを借りて、一昨日から先行してつむぎ建築舎の精鋭4名の大工スタッフが応援にきている球磨川村の災害復旧仮設住宅の現場へと車を走らせました。球磨川の現場の後は、八代に戻り、今夏の水害被害がひどかった八代市に拠点を置かれている堺建設さんが施工されている古閑中の仮設住宅の現場にも陣中見舞いに立ち寄り、職人起業塾の卒塾生の三山大工と第14期の講座終了以来、初めて顔を見てカツを入れつつも、頼もしい姿を拝見することも出来ました。夕方からは熊本に移動、クライアントが管理されている土地の確認に行った後、明日からの筑後での若手大工研修に備え、いつもの羽犬塚のホテルに入りました。文字通り九州巡業、忙しい1日となりました。

災害は忘れた頃にやってくる

現在、つむぎ建築舎の大工スタッフも応援として従事している球磨村の仮設住宅現場ではファイヤー村田こと、熊本で大工による手刻みへのこだわりとブログによる情報発信で有名な工務店、株式会社村田工務店の村田社長にご案内頂き、総数800戸近くの応急仮設住宅(とはいえ建設型なので基礎もある高断熱木造住宅)を7月の水害からたった2ヶ月少し、10月の初旬には全て完工させるという、常識では考えられないスピードで進められている今回のプロジェクトの経験談をお聞かせ頂きました。熊本の震災から始まった、災害復旧の仮設住宅を劣悪な住環境になってしまう軽量鉄骨のプレファブ住宅から高い居住性を備えた木造住宅にシフトしようというムーブメントは徐々に全国に広がりを見せており、私が所属する京阪神木造住宅協議会でも兵庫県との災害協定を結んでいます。万が一、被災地となった場合には今回の熊本と同じように私達も即断即決で仮設住宅の建設に取り掛からなければなりません。毎年、酷さを増し続ける自然災害の脅威を考えたら、今の内から応急仮設住宅の実務を把握しておく必要が少なからずあります。

目的共有と全体勝利

7月4日に豪雨災害が発生し、その後わずか2週間後には敷地を確保して地縄を貼り、9月末を目標に800個近い仮設住宅を全て木造で建てられる今回のプロジェクトの中でも、最大の規模を誇るのが本日私が訪れた球磨村総合運動場での113戸の工事です。コロナの影響もまだ強く、県外をまたいでのボランティアも制限されていた中、10月5日の完了検査で全てを完成させるところまでこぎつけられた圧倒的な施工能力には驚かされるばかりでした。灼熱の炎天下の下、基礎工事からつきっきりで現場で指揮を揮ってこられた村田社長は、真っ黒に日焼けして、ずいぶん精悍な雰囲気の現場仕事人の風情に変わっておられました。今回、このプロジェクトをなんとか成功裏に導けたのは熊本地震のときの経験から、集まった職方をグループ分けするのではなく、全体勝利を目指すと言う考え方を持って、臨機応変に配置を変えてもらったこと、そして、朝礼で何のためにわれわれは仮設工事を行っているのか、その意義は何か?と目的の共有を繰り返し熱い口調で行ったことで、職方の理解を得たことが大きいと語っておられました。

誇りを持てる仕事

私自身も、阪神淡路大震災の後は、職人としてずいぶんと仮設住宅の工事に従事しましたが、それはすべて大手プレハブメーカーの下請け職人としてで、冬が寒く、夏は暑い掘っ立て小屋のような仮設住宅を建てる作業を、非常時だからしょうがないと思いながらも、あまり意味も意義も考えずに、淡々と決められた作業を進めていたような覚えがあります。それに比べ今回の八代豪雨災害での応急仮設工事はすべて木造住宅で、全建連と地元の工務店が連携を取り地域の安心と安全を守るのは我々の役目だと言う使命感を持って取り組まれており、以前のおざなりのプレハブ住宅とは全くその価値が違うと感じました。どんな建物を建てても結局工事するのは職人であり、作り手が誇りを持てるような建物を作ることの大事さを改めて目の当たりに見て、深く感動させられました。紡ぎ建築者からの応援は今月末までの予定でしたが、完了検査までの工期が厳しいのを見て、少しだけですが応援滞在を延期させて貰います。豪雨災害に遭った方々が、1日でも早く快適な暮らしを取り戻せるよう、微力ながらお手伝いさせていただきます。村田社長、引き続きがんばってください。遠く神戸から応援しております。


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