全てのものは二度作れ!と、モノづくりの原理原則。 #若手大工育成プロジェクトday6

令和2年9月26日晴れ

建て方実習day2

昨日に引き続き、今日も久留米で若手大工育成プロジェクトの建て方実習2日目でした。昨日、延べ床5坪ほどの小さな建物ではありますが、ほとんどが未経験のメンバーたちで無事に棟上げ、屋根の垂木を流すところまでを終えて、今日は野地合板を貼り付け、破風板を取り付けてルーフィングを敷き込むまでの屋根仕舞と、筋交いや間柱、窓かまちなどの羽柄材、構造金物を取り付けるところまでが予定の工程でした。今日も、作業内容や、手順等を私が座学でレクチャーした後、各工程を細かく区切り、役割分担とタイムスケジュールを自分たちで考えて計画してもらいながら、実習作業時には私は一切口を出さず、自分達で考えて作業を進めてもらいました。一工程の作業が終わる度に1つずつ確認と検証を行いながら、予定通りすべての工程を終えることができました。

全てのものは二度作られる。

今回の建て方実習の研修で、私が最も力を入れて受講生の若者たちに一生懸命伝えたのは、「すべてのものは2度作られる」と言う、スティーブン・R・コヴィー博士がその著書「7つの習慣」の中で書かれていた概念で、建築に携わる者こそがこの考え方を深く理解し、実践しなければならないと熱を込めて語り続けました。1度目の創造はイメージの中での想像であり、これができないとものづくりを生業とする仕事は絶対にうまくいかない、この業界で生きていくなら、職人に限らず、設計でも営業でも、イメージを詳細に、正確に作り上げる技能を身に付けてもらいたいと、様々な例を挙げてしつこい位に伝えました。

ディティールに神が宿る

私は30過ぎの若かりし頃、1人親方の手間請大工としてプチ独立を果たした時、毎晩寝る前に明日の現場で行う作業を詳細に頭の中でイメージし、翌日現場に到着してからそのイメージ通りに作業を進める事を習慣として定着させて、一気に作業のスピードが速くなった経験を持っています。詳細にイメージするとは、ぼんやりした部分を全て明らかにすることであり、考えてもわからない事は図面を見て調べたり、親方に事前に聞いたりして現場で頭を抱えて考え込むような事がないように心がけていました。一人きりで現場を進めるのに、わからないことが出てきて手が止まってしまうとそのまま収入減に直結する危機感のもと、必要に迫られて身に付いた習慣ではありましたが、その時に改めて気がついたのは、いわゆる尊敬を集める「仕事ができる職人」は現場で図面を見ることなどなく、全て頭の中に叩き込んでから作業に就いていると言う事実でした。細部を完全に把握しきった職人は神がかっているように見えたものです。

モノづくりの原理原則。

もう一つ私が熱く語ったのはものづくりの原理原則についてです。それは、「どのように作るか」「何を作るか」よりも絶対的に「何のために作るか」を常に最重要に考え、すべての仕事はそこを基準にして進めてもらうように。と言うことです。建築会社で働いていると工事は毎日の日常であり、つい、決められた手順通り、最低限の品質を守ればそれで良いだろうと言う感覚になってしまいがちです。工事を発注してくれた相手が人生最大の買い物と言われる位の大金をはたき、自分の命さえも担保に入れて融資を受けて行う、その人にとっては人生の一大イベント、大事業であることも、どのような想いで家を建て、手に入れようと考えたか、など考えることすらなくなってしまっては、お客様の期待に応え、満足を得ることなど到底できません。自分のその日の日当だけ稼げればそれで良いと思うような職人に、大事な現場をまかす事は絶対にできないのです。

イメージ力と状態管理が凄い職人を育てる。

今回の建て方実習はカリキュラム的には技術的な側面が前面に押し出されており、実際に建物を建ててみることによって、全体の流れを知り、若い見習い大工が現場で活躍してくれるようになることが大きな目的とされています。ただ、私としては「やり方」は「在り方」の後に来るものだと思っていて、研修は普段あまり考える事のない、職人として、もしくは人としての在り方を考える場にするべきだと考えています。何の為にこの仕事に従事するのか?という問いを切り口に在り方を考えると共に、工事に着手する前に曖昧なところ、詳細を明らかにして細部まで把握してから仕事に取り掛かる建築的思考を体感してもらう事で、イメージを作り、シュミレーションを行い、準備を万端に、そして普段から良い状態を整える習慣を身につけてもらえたら、5年後、10年後は凄い専門職として大活躍してくれる人材になると思うのです。現在、講義を行っている「人にやさしい家を考える会」の若手大工育成プロジェクトに参加してもらっている若者達にはこの半年間で何としてでもその足がかりを掴んでもらいたいと思っています。みんな、頼むよー。(笑)


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