「企業は人なり」の基礎。

令和2年11月17日快晴

人事制度改革個別WS

今日は遠路はるばる静岡県富士宮司から職人起業塾に参画いただいている工務店の経営者が来神され、人事制度、キャリアプラン構築についての個別ワークショップを開催。一般社団法人職人起業塾では、今年度コロナの影響もあり、集合研修を取りやめてその代わりに人材育成を担う事業所の仕組みづくりのサポートを繰り返し行ってきました。今年は第5回まで繰り返し行い、来年以降も継続して開催の予定をしておりますが、富士宮の熱心な社長はそれまで待たず、出張のついでに神戸に立ち寄って個別に制度作りをして帰りたいとのご要望で、私も意気に感じて半日時間を割きました。帰られる時には晴々とした顔で、これで一気に人事制度の改革が進みます!と力強く言われており、私としてもとても嬉しい気持ちになりました。山崎社長、職人に未来を見せる制度作り、頑張ってください。

人事制度こそ事業の基盤。

企業は人なり。とはあまりにも有名な言葉で、経営者であれば誰もが1度はその言葉を耳にしたことがあると思います。その意味は人材育成こそが企業が存続、発展するには絶対欠かすことができない重要なファクターであり、それを支える人事制度こそが企業がまず整備しなければならない最重要課題であると言う意味だと私は理解しています。ちなみに、人事制度とは「賃金規定」「等級制度」「評価制度」を柱にした就業規定の策定のことであり、中小零細企業、特に建設業の経営者にとってはこれらを労働基準法通りの完全適法で運用するのはなかなか一筋縄ではいかない難しいことのように考えられているのが現実です。

お飾りの就業規則。

ほとんどの事業所は労働法の運用の専門家である社労士にサポートをしてもらい、社労士が提供する雛形をもとに自社にあった形でアレンジしてその運用を始めますが、建設業界、特に職人の世界では一般的に流通?している就業規則の雛形が実情とうまく噛み合わず、有形無実の飾りのような就業規則になってしまっていることが少なからずあります。起業当初の私も全くそうでしたが、本来、事業を支える根幹の最重要の仕組みであるはずの人事制度が全く機能せず、行き当たりばったりの昇給や評価、キャリアプランの提示もなく、職人は全く未来の展望が見えないまま、目先の仕事だけに追い回されるような働き方になってしまいがちです。これでは人も続かず、成長をすることなく、若者も集まる訳もなく、事業所も衰退の一途を辿ってしまいます。

職人不足問題の根本。

特に、建設業界の場合は就業規則の運用を完全適法で行えていると胸を張って答えられる経営者が非常に少ない現状があり、これでは人材育成どころか退社した社員に残業未払いなどの損害賠償で訴えられるのがオチ。全くもって話になりませんが、そもそも親方に弟子入りして仕事を教えてもらうことで独立する力を身に付けるといった職人の世界に完全適法の人事制度を整えなければならないような意識はありませんでした。職人の親方は個人事業主であり企業ではないのですから当たり前かもしれませんが、高校への進学率99%、少子化のあおりでどの業種も人材不足が叫ばれるようになり、若者が就職する先を自由に選べるようになった今の時代、そんな不安定でブラックと言われる様な職業につきたいと思う若者は皆無であるのが現実で、これが深刻な職人不足を引き起こしている根本的な原因だと思っています。

完全適法の労務管理のコツ

労働基準法をしっかり理解しておれば、完全適法の就業規則の運用はそんなに難しくはありません。基本的に守るべき事項はそんなに複雑に決まっている訳ではなく、意外とシンプルです。職人を雇用している方で、就業規則をキチンと整備しなければならないと思いながらも、職人の働き方は法律通りに収まらないと諦めてしまったままになっている方が少なからずおられるともいますので、そんな向けに、誰でも適法の雇用が出来ることをご理解頂けるように、以下に完全適法の賃金規定策定と運用の要点をご紹介しておきたいと思います。

守るべき5つの条件

まず、労働法にある基本事項、前提条件ををかいつまむと、
①労働者は最低限1週間に一度の休暇を与えること
②1週間の労働時間は40時間を超えないこと
③1日の労働時間は8時間までとすること
④半年以上雇用すると5日以上の有給休暇を取得させること
⑤規定就業時間を超えた労働に対しては残業代を支払う事
以上の5点に集約されます。

週休2日にしなければならない。訳じゃない。

一年は約52週、週あたりの労働時間40時間を上限と考えれば、2080時間が年間労働時間の上限となります。また、建設業は特定業種に指定されており、繁閑の季節変動があることから残業時間の上限が定められておりません。(時限措置)なので、上記の条件を満たした就業規則を策定して、はみ出した労働時間について全て残業代を支払えば完全適法ということになります。一日の労働時間を一般的な職人の働く時間8時〜17時とすると休憩時間を2時間引いても7時間となります。これでは「1週間に40時間」を守ろうとしたら、隔週週休二日(2週で77時間)にしなければならず、実質、日曜日だけが休みになっている職人の場合、隔週で休日出勤をすることになります。もちろん、休日手当をつけて残業代を払えば全く問題はありません。

簡単に適法になる就業規則の作り方。

もう少しシンプルに考えれば、規定就業時間を8時〜16時30分にして、6.5時間/日+残業1.5時間(残業36時間/月)にすれば、「1週間に40時間」も守れるし、残業の一般的な上限にも適合します。また、毎週1日の休日は年間休日52日(労働日数313日=年間労働時間2035時間)であり、週休1日=年間52日+正月、GW、盆、祭日で有給消化が簡単にクリア出来るようになります。通常の労働時間で規定残業時間(40時間)をほぼ使い切り、残業ができなくなるのではないか?という危惧は「特定業種は休日出勤、残業代を払えば完全適法」の観点からさほど問題ではありません。ただ、これは時限措置で残り4年となっておりますので、4年の間に残業をしなくても業務が回る様に整備を行わなければなりませんが、時間的には少し余裕があるのでその間に労働環境に改善に取り組むのはそんなに難しくないと思います。

労務管理サポートを行う理由。

私は大工上がりの工務店経営者であり、労働法のプロでも何でもありません。就業規則や賃金規定の策定や運用のアドバイスは完全に畑違いではありますが、職人の働き方は一般の業種に比べて特殊だったこともあり、働く人の当然の権利である労働基準法の遵守を行うのにずいぶんと苦労してきました。私自身も創業当初は当時の顧問だった社労士さんにもらった雛形をもとに就業規則を作りましたが、全く笑に描いた餅的な位置づけになり、「企業は人なり」の原則に全く準じていない、人材育成、人材の成長と全く関係のないものになってしまっていました。蛇の道は蛇と言いますが、建設業には建設業に則した就業規則の策定が必要で、自分が苦労した分、まっとうな経営を行いたいと思われる方には、出来る限りのサポートをしたいと思っています。一般社団法人職人起業塾では就業規則の見直しを皮切りに、キャリアプラン、等級制度、評価制度とその運用のサポートも行っておりますので、労務管理を見直したい、けどなかなか進まないと思われる方はお気軽にお声掛けください。お手伝いします。


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知識のパラドックスと茹でガエル。#逆転の時代

令和2年11月16日晴れ

習慣を継続するには執着心がいる。

昨日の日曜日は朝10時から2時間おきに4件の新築やリノベーションのお客様との打ち合わせやワークショップの予定がぎっしりと埋まっており、年間通して予定を入れている、日曜日のルーティーンである午前中のトレーニングの時間さえも取れないとあきらめる忙しさでした。大体、平日はずっと研修事業の出張やら会合で事業所にいないこともあり、どうしても建築実務は週末にまとめてしまいがちで、それも致し方ないのですが、こんなことでトレーニングを諦めていては体調管理などできるわけがないと、今朝は少し早起きをして出社前に昨日のツケを払うべく、10キロ程度のランニングをしておきました。これで今週も飲み放題食い放題の生活を送っても大丈夫です。(笑)

コロナで活性化している不動産業界。

実はこのところ、新築を建てたり、中古物件を購入してリノベーションしたりして住み変えたいと言われるお客さんが非常に増えており、土地や物件探しのお手伝いをすることが非常に増えています。神戸ではどうやら、不動産市場全体がやたら活性化してて、1年前までよりどりみどりに物件が売りに出ていた地域でも、今は非常に品薄になりちょっとした物件争奪戦の様相を呈しています。これもコロナの影響でおうち時間が増えた影響なのか、政府のバラマキ政策で、所得が減少していない層の人たちの預貯金が増えたからなのかは分かりませんが、とにかく消費税増税前かよ?と思える位の活況ぶりです。

行列を見ると並びたくなる。

先週末、近江八幡を訪れた際、クラブハリエに立ち寄って普段食べることのない生大福を私もつい食べたのですが、それはあまりの人気ぶりに興味をそそられたからでした。行列ができているところに人が集まるとよく言われますが、同じ心理かどうか分かりませんが、とにかく神戸市内の売り土地は新しく出た側から次々に売れていく有様で、買い手側としてはじっくり検討する時間もままならない位焦ってしまうような状況です。私たちつむぎ建築舎は不動産事業を行っておりませんので、土地探しの手伝いといっても、提携している信頼できる不動産業者をご紹介する形になるのですが、最近とみに明らかになったのは、レインズと言われる不動産業者専門の情報バンクとインターネットに公開されている情報がほぼ同じ、と言うよりも一般の人が見れる不動産サイトの方が物件が多かったりする現象まで現れていると言うことです。

情報革命で生まれたパラドックス。

熱心にインターネットの情報をチェックすれば、不動産業者と変わらない位の情報をユーザが手にできるようになった時代、不動産会社の存在意義は物件探し、提案よりも取引の実務に重心が移り、非常に薄くなってしまいました。とは言え、先日このブログで書いたように、「自分たちの息のかかった建築会社でリフォームしないとその費用は住宅ローンに組み込みません。」などと、自社の利益を優先して無茶苦茶な嘘の情報を流す業者もおりますし、個人のユーザーが直接問い合わせをして、個人情報を渡してしまうとそこ以外の仲介業者が取引に入れないようになるなどおかしな慣習が残っている業界ですので、物件が探せるからといって闇雲に問い合わせするのは危なかっしいですが、それでも基本的な情報収集ぐらいは個人でも簡単にできてしまうようになりました。もう、個人と専門業者間の「情報の隔たり」はほぼなくなったと言っても過言ではありません。むしろ購入者の方が一生懸命検索することを考えれば逆転してしまっている可能性もあります。

情報リテラシーの変化

一般ユーザの方が専門業者よりも情報量を多く持っているようになると専門家としての存在意義がなくなると書きましたが、それは不動産業界だけにとどまらず、あらゆる業界に置き換えることができると思っていて、特に情報が閉鎖的だった建築業界ではその傾向が顕著に現れるのではないかと思っています。さすがに、世界一厳しいと言われている日本の建築基準法の内容すべてを一般ユーザが把握される事はないと思いますが、それでも施工や行政の手続き、不具合があった際の瑕疵保証など、カテゴリーを絞って検索すれば、1日あればプロと同じくらいの知識を身に付けられるようになっていると思います。もちろん、インターネット上にある情報が全て正しいわけはなく、情報配信者のポジショントーク的なロジックをさもエビデンスのように公開しているサイトもあるので注意は必要ですが、数多くの情報を収集して比較検討すればおのずと正解は見えてくるもので、そのレベルの知識や情報は我々プロの立場の人間は全て把握しておけなければ話になりません。最低限必要な情報に対するリテラシーが大きく変わったのです。

茹でガエル達。

上述のような逆転現象は紛れもなく情報革命の産物で、店舗や商業施設への魚の卸売を行なっている会社がHPを立ち上げて、消費者に直売を始めたら連日大行列ができる盛況ぶりで、コロナ前の売上よりも伸びたとのニュースに合ったように、世の中の変化に適応できた事業所にはビジネスチャンスがあるし、そうでない会社は飲食店の没落と一緒に心中するしかありません。このところヤバイな、と感じるのは、建設業界(不動産業界も)で働く人(自社の社員も含めて)があまり危機感を感じられていないことで、茹でガエルの故事のように鍋の下に火がついているにもかかわらず、熱湯になって大火傷をするまで鍋から出ようとしないのではないか?という危惧です。未来を作るというのは、未来のリスクを叩き潰す状態管理を繰り返すことであり、執着を持って習慣に取り組む姿勢がなければ、アップデートされないサービスも組織も陳腐化して滅びてしまいます。今一度、現状維持は緩やかな破滅への道だと認識を新たにするべきだし、熱く伝えていきたいと思います。


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天秤の街で感じた明るい未来。#四方良し

令和2年11月14日快晴

コロナ慣れ?

昨日は筑後での若手大工育成プロジェクトの講師を終えた後、博多に立ち寄り西新にあるクライアントのお店にメンテナンスの打ち合わせに立ち寄りました。コロナの影響で飲食店はどこも苦戦しているとの印象だったのですが、行ってみるとまさかの満員御礼。焼き台の上にびっしりと焼き鳥が並べられ、大将は額に汗をかきながら黙々と鶏を焼いており、話をするどころではない状態でした。繁盛していて何よりです。と、とりあえず声をかけ、落ち着くまで私もカウンターに座ってビールを飲むことにしたのですが、次々と追加オーダーが入りなかなか大将の手が空きません。このままでは最終の新幹線に乗り遅れると若干焦りましたが、あわやのところで何とか打ち合わせを終えて無事に帰神することができました。11月に入り北海道を始めとしてコロナ第3波の襲来がささやかれておりますが、意外と皆さんコロナとの共生する暮らしに慣れてきたのかもしれません。

観光業応援イベント!

今朝は朝早くから紡ぎ手(社員大工)スタッフとのコーチングを行い、その後そそくさと事務所を飛び出して、コロナの影響で壊滅的な打撃を受けた観光業の方への応援イベントとして企画された近江八幡へのバスツアーに参加しました。ツアーを取り仕切っておられた旅行代理店さんは、私もコロナ騒動が勃発する前までは、毎月の出張で大変お世話になっていた方で、少しでもお力になれればと思いこの度のツアーに参加しました。今時、旅行や出張の予約は誰でもインターネットで簡単にできる時代になりましたが、情報が溢れすぎており、何がいいのか判断を下すまでに随分と時間がかかるようになってしまいました。そんな中、信頼のおける旅行代理店さんの存在は非常に貴重で、行く先と日程を丸投げするだけで確かな旅(出張)を手配してくれます。GOTOキャンペーンもまだ継続されるみたいですし、これを機に観光業界の皆様のご商売が上向きになってくれることを願うばかりです。

近江商人の街

今回、ひょんなご縁で久しぶりに近江八幡の街を散策する機会に恵まれて、建築家ヴォーリズの足跡を辿りながら改めて感じたのは近江商人と言うブランドを街の人達がとても大切にしている事と、きっとその基盤があってのことだと思いますが、街全体がとても豊かに見えました。世界に誇る日本的経営の代表格と言われる三方良しの本家本元は、そこに住まい商いを営まれる人たちが皆、売り手よし、買い手よし、世間よしになるような思考を持っておられ、おのずと良いコミュニティーが出来上がり、商いも活発になって、経済的にも良い街になり、そこに住まう人たちも豊かな暮らしを営まれているのではないかとの仮説を立ててしまうほど、非常に良い気に溢れた街並みでした。

四方良しの世界

私たちは昨年、リブランディングを行う過程で、授業の目的をもう一度見直し、スタッフとのディスカッションやヒアリングを繰り返しました。その結果、信頼できるクライアントと価値の高い良い仕事がしたいと言うスタッフの共通した想いを抽出し、信頼の輪を広げる事でそれを実現したいと事業理念として定め直したのが、「ひと、まち、暮らし、文化を繋ぎ四方良しの世界を作る」の一文でした。その理念に従って常に思考をめぐらし、全ての判断をできるように、社名も株式会社四方継と変更した次第です。近江八幡は長い歴史を積み重ねた上で、豊かな街とコミュニティーが形成されていったと思いますが、私たちも身近にご縁があった方から、四方良しの考えをもとに商売をしている旨の理解を得られるように地道な努力を積み重ねることで、いつか地域に良いコミュニティー、良い街が出来上がるのに寄与できるのではないかと思っています。久々に訪れた近江八幡の街で、とても良い刺激とともに我々が目指す世界に対して力強く背中を押していただいたような気がしました。近江八幡を見習って四方良しの世界を少しずつではありますが確実に作り上げていきたいと思います。本日は、素晴らしいご縁をありがとうございました。


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値決めが出来る職人になれ! #若手大工育成P

令和2年11月13日 晴れ

筑後の朝

昨日の早朝、神戸を出発した時の気温は4度、鹿児島に着いたらいきなり暑いくらいで、着込んでいたダウンベストを脱いでカバンに押し込みました。夜は定宿のある筑後の羽犬塚に帰ってきましたが、あまり冷え込んだ感じもなく、今朝も暖かいのだろうとタカを括っていたら意外に冷えてました。気温は10度を切るくらいだったと思います。今日は筑後で若手大工育成プロジェクトの講師を務めておりましたが、気温は20度近いはずなのに風は少し冷たくて、同じ九州でもえらい違うものだと南国鹿児島が恋しくなりました。今週は随分と天気は良いみたいで、冷え込みも緩むとの予報ですが、やっぱり少しずつ苦手な冬は近づいてきているようです。。

断熱気密施工の難しさ

さて、筑後で開催している、実際に実習棟なる小さな家を1〜3年生の若手に自分たちで建ててもらう若手大工育成プロジェクトも今日で9日目、全12回と言いながら、最後の2日は解体工事を行いますので、実質今日と次回で一旦完成までこぎつけなければなりません。今日のカリキュラムは断熱、気密の施工で若手達は狭い部屋に大勢が入ってあーでもない、こーでもないと、作業に取り掛かる前に聞かされた私からのレクチャーを思い出しながら楽しそうに作業を行っておりました。結果的に、グラスウールの充填と気密シート貼りは施工不良と言っても過言でない垢抜けない仕上がりになってしまいましたが、作業終了後に早朝から駆け付けてくれた断熱メーカーの朝日グラスファイバー株式会社の中山さんに不具合点を指摘され、簡単に思えるし誰にでも出来そうな断熱材充填の作業でも、完璧に行う事の難しさを実感してもらえたようでした。

断熱気密の重要性

講座の冒頭に、この10年で住宅施工は大きく変わり、ニュースタンダードが確立されているんだよと話しました。国土交通省が全国一斉に開催している「省エネ技術施工マニュアル」の施工基準が業界の最低基準のスタンダードになっているのと共に、ネット上には断熱性、気密性の重要性を強く訴えるサイトや動画が溢れかえり、ユーザーはそれを目にしてから工務店を訪ねるし、施工現場を見に来る旨を皆に伝えました。断熱、気密の施工不良はそのまま住宅のランニングコストや呼吸器系の疾患、ヒートショックなどの健康に直接影響を及ぼす重要な部分だと繰り返し、この理屈が現場で体現出来なければ顧客からそっぽを向かれ、相手にされないくらい、今どきの住宅建築では最重要な部位であると繰り返し訴えました。

時間を計れ!

ワークショップは終わる事が大事。だと、昨年まで通っていたXデザイン学校の浅野先生に繰り返し教わりましたし、私も常日頃からワークショップを行う際は精度よりも時間管理に重点を置く様にしています。しかし、残念ながら今回も予定の工程までは届きませんでした。終了のホイッスルを私が吹くと、もう少しやらせて下さい〜、と未練がましくプラスターボードを貼っているメンバーもおりましたので、自分達が立てた予定通りに作業が進まないのが悔しいと思い始めた様でした。悪くない傾向です。(笑) この実習研修では、開始当初から、その日に行う作業を小割りにして、どれくらいで終わるかのの予想を実習生自身に立てさせて、制限時間の目標を持って作業を進める様に指導してきました。それは、建築業にとって工程を組み立てる力が非常に重要で、精度の高い工程表を作れる人材があまりいない現実を鑑みてのことです。

値決めは能力

実は立派に仕事をする一人前の大工でさえ(情けない事ですが)細かな工程を組み立てられない者が少なからずおられます。これでは成り行きまかせの工事の進め方になる、もしくは他人が立てた予定で支持された通りに動くだけの作業員に成り下がってしまいます。そうならない為には、普段から自分を含め、周りの職人の施工速度を予測、計測、検証する習慣が必要で、実習研修を通してその難しさを体感して貰う様にしているのです。今日の講座の冒頭でも皆に話しましたが、あらゆる仕事、商売で最も重要なのは「値決め」です。建築業界で例を挙げると、職人が一人働く時間の単価から、建物、ビルの建設の見積もりまで、低い価格に設定するといくらでも仕事は受注できますが、低すぎると赤字になり破綻してしまいます。それでは商売にならんと値上げをしてたっぷりと利益を見込んでところで、高すぎたら誰にも相手にもされません。逆に売り上げは全くなくなります。要するに商売とは提供する価値と値決めとのバランスで全てが決まります。絶妙なバランスで値決めをするには、工事にかかる人数と期間を正確に割り出す能力が必要で、これはそのまま工程表を作る力になります。値決めは能力であり、身につければ大きな財産になるのです。

職人の生き方改革の入り口。

私が考える職人育成の根本は、職人の役割としての多能工化です。創業時からの私のミッションは職人の社会的地位の向上であり、これはただ単に社会保障が付き、しっかり稼げれば良いというものではなく、職人という生き方が多くの人に尊敬され、本人も仕事へのやりがいと生きがいを感じる職業にしたいとの想いです。これを実現するのに行うべきは、職人を単なる作業員から脱皮させ、様々な役割を担わせる事、その能力を身に付けさせる事であり、現場での施工以外でも、施工管理や営業、設計、そして事業所のマネジメント等々、幅広い価値を発揮してもらえる力を備えてもらう事です。その為の一番初めの入り口が、自分がこの作業を行うのにどのくらいの時間を要するのかを明確にイメージできる事からだと考えており、この研修でも耳にタコが出来るくらい時間についての意識と目標に対する検証を行えと言い続けており、時間の観念を備えた実務者をきっと輩出出来ると思ってます。皆んな頑張って!大いに期待してます!(^ ^)


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高千穂シラス採掘場に行ってみた。#新二毛作

令和2年11月12日 快晴

都城へ工場見学。

久しぶりに朝一番のフライトで鹿児島に飛びました。相変わらず夜明け前から起きだして自宅を飛び出して、鹿児島経由で特急霧島に乗って昼前には生まれて初めての宮崎県の都城駅前に到着しました。朝起きすると日本は狭い、北海道だろうが九州の南端だろうが少々アクセス悪いところでも午前中に移動できるのは本当にありがたいと文明の利器に感謝することしきりでした。今回、都城を訪れたのは塗り壁材メーカーの高千穂シラス社の会社訪問が目的で、シラスと呼ばれる火山の噴火の際の火砕流が固まり堆積した土の採掘場と完全自然素材を売り物にされている塗り壁材の生産工場の見学でした。現在、私が担当している若手大工の育成講座を主催されているJBN傘下の福岡の団体「人にやさしい家を考える会」の事務局を務められている株式会社徳永産業さんのイベントにお誘いいただき、ちょうど久留米での講座の前日に日程を設定して貰えたのを良いことに参加させて頂きました。

高意匠、高性能、高単価の壁材。

高千穂シラス社といえばメンテナンスフリーの外壁材、そとん壁が有名で、掻き落としや櫛引、抑えなど、左官の技能で様々な表情のデザインを生み出せることから、デザイン事務所や工務店のモデルハウスなどでもよく採用されています。弊社でもこれまで何度も採用仕掛けましたが、結果的に未だ採用実績がありません。カタログや展示会での説明を聞くと、自然素材の力を最大限に引き出し、防水、調湿、化学物質の分解など優れた性能を示されており、デザイン性だけではなく機能面も優れていることは私も認識しておりました。しかし、今ひとつ踏み切れて無かったのは、新しい商品にすぐに飛びつくのに慎重になっているのもありますが、同業他社の同じような商品と比して、若干、費用面でコストが上がるのが大きな理由であるのは間違いありません。今回の訪問はその辺りのわだかまりというか、疑念?が晴れたら良いなと思い参加させて頂いた次第です。

大地の圧倒的な力。

都城駅前で集合し、地元の有名行列店で意外にあっさりしたラーメンをご馳走になった後、昼一番から高千穂シラスの採掘場へと向かいました。Wikipediaによると、阿蘇カルデラ(あそカルデラ)阿蘇山。現在も活発な中央火口丘を持っている。直径は約25×18kmであり、カルデラ内に多くの人が住み鉄道や道路が走っている。阿蘇カルデラの大噴火は調査によれば4回あったと推定されるが、一番、大きかったのは9万年前に発生した4回目の噴火である。このときの総噴出量は富士山の山体体積を上回る600km3に達し、火砕流は九州の半分近くを覆い尽くし、火山灰は日本全国に降下した。宮崎県の高千穂峡谷はこのときの火砕流堆積物(溶結凝灰岩)を河川が侵食したものである。
とのことで、シラスとは即ち、この火砕流が堆積して出来た地層であり、大地の力の結晶です。ちなみに、この噴火で九州全域の縄文文化は壊滅的な打撃を受けたらしく、悠久の歴史というか大地の力の片鱗を見せられた気がしました。

徹底的なローテク工場の理由。

そんな採石場から採取されたシラスはビニールハウスの乾燥場でトラクターで引っ張るレイキで攪拌、、太陽光で乾かされるというローテクな工程を経て、篩にかけられて粒度を揃えられてから工場で加工されます。この工場がまた、昭和かよ、とつい口に出てしまいそうなくらいのローテクぶりで、、左官職人が使うドラム式のミキサーを回して一袋ずつ丁寧に袋詰めされていました。更に驚いたのは、主力製品であり、同社のフラッグシップでもあるそとん壁の生産は工場ではなく、すべて近隣の農家さんに兼業で委託されているとのことで、高齢化して限界集落になりつつある都城の農村に雇用と仕事を創出しているとの事でした。見学に伺った先の農家さんでも、元は牛小屋だった風の小屋で工場から出荷された原材料をミックスして製品を作られており、その袋に生産者の名前が印字されているなど、誇りと自信を持って高千穂シラス社の製品づくりに携わっておられるのがよくわかりました。

新二毛作。

生産効率、利益追及を考えれば、設備投資を行って、大きな機械を入れれば、きっと、もっと価格競争力も増すことができるし、事業規模も拡大できると思います。大概の経営者ならば、商品がそこそこ売れ出したらそうしようとしますし、その方が当然の選択だと思ってしまいそうですが、高千穂シラス社はあえてその道を選択することなく、徹底的なローテクで利潤を地元に還元する仕組みを構築されています。また、この地が出身地だと言われる経営者の、のどかで美しい風景を守りたいとの想いもあって大きな工場に拡張するのをやめたとのエピソードも案内してくれた社員さんが誇らしげに話されていました。もちろん、商品の事も学ばせて貰い、高い防水性、多孔質物質による消臭効果、水は通さないが空気を通す抜群の通気性能を誇るなど、なるほどと性能の良さにも大きく感心はしましたが、そんなことよりも「新二毛作」と名ずけられた農家さんとコラボしての生産体制の仕組みの方がずっと心を打たれました。その志や潔し。です。

大切なのは目に見えない価値。

ちなみに、同社は採掘場からもう少し山に分け入った自然豊かな中腹に分譲住宅用の宅地開発もされておられました。「収入付き分譲宅地」と命名されたその土地は、入居した方がそとん壁の袋詰めや、すぐ近くで同社が運営している牧場の世話をするなどの仕事がセットでついており、元気に働きながら気持ちのいい森の中で暮らすことができる画期的な素晴らしいプランの分譲地となっておりました。そこにはそとん壁の開発にも関わられた建築家の伊礼智先生が設計された物件もありましたが、既に売却済で、関東からの移住者が二組ほど住まれているとの事、美しい森の風景と相まって私としてはなんだか理想郷を見せられたような印象を受けました。とにかく、株式会社高千穂シラス社の目指す方向性や現時点での姿勢や方向性に大いに共感すると共に感銘を受けて、今後は是非共、特に外壁仕上げ材で同社の材を積極的に採用して行きたいと心に刻み込みました。人の心を動かすのは目に見えるものよりも目に見えないもの。その真理を体感させられる工場見学ツアーとなりました。素晴らしい機会を与えて下さった株式会社徳永産業さんには心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


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人生を変える人脈の作り方。

令和2年11月11日 快晴

朝夜ハイブリッド型生活

水曜日は朝活の日。昨日は夜明け前から海釣りに出かけるのに超朝起きをした上に、昼から陸に上がってからも身体がふわふわと揺れている感じのまま経営革新会議とその後の懇親会で夜中まで盛り上がり、帰宅後はバタンキューと死んだ様に寝てしまいました。普段から4時間睡眠のショートスリーパーを自認している私ですが、実は睡眠時間が4時間を切ると、歯止めが効かないくらい眠気に誘われ、すぐに寝てしまう&起こされてもめざめ目覚めない状態になってしまいます。今朝はなんとかギリギリ目覚めれる事が出来て胸を撫で下ろしました。これも朝会がオンライン化になったおかげ様、コロナの影響で良くなったことは少なくないですね。(^ ^)

第14回株式会社四方継&一般社団法人職人起業塾合同ゴルフコンペ

朝のビジネスミーティングの後は急ぎ車を走らせて神戸の北に位置するオリムピックゴルフ倶楽部へと向かいました。第14回目となる株式会社四方継&一般社団法人職人起業塾合同ゴルフコンペの主催者兼事務局担当者の私がスタートギリギリ、今回もほぼ最後にゴルフ場に入ると言う申し訳ない事になってしまいましたが、そこはご愛嬌、参加者の皆様も慣れたもので、遅くに到着した私を温かく迎えてくれました。少し間違っている気もしますが、毎回何とかなっているので、当分皆さんのご厚情に甘えた開催を続けたいと思います。てか、ゴルフを教えかけているスタッフの育成をしないとですね。

豪華景品の数々

ゴルフコンペの結果はわざわざ関東千葉から参戦してくれた電磁波対策商材でお世話になっている株式会社レジナの土田社長が優勝、今回は遠方から前泊でお越し頂いたにもかかわらず全くおもてなしを出来ませんでしたが、気持ち良くお帰り頂けて良かったです。土田社長、おめでとうございました。私のスコアは相変わらずでしたが。同じパーティーで楽しいラウンドをさせて頂きました。今回も参加者の皆さんに数多く、様々な豪華な商品をご協賛頂いたお陰で、(私が用意したチャラけた品もありましたが)全員に何かしらの商品が当たる?賑やかなコンペ表彰式が出来ました。ご協賛頂いた方々、そしてご参加頂いた皆様、本当にありがとうございました。

続ける事で生まれる価値

コロナ禍の下、春と秋、年に二回開催している自社ゴルフコンペは今回で第14回目を迎えてスタートから足かけ7年となりました。そもそも、ゴルフはからっきしだった私ですが、業者会メンバーからゴルフコンペをやりましょうよ、と提言をもらい、渋々ゴルフの練習をする様になり開催に踏み切りました。開催してみると、意外に大勢の方が集まってくれる様になり、取引業者の方となかなかゆっくり話す時間が取れない日常を離れて、一日たっぷりとグリーンコミュニケーションを楽しめるのはいい事だと感じる様になりました。いつしか、あまりゴルフに熱心ではないにもかかわらず、外す事が出来ない大事な行事になりました。

人脈は習慣で作られる。

一年に二回、7年も続けていると参加者同士の交流が出来たり、元は勉強会のメンバーだった方に協力業者として手伝って貰う様になったり、私自身はもちろんですが、参加者の方からも楽しみにしているとの声を頂く様になりました。今ではパーティーの組み合わせをするのに、この人とこの人を繋げたい等とイメージしながら、テーマを持って組み合わせ表を作る様になりました。今朝の朝活のエデュケーションコーナーで野村さんが人生を大きく変えた人脈の力の凄さとその作り方をレクチャーされましたが、コツは相手の立場に立って、相手に喜んで貰える事を考える習慣だと話されておられました。参加者に少しでも楽しんで貰いたいとあれこれ考えるゴルフコンペはそのいいトレーニングになっているかも知れません。ちなみに、次回は5月12日(水)の開催です。大勢の方のご参加を心待ちにしております。是非一緒にグリーンコミュニケーションを楽しみましょう!


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前提条件を疑ってみる。#複雑系の時代

令和2年11月10日快晴

太刀魚のシーズン

火曜日は朝活の日。なのですが、今日は少し趣向を変えて、夜明け前から海に出て、魚釣りに行きませんかとのお誘いを受けて、数年ぶりの船釣りに行ってきました。夜明け前の海は凛とした美しさがあり、タチウオの辺を受け止めるのに神経を集中しでひたすら指を振る作業も非常に楽しく、とても充実した朝の時間を過ごすことができました。こんなに気軽に海に出ることができる神戸って本当に良いところだと改めて感じさせられました。

 

 

 

 

 

 

プチパラダイムシフト

昼からは月に1度のビジネスコーチのコーチングセッションがあり、足元の課題やリスクに思いを馳せながら、そろそろと今年1年の振り返りの時期に差し掛かっており、事業全体の進捗を時間を持ちました。考えて計画に移したことが予定通りに進んだこともあれば、なかなか思う通りにいかないこともあり、まだまだ成果を生み出す元である状態を整えることができていないのだと反省することしきりでした。そんなコーチングを受ける中で、非常に大きな気づきを得ることができて、今後の状態を整える方法論について今までと全く違うアプローチを考える良い機会をいただくことができました。四辻コーチいつもありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

経営革新会議

夕方から夜にかけては月に1度のお楽しみになりつつある、TOTOリモデルクラブのメンバーが集まって経営に対するやり方ではなくあり方を考え学ぶ会議と懇親会に出席しました。今回は会社のあるべき姿とは?またその為に必要な事とは?と言う超基本に立ち返ったテーマで各社の発表とディスカッションを繰り返したのですが、上述のコーチングの際に気づかされた事と全く同じ疑義が持ち上がりました。「そもそも、在り方を見直す必要があるのか?」「経営の勉強をしなければいけないのか?」と私には目から鱗の発言が続出し、なるほど、時代の流れがこんな方向に流れているんだと改めて気付かされました。

前提条件を見直してみる

今日の私の気づきとは、前提条件を疑ってみる必要がある。と言うシンプルなものです。最近、考えるより感じる時代になったとよく言われますが、ロジカルな思考で物事を考えれば、組織が何らかの方向を打ち出して、進めようとする時、ミーティングや会議での合意形成を積み重ね、反対意見を説得もしくは論破して合意を取り付けた前提条件の上に立って物事を考えます。このやり方だと、理論武装している者が強く、論理的ではない、感情的な部分を置き去りにしてしまいます。

見えるものより見えないもの

程度の問題もありますが、感情を置き去りにして、理論だけで合意形成を取り付けたところで、物事は全く進まないのは当然のことで、建設業界に長くいる私は、建設的思考が染み込みすぎており、合意したものは必ず守ると思い込んでいる節がありました。法治国家、契約社会ではそれが当然だったかもしれませんが、今や世界は大きく変わり、目に見えるものより、見えないものを大事にすると言う風潮とともに、ロジック通りに成果に結びつかない事象があらゆる場面に現出しています。今まで正しかった事は非常識だと非難される時代、当然だと思い込んでいた前提条件を今一度、全て見直してみる必要があるかも知れません。複雑な時代になりました。。


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住宅業界が抱える深いジレンマ。

令和2年11月9日曇り時々晴れ

同じ穴のムジナ。

週末、不動産業界の深すぎる闇を書き連ねたネガティブブログをSNSで投稿してみたら多くの反響というか、コメントをいただきました。私は決して不動産業界の人たちを十把一絡げに悪人だと言っているわけでもないし、住宅業界と言う括りにすると、建築と不動産は切っても切れない仲というか、私自身も同じ穴のムジナだと思っています。住まい手が生命保険に加入してまで多額の借り入れをし、何千万円と言う大金をはたいて購入する土地や建物はお客様にとっては一生に何度もない一大イベントであるにもかかわらず、私たちにとっては日常茶飯事で、毎日その仕事をしています。住まい手と全く同じ金銭感覚を持って仕事に向き合っているかと問われたら、正直自信はありません。

当たり前が通用しない世界。

住宅業界の常識は一般常識とかけ離れていると言われる所以はその辺りに主たる原因があると私は思っておりますが、だからこそ私たちは慎重の上にも慎重を重ねて住まい手が後悔しない選択を行えるようにプロフェッショナルとしての立場をわきまえたアドバイスをするべきだと思っています。それにしても、今回の出来事で強く感じたのは、家を建てたいと考えている人が先行して土地の取得をされる場合、不動産会社に任せきりにしていては絶対にダメだと言うことです。土地の取得は家を建てるための手段であり、家を建てるのは、そこで快適で楽しい暮らしを過ごすための手段であると言う当たり前すぎることが、我々がいる住宅業界ではあまりにもおざなりにされているからで、最終的な目的をしっかりと見据えた計画を立てるサポートを私たちがするべきだと改めて感じた次第です。

一点モノを手にするのはご縁

建築と不動産の最も大きな違いは、家は図面さえあればいくらでも同じ物が建てられますが、土地はそうはいかない事だと思っています。分譲宅地のように同じような住宅用地がズラッと並んでいることはありますが、それでも住宅が並ぶ真ん中の土地と角地で山や海、公園などの景色が広がる土地では住まい始めてからの環境は全く違うものになると思います。とにかく、土地は常に一点モノで一度売れてしまうと二度と手に入らないのは事実です。私もこれまで、お客さんがじっくり検討している内に候補としてあげていた土地がどんどん売れてしまい、落胆されるのを目の当たりに経験したことがあります。逆に、条件が揃わないので、慌てずに少し時間を置いた方が良いとアドバイスした方が数年後、思っていた通りの場所にとても条件がいい土地が出てきて喜ばれたこともありました。一点モノの土地を手にするのに、タラレバはなくて、やっぱりご縁なのだと思うのです。

「仮押さえ」という名のきっついクロージング。

不動産会社の側からすると、お客さんが気に入った土地があり、資金計画に問題無ければ、即買い付けを入れて契約しなければ自分たちの仕事になりません。いわばそれが仕事なので「気に入った」と聞くと、「じゃあ一旦、抑えましょうか?」と返すのは当然の流れです。問題なのは、土地は家を建てるために買うのに、土地が決まっていないと、どんな家をどれくらいの費用をかけて建てられるのかを買い手は把握しておらず、坪あたり70万円で35坪なら2500万円もあれば大丈夫ですから、とか適当なことを言われても全くイメージが掴めないことです。そこで、買い手は土地以外の費用がどれくらいかかるか具体的に算出したいと思うのでしょうが、その時点で土地の買い付けを入れてしまっていたら、不動産業界ではさっさと決済の日を決めろ、即契約を結べと迫ります。とにかく、不動産業は売買契約を結び、決済を終わらせたら後のことは関係ないのが実際ですから、致し方ありませんが、買い手にとっては恐怖以外の何物でもありません。

目的から逆算する家づくり

つい、「買うか買わへんのかはっきりしろ」と決断を迫る不動産会社の人を悪者のように言ってしまいますが、チンタラしていたら欲しい土地も売れてしまいますし、それはそれで彼らの仕事なのではっきりさせるのは別にいいと思います。ただ、建築やそれにまつわる資金計画をサポートする立場として、買い手は目的を明確にして、目的から逆算した計画を立ててから進めるべきだと思うのです。せっかく家を建てるのですから、どんな暮らしをしたいのか、どんなインテリアに囲まれて暮らしたいのか等をよく話し合い、それを叶えてくれる作り手と一緒に土地探しをするべきだと思うのです。条件を整理してから土地を探せば、これだと思う土地が見つかったときにそんなに思い悩む事はなくなると思います。

適正な予算を自分で決める。

しかし、一概に建築会社と言ってももいろいろで、大手ハウスメーカーに相談しに行くと、自社で建てる住宅の金額ありきで進められるので、住宅ローンが通る上限まで引っ張り上げられたりと、総予算が高騰してしまうことが少なからずあります。逆に分譲販売などをメインにしているパワービルダーに行くと、ちゃっちゃと直ぐにローン審査が通る無理のない総予算で土地と住宅をまとめて提案してくれますが、昭和〜平成までの旧態依然の耐震や断熱の性能の低い住宅を当たり前のように提案されます。いざ建築の段階になって思った家にならないと気づいても手遅れだった、という例も枚挙に暇がありません。「目的を明確にする」と言うのは、新しい家に住みだした後の暮らしであるはずで、無理のない資金計画を立てて、毎月のランニングコストからの総額をまず自分たちで導き出してから、建物と土地、そして意外にかかる諸経費を含めた費用の配分を決めるべきだと思います。

本当の事はインターネット上にはない。

とは言え、本当に住まい手の立場に立って同じように物事を考えて計画をサポートしてくれる建築、不動産のプロフェッショナルを選ぶのも簡単ではありません。現在は情報革命と言う名のもとに、インターネットが普及し、誰もがスマートフォンでいつでも何でも検索して調べられる時代になりました。インターネットが普及する前に比べると一般消費者は膨大な情報を手にすることができますが、本当に大事な情報は残念ながらインターネット上には見つけることができません。昨日のブログに登場した無茶苦茶な不動産会社も地元ではそれなりに販売実績を上げていて、名前くらい知っている人は多くいます。HPをのぞいてみると「感謝」の文字がトップページに大きく描かれていて、そんな悪そうには思えません。ただ、ウリがキツそうな印象は否めませんが。(笑)
とにかく、インターネット上の情報も配信者の立場で書かれている訳で、(私を含め)100%正しい情報などあり得ないのが現実で、そこはしっかりと認識すべきだと思います。

住宅協会の構造的ジレンマ。

結局、どうしたらええねん?と突っ込まれそうな、とりとめのない文章になってしまいましたが、私が考える結論は、まずは信頼できる建築会社を選択するのに、善人か悪人かを見極めるべきだ。と言うことではなくて、構造的なポジションを考えるべきではないか、という事です。売りっぱなし、建っぱなしで後は関係がないと言う業者ではなく、工事が完了して、引き渡しが終わった後も関係性を継続し、顧客からのリピートや紹介で生業をなしている業者と一緒に進めるべきではないのかと思うのです。その会社が良い会社かどうかではなく、顧客満足を積み重ねなければ存続が危うくなるような事業所は、住まい手の目的と利益の相反がないはずです。逆の視点から見れば、チラシやウェブ広告などの宣伝を熱心にしている事業所は常に新規顧客を呼び込んで刈り取る狩猟型の体質の会社が多く、今だけ金だけ自分だけ思考に陥りやすいのは人の善悪ではなく、構造の問題です。しかし、残念ながら(私達も含めて)一見さんお断り的に紹介とリピート受注で営業を成り立たせている会社は、一般消費者に認知される機会が少なく、存在自体を見つけることが難しかったりします。これが私が長年感じている住宅業界が抱えるジレンマです。とにかく、せっかく夢のマイホームを手に入れて公開されるような人が1人でもいることを心から祈っています。


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ローンに詰まったら自己破産したら大丈夫!#不動産業会の深すぎる闇

令和2年11月7日雨

繁忙期なのか?

このところ週末は新築や中古住宅を買ってフルリノベーションをお考えのお客様との打ち合わせずっと続いており、全体的な資金計画のアドバイスや土地の選定、住宅ローンのアテンドなど私が受け持っている部分のご相談を非常に多くいただいてます。これもコロナの影響なのか、繁忙期なのかはさておき、とてもありがたい事は間違いありません。今日も張り切って先週、中古住宅を購入する予定のお客様と一緒に物件を内覧しに行き、改修工事の相談を受けていただけにもかかわらず、購入自体をやめたほうがいいとアドバイスしたお客様宅を訪問しました。結果、土地探しからやり直して、新築を建てる計画に変更することになりましたが、その過程で体験された耳を疑うようなひどい話をお客様の口から聞かされ、非常に驚いたとともに、住宅業界の深い闇を今更ながら感じさせられた次第です。

まともな人?

私が中古物件の購入をやめておいた方が良いとアドバイスした理由は大きく2つで、1つは価格が高かったこと。もう一つは、事故で車いす生活を余儀なくされているお客様が暮らすには、建て売り住宅の中古物件はその方の暮らしに沿った作りになっていないし、改修で問題を解決するには費用がかかりすぎるからです。同じ金額を出せばもっと暮らしやすいお客様に合った住宅を作れると判断したから、急いで中古物件を買う必要はないのでは、と進言しました。物件を見に行った翌日に、その旨を電話で告げたのですが、今回、嬉しかったのは、私が電話を切った後にご夫婦で「やっと、まともなアドバイスをくれる人と巡り会えた。」と話していたと伺ったことです。本当は気乗りしていなかったにもかかわらず、不動産仲介の営業マンにぐいぐいと押されて仕方なしに購入しようかと話していたのが、思い止まれたとの事でした。

自己破産したら大丈夫!

最も衝撃的だったのは、物件購入価格と改修費用を合算すると、予算的に返済の心配があるとお客様が不動産営業に告げると、その営業マンは「もし旦那さんに何かがあって返済できなくなったら奥さんは自己破産したら返さなくていいですよ。4〜5年カードが作れないくらいですから」とアドバイスされたと聞いたことです。(もちろん全てではありませんが、)不動産会社や、分譲住宅販売会社は住宅を売ってしまうと、後はどうなろうと関係ないと言うスタンスの人が少なくないのはわかっていましたが、そこまでひどいことを言ったのは聞いたことがありません。憤るのを通り越して驚いてしまいました。そんなありえないような言動が不動産仲介の営業マンの口から飛び出す背景には、住宅を取得する人は素人で、プロである自分は何を言っても、そんなものか、と受け取ってもらえるという驕りが見え隠れします。こんな営業マンがあるから、金利がこんなに下がっても住宅ローンを払えなくなって任意売却する人がいつまで経っても無くならず、一定数出てしまうのでしょう。

仁義無き販売

おまけに、その営業マンは中古住宅を買ってリフォーム工事をするには自社の紹介する業者じゃないと住宅ローンと一本化できないと嘘をついて、自分の息のかかった業者でリフォームするように勧めたとのことです。お客様もさすがにこれは騙しにかかっているなと思い、私たちに声がかかったようで、今回は私たちをご紹介いただいて事なきを得ましたが、そのまま不動産仲介の営業マンの話を鵜呑みにしていたらとんでもないことになったかもしれません。てか、そんな人も多くいるから営業マンもこのように言ったのだと思います。更に、私が現場を見に行った際にも、もうすでに一番手の買い付けが入っていて、ローン審査中の顧客がついているとの事でしたが、その人は自営業者でローン審査に時間がかかっているので先に審査が通ればその人を断ってこちらに販売しますと、長年この業界にいる私でさえ初めて聞く、耳を疑うようなことを言っていました。とにかく今、金が儲かればそれで良いと言う社風の表れなのかもしれませんが、人の道も仁義もあったもんではありません。

全て我々の責任。

そんなひどい話を聞かしてもらいながら、私が大いに反省したのはすぐ近所にお住まいの方に、我々の存在を知ってもらう機会を作れていなかったと言うことです。自分たちとご縁をいただいた方には、絶対に後悔のない家づくりを提案しているつもりですが、それは紹介をいただくなどのごく限られた人を対象にしており、我々が根ざしている地域に自分たちの事業内容や存在をアピールできていないことがそもそもの原因の一端であると深く反省した次第です。住宅業界の深い闇を嘆いていても悲しい思いをする人がいるわけではなく、もっと積極的にまともな業者が地域にいることを知ってもらえるような場づくりをしなければならないと改めて感じた次第です。これまでの10年間、宣伝広告の類を一切やめてきましたが、今一度それも見直して、決して売り込むのではなく、正しく、まともな情報提供者として地域の人たちにアプローチする方法論を考えたいと思います。NPO法人ひょうご安心リフォーム推進員会活動や、ひょうご木遣い王国学校、JBN(全国工務店協会)そして神戸空き家対策プロジェクトチームなど、私たちが所属している各種団体での啓蒙活動を更に活発にするとともに、自社での地域の方への認知拡大を中期経営計画に落とせるように今一度考えてみます。それにしても、世界はなかなか成熟に向かわないものなんだ。。


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フューチャーペーシングとリーダーシップとマネジメント

令和2年11月6日晴れ

冬の足音

11月第1周も週末になり、今朝は神戸もずいぶんと冷え込みました。毎日秋が深まって冬に近づいていくのを感じます。相変わらずメディアではアメリカ大統領選の泥仕合を報じ続けており、当初は興味深く見ていた私もさすがに少し食傷気味になってきました。アメリカが咳をすれば日本が風邪をひくと昔からよく言われている通り、アメリカの大統領がどちらになるかによって、私たちの暮らしにも大きな影響があるのでしょうが、トランプ氏が負けると法廷闘争に持ち込むとか、脱税やセクハラなどで訴追されてアメリカにいれなくなるとか、汚らしい金にまみれた政治の世界を面白おかしく報道するメディアにはさすがにうんざりしてきました。早く決着がついてもらいたいモノです。

マネジメント革命

気分を変えて、、今日の昼からは一般社団法人職人起業塾主催のリーダーのためのマネジメント改革のワークショップの開催日でした。この研修は職人起業塾の卒塾生を中心に、それぞれの事業所でリーダーとなる人と経営者に一緒に参加してもらい、事業の目的と手段のそれぞれを細分化して、あるべき姿にたどり着けるように計画を立てて、それを実践してもらう非常に実践的なワークショップです。経営の神様ピータードラッカー博士曰く、マネジメントとは組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関とその運営。マネージャーとは組織の成果に責任を持つ者と定義されており、リーダーは行うべき役割と責任を具体化して運営する立場だと私も考えています。このワークショップでは事業所が行うべきタスク(人事制度、マーケティング、ブランディング、事業継承等)を全て明らかにし、あるべき姿にたどり着けるようにそれらをすべて時系列を伴った中期経営計画に落とし込んでもらいます。まさにマネジメントの計画であり、本来、経営者が行うマネジメントを従業員であるリーダーが推し進めるのが、革命と名付けた所以です。

第二領域へのアプローチ

成果はすべて状態に由来する、状態は習慣が形作る。事業所のビジネスモデルをあるべき姿、理想型に押し上げていくには足元では緊急性を要しない、しかし重要な事柄に時間を持つ第二領域への習慣が必要です。この習慣の立案を経営者ではなく、実行者である社員のリーダーが行うことで、これまで1馬力でなかなか進めなかったものが、2馬力、3馬力とスピードと質を向上させることにつながります。私たちのような中小零細企業では社長が担うタスクがあまりにも幅広く、忙しすぎるため、つい目先のことばかりに力を注いでしまいがちです。マネジメントを経営者からリーダーである従業員に移譲することで組織は圧倒的に進化を遂げると考えて、現在、私は自社でも権限委譲に取り組んでいます。

フューチャーペーシング。

今日のワークショップの冒頭に、この研修の先にある未来を参加者の皆さんにイメージしてもらう時間を持ちました。営業兼現場監督を社長が受け持っている工務店では、社員大工への継続的な教育の場を設けて、彼らが現場の施工管理を全て受け持ち、着工と同時に顧客担当を完全に切り替え、しかも現場でのコミュニケーション量が増える事で顧客満足が高まったとしたら、社長は空いた時間を何に使えますか?とか、士業の事務所所員に、今までできていなかったこれまでの顧客への最新の助成金などの情報発信や申請のサポート業務を定期的に続けたら3年後どんな関係性を築けているか?とか、やれば必ず成果に結びつくことをわかっているのに、目の前の忙しさにかまけて先延ばしを繰り返している事の大きなリスクを認識してもらうとともに、経営者以外のスタッフが未来をイメージして経営全体のマネジメントに参加してもらう必要性を強く訴えました。

 

 

 

 

 

 

当たり前を進めるのは仕組み

私はこれまで長年、原理原則系の古典的マーケティングやマネジメントを学び続ける中で、当たり前のことを積み重ねれば、当たり前の成果を手にできる状態を整えることができるのに、そんな事は誰もがわかっているにもかかわらず、その成果を手にする人はごく稀であると言う事実に直面してきました。当たり前のことの積み重ねは、取り組めばすぐ結果が出るのではなく3年、5年と中長期にかけて時間配分を行い、継続した取り組みが必要です。理屈が簡単なだけに、一見誰にでもできそうに思えるのですが、男子の志は塩のように溶けやすい、と言われるように経営者が1人で10年先を見て決めた小さな習慣を進めていくのは困難を極めます。研修事業を行う中で最も大きな課題は研修を終えた後、卒塾生が結局、元に戻ってしまうことで、それはその本人の意思が弱いからとかではなく、事業所自体に中長期の計画とその実践の仕組みがないからだと気づきました。経営者とリーダーが一緒になってその計画と実践を行ってもらう今回のワークショップ、来年以降、定期的にメンバーの事業所に参加者全員で中長期経営計画の進捗を確認に行くオプションもつけましたし、当たり前のことが進む会社がこれで一気に増えれば私にとってはこんなに嬉しい事はありません。来月で最終回、経営者ではない、リーダーの皆さんが立案した中期経営計画の発表、楽しみにしております。気張って参りましょう。(^ ^)


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